給与差し押さえを受ければ、借金や滞納の事実が会社にバレてしまいます。差し押さえは拒否できませんので、適切な対処を行い…[続きを読む]
税金が払えない時はどうすればいい?|所得税・住民税滞納の対処法
会社員の方であれば、所得税や住民税などの税金は給与から天引きされるため、税金の納付について心配しなければならない場面は少ないです。
しかし、自営業の場合や、個人事業主、フリーランス、年度の途中で休職・退職(転職)をした場合などは、年度が終わってから多額の税金(住民税)をまとめて支払わなければなりません。
その際、前年度よりも収入が減ってしまっていたり、直前に思いがけない出費が発生してしまっていたりすると、所得税や住民税などの税金が払えない事態が発生する可能性があります。
(税金は前年度の所得によって計算されていますので、収入が減ってしまっても、すぐには減額されないのです。)
税金は国に対する債務ですので、滞納すると大変なことになってしまいます。
税金の滞納は違法行為(脱税)であり、税金の種類によっては罰則が課せられる場合があります。よって、税金滞納にはできる限り早急に対処することが必要です。
この記事では、所得税・住民税などの税金が払えない場合はどうすれば良いのか?相談先、対処法について解説します。
目次
税金が払えないとどうなる?
まずは、実際に所得税・住民税などの税金を滞納してしまった場合、どのような事態が発生してしまうのかを具体的に見ていきましょう。
延滞税が発生する
所得税や住民税などの税金を滞納した場合、納付期限の翌日から延滞税が発生することになります。
(本税が1万円未満の場合は発生しません。)
延滞税は日数を基に計算されるので、滞納が続けば続くほど、後で支払わなければならない税金の金額はどんどん増えていってしまいます。
国税庁のHPでは、延滞税の計算方法を詳しく解説しています。
督促状の送付・電話や郵便による催告
税金の滞納状態が続くと、税務署から督促状が送られてきます。
同居の家族などがいる場合、この督促状により延滞の事実が知られてしまうでしょう。
法律の規定上、所得税などの国税については納付期限から50日以内に(所得税法37条2項規定)、住民税などの地方税については納付期限から20日以内に督促状が送られてくることになっています(地方税法329条1項規定)。
督促状が届いたら、役所が通知書を発送した日から10日以内に滞納分を全て支払わなければなりません。
支払いをしないまま放置してしまうと、地方税法331条1項1号により「いつでも差し押さえ可」の状態になります。
差し押さえが行われてしまうと、債務者の財産は強制的に換価・処分されてしまいます。
とはいえ、仮に差し押さえができる状態になったとしても直ちに強制徴収になることは原則としてなく、現実に差し押さえが行われる前に、債務者に対する最後の警告をする意味で、電話や郵便による催告が実務上行われています。
差し押さえ(滞納処分)
督促状の発送やその後の催告を受けてもなお債務者が税金を支払わない場合は、滞納処分という強制徴収の手続がとられます。
滞納処分においては、債務者の預金や給与債権、住宅や車などの資産が差し押さえられてしまいます。差し押さえにより、債務者の意図しない形で財産が処分されてしまい、生活に困窮してしまうことになるでしょう。
口座が差し押さえられてしまうと、ある日突然、預金の残高が0となってしまうかもしれません。
給料が差し押さえられた場合には、受け取れる毎月の手取り金額が減ってしまうだけでなく、税金を滞納していた事実が職場に発覚してしまいます。
このように、滞納処分による差し押さえが行われてしまうと私生活に多大な影響が出ますので、早めに対処法を検討しておく必要があります。
税金を払えない時の相談先
税金の支払いができない場合には、税務署に相談した上で各種手続きを申請するほかありません。
というのも、税金の滞納は、弁護士・司法書士に相談しても、解決することができません。税金は債務整理によっても消滅しない、免責されない借金(非免責債権)に該当するためです。
(税金以外の借金を債務整理して、税金を支払えるだけの資金を確保するという方法はあります。)
従って、税金滞納については税務署や市役所などの担当窓口に相談し、支払い方法の変更や分割払い、減税・免除の申請などを行うことが求められます。
税務署に相談する
支払いができなくなりそうということが分かった時点で、まずは税務署に相談することが大切です。下記の項目について相談することをお勧めします。
減免制度
まずは税務署で、国や自治体の定める税金の減免制度が利用できないかを確認します。
学生である・生活保護を受けている・所得が著しく低い・自然災害で被災したなど、減免の要件に該当しているような場合には、税金の支払い義務自体が一部なくなりますので、債務者の負担は大きく軽減されます。
猶予制度(期限後に分割して納付)
税金の減免制度を利用できない場合でも、一定の条件を満たすならば納税の猶予や換価の猶予を認めてもらうことができます。
どちらも税金の金額自体を減らせるわけではありませんが、財務状況を立て直すための時間を確保できる有効な手段といえます。
なお、猶予期間中は、延滞税が軽減されます(通常:8.7%/年→猶予期間中:0.9%/年 ※令和5年分の場合)。
納税の猶予
災害や病気、廃業や事業上発生した大きな損害などにより、税金を一括で納入することができないと認められる場合に、税金の全部または一部の徴収を猶予してもらえる制度です(国税通則法46条1項、地方税法15条1項)。
納税の猶予は、最大で1年間認められます。
換価の猶予
滞納処分による債務者の財産の換価を待ってもらえる制度です(国税徴収法151条1項、地方税法15条の4第1項)。
換価の猶予も、最大で1年間認められます。
どれを検討するにせよ、税務署に相談をする際には「税金を払うつもりがある」ということを強くアピールしておくことが重要になります。
参考:減免・猶予等|東京都主税局
市役所に相談する
市税(固定資産税、個人住民税、軽自動車税、国民健康保険税など)が払えない場合、市役所でも納税に関する相談を行っています。
まずは、以下の課で状況を説明して、解決方法を相談してみることをおすすめします。
- 納税・債権管理課
- 市民生活相談課
税金が払えなくなりそうだということが分かった場合、できるだけ早く窓口に相談に行きましょう。
そこで、自分の状況を訴えた上で、税金を支払う意思があるということをアピールすれば、役所の人も親身になって相談に乗ってくれるでしょう。
また、利用可能な制度(分割払いや減免・猶予など)についても紹介してくれるはずです。
【税金を払うために借金をするのは有効?】
ある程度の収入があり審査に通りそうならば、一時的に消費者金融や銀行から借金して税金を納税し、その後借金を返済していくという形も考えられます。
しかし、税金であれ普通の借金であれ、お金を払う(返済する)必要があることには変わりありません。寧ろ、貸金業者からの借金の方が利息や遅延損害金が高く設定されているでしょう。
無計画な借金は多額の負債を抱え込むことになりますので、リスクが伴います。資金繰りに問題が生じている場合は、借金をせずに債務整理に強い弁護士・司法書士に相談してみるとよいでしょう。
他の借金があり税金を支払えない場合
税金以外の借金は債務整理できる
繰り返しますが、税金については債務整理で減らすことはできません。税金の納付は国民の義務であるため、債務整理では減額が認められないのです。
しかし、滞納している税金以外に借金があって税金が払えないという場合は、その他の借金を減額させれば税金が支払う余裕が出てくる可能性があります。
消費者金融や銀行からの借入、クレジットカード利用料など、税金以外に返済に追われている借金があるならば、その借金の方を債務整理することは有効な解決策となるでしょう。
債務整理の種類
個人ができる債務整理の方法には、大きく分けて①任意整理、②個人再生、③自己破産の3種類があります。
- 任意整理:債務者と債権者が直接交渉し、返済条件を見直した上で合意をする手続きです。原則として将来利息のカットをした上で、3〜5年程度の分割払いをする旨で合意ができます。法的な強制力はないため合意を得られなければ失敗に終わりますが、手続きが迅速かつ安価に終わります。
- 個人再生:裁判所を介して借金を元本から大幅に減額し、再編成した返済計画に基づいて原則3年かけた分割返済を行う方法です。住宅ローンなど特定の資産を守りながら多額の債務を整理することができますが、手続きが複雑で必要書類も多くあります。
- 自己破産:借金の完済が困難となった場合、裁判所を通じて債務を全て免除してもらう手続きです。税金などを除くほとんど全ての借金の支払義務が免除されますが、不動産などの大きな資産を持っている場合はこれを処分した上で債権者に配当する必要があります。
どれを選ぶのか決める際には、弁護士や司法書士に相談することがおすすめです。
弁護士・司法書士などの専門家は、「債務者が負担している債務にはどのようなものがあり、総額いくらなのか」「それらを債務整理することは可能なのか(どのくらいの減額が見込めるか)」を的確に分析した上で、債務者にとって最適な解決方法を一緒になって考えてくれます。
税金の支払いが滞るほどの借金問題に困っている場合には、一度弁護士に相談してみましょう。
また、株式会社や合同会社を設立して事業を行っている場合に税金が払えず破産を選択する場合は、その会社について破産手続の開始を申し立てることになります(法人破産)。
法人破産の場合、最終的にはその会社は清算手続きによって消滅することになります。清算手続きが完了してしまえば、会社には税金なども含めて一切債務が残ることはありません。
会社経営者や個人事業主を対象とした助成金制度【終了済み】
近年は新型コロナウイルスの影響により、特に会社経営者や個人事業主を対象とした助成金制度が整備されています(2022年5月現在)。
税金を含め、当面の支払いができないという場合の打開策として、検討してみることをお勧めします。
(申請受付は令和5年5月31日(必着)で終了しているものが多いです。)
国税の納税猶予
所得税、法人税、消費税などの国税は、国税を納付することにより生活が困難になる場合や、事業を継続して行うことが困難になる場合には、一定の要件の下、納税猶予が認められる場合があります。
国税庁のHPでは、コロナによる影響も当然に猶予が認められる旨を公表しています。
参考:新型コロナウイルス感染症の影響により納税が困難な方へ|国税庁
【地方税の納税猶予について】
個人事業税、固定資産税、住民税などの地方税は、災害等の被害に遭った場合には、申請により納税猶予を受けることができる場合があります。新型コロナウイルスによる被害も、減免対象に含むという取り扱いがなされる可能性は高いと言えます。
地方税に関しては、地域ごとに異なる取り扱いが条例で定められていることがあるので、具体的にどのような制度があるのかについては地域の条例も併せて確認しましょう。
雇用調整助成金
雇用調整助成金は、新型コロナウイルスの影響により事業活動を縮小せざるを得ず、そのため労働者を一時的に休業させるなどの措置をとった事業者に対して、労働者に支払うべき休業手当等の一部を助成する制度です。
事業者にとっては、休業期間中の労務コストを大幅に削減する効果があるため、休業等をした場合には必ず利用をすることをお勧めします。
参考:雇用調整助成金|厚生労働省
フリーランス(個人事業主)に対する休業支援金
業務委託を受けて働くフリーランス事業者が、子供の学校が臨時休校になったために仕事を休んだ場合には、1日当たり4,100円の休業支援金を支給する制度です(新型コロナウイルス感染症による小学校休業等対応支援金)。
参考:新型コロナウイルス感染症による小学校休業等対応支援金(委託を受けて個人で仕事をする方向け)|厚生労働省
なお、労働者を雇用する事業主の方向けの同制度もあります。
参考:小学校等の臨時休業に伴う保護者の休暇取得支援のための新たな助成金|厚生労働省
新型コロナウイルスに関する措置についての詳細は、ZEIMOの記事でも解説しています。
税金以外の借金滞納でもお悩みなら弁護士へ
税金の支払い義務自体は債務整理によって減額することはできませんが、他の借金を債務整理によって減額することできます。
税金以外の借金を債務整理で減らして、浮いたお金を税金の返済に充てることは有効と言えます。税金以外の借金があるならば、弁護士や司法書士に無料相談してみるとよいでしょう。
※相談時には、税金を滞納していることをしっかり弁護士・司法書士に伝えましょう。
最も良くないのは、税金の滞納をそのまま放置してしまったり、税金を払うために借金をしたりすることです。
税金の滞納を放置してしまうと延滞税が膨らみ、最悪の場合差し押さえにより財産が強制的に換価・処分されてしまいます。また、財政難を理由に税金の支払いを放置することは法律違反(脱税)になり、罰則が科せられる可能性があることにも注意が必要です。
国や自治体による滞納処分の手続きはスピーディに行われますので、可能な限り早めの対応を心がける必要があります。
借金問題は根本的に解決をしないと、自転車操業に陥ってしまいます。
税金の支払いや借金の返済に困っている方は、弁護士・司法書士にご相談ください。