会社法人が倒産したら|破産手続きの概要と流れ
企業の「倒産」という言葉はネット記事やニュースなどでよく耳にします。 特に最近であれば、新型コロナウイルスの影響によ…[続きを読む]
2020年5月現在、新型コロナウイルスの影響で人々は外出を控えるようになり、各事業会社の経営に深刻な影響が生じています。旅行会社もその例外ではありません。
世間では自粛ムードが広がる中、旅行をしようと考える人は少ない状況であり、旅行会社の売上も激減しています。
このまま緊急事態宣言が長引くようであれば、倒産もやむを得ないと考えている旅行会社も増加する一方です。
このような状況下で、旅行会社や旅行代理店はどのように状況を打開すれば良いのでしょうか。
国の助成金制度や特別融資などの利用も考えられるところですが、最終手段としての法人破産も視野に入れる必要があるかもしれません。
法人破産で会社を畳まなければならないのはとても苦しいでしょう。
しかし、新型コロナウイルスの影響が収束しない状況で、今までどおりの営業を続けるのは困難です。
賃料や人件費などが削れない中で売上が十分に上がらないとなると、借金で生活が苦しくなってしまいます。
そのような場合には、法人破産を検討すべきかもしれません。
目次
新型コロナウイルスの影響は旅行業界のみならず、飲食店や農業関係者など、多くの業種・業態に及んでいます。
こうした経済状況の悪化に対処するため、国の助成金制度や金融機関の特別な融資制度などが設けられています。
以下ではその代表例を紹介します。
自らの置かれている状況と照らし合わせて、利用できそうな制度があるかどうか検討してみましょう。
制度の詳細については、各管轄の省庁や金融機関に問い合わせてみてください。
日本政策金融公庫は、新型コロナウイルス感染症の影響を受けた中小企業等に対して、6,000万円の限度で特別融資を提供しています。
また、そのうち3,000万円を上限として、当初3年間に限り実質的に無利子での借り入れを行うことができます。
商工組合中央金庫(商工中金)は、新型コロナウイルス感染症の影響を受けてしまった中小企業等に対して、特に有利な条件による融資を提供しています。
さらに、一定の要件を満たす場合には、当初3年間に限り利子補給(利子の補助)が行われます(実質無利子となる場合もあります)。
信用保証協会は、新型コロナウイルス感染症の影響に対応するため、セーフティネット保証および危機関連保証を提供しています。
信用保証協会の保証については、会社毎に一般枠の金額が決まっています。
しかし、セーフティネット保証・危機関連保証の制度を利用すれば、一般枠とは別に特別の保証枠を利用することができるようになり、中小企業等の利用できる保証の限度額が拡大します。
保証限度額の拡大により、中小企業等は金融機関から融資を受けることが容易になります。
雇用調整助成金は、事業主による従業員の雇用の維持を促すために設けられた国の助成金制度です。
雇用調整助成金自体は従来から存在した制度です。
しかし、新型コロナウイルス感染症の影響拡大を受けて、大幅に助成の範囲が拡大されています。
助成の内容は、中小企業・大企業の別や、休業手当の支給状況により異なります。
2020年5月1日現在、以下のような内容が発表されています(なお、実際の適用は5月上旬以降となる見込みです)。
<中小企業の場合(労働者の解雇等を行わない場合に限ります。)>
①都道府県知事からの休業等の要請を受けて休業または営業時間の短縮をした場合で、以下の要件のいずれかを満たす場合には、労働者に支給した休業手当相当額を全額助成する
(i)労働者の休業に対して100%の休業手当を支払っていること
(ii) 労働者の休業に対して60%以上の休業手当を支払っており、かつそれが1日当たり8330円以上であること
②都道府県知事からの休業要請を受けていない場合であっても、労働者に支給した休業手当のうち、労働基準法上の義務である60%相当額については9割、それを超える部分については全額を助成する
<大企業の場合(労働者の解雇等を行わない場合に限ります。)>
労働者に支給した休業手当相当額の4分の3を助成する
雇用調整助成金に関する情報はこれまでも段階的にアップデートされていますので、上記の厚生労働省のホームページを定期的にチェックして、最新の情報を仕入れておきましょう。
経済産業省より、新型コロナウイルスの影響により売上が大幅に減少した中小企業および個人事業主に対して、中小企業には最大200万円、個人事業主には最大100万円(年間売上の減少分が上限)の持続化給付金を支給する制度が発表されています。
持続化給付金の給付要件は、以下のとおりとなっています。
<給付要件>
①新型コロナウイルス感染症の影響により、ひと月の売上が前年同月比で50%以上減少したこと
②2019年以前から事業による売上を得ており、今後も事業を継続する意思があること。
③法人の場合、(i)資本金もしくは出資の総額が10億円未満、または(ii)資本金がない法人については従業員2000人以下であること
こうした助成金制度や融資により、経営を持ちこたえることができそうであれば、積極的に制度の利用を検討しましょう。
しかし、それでも経営の見通しが立たないということもあるかもしれません。
その場合には、法人破産を含めた債務整理をすることも検討する必要があります。
それでは、「法人破産」とはどのようなものかについて、ここでしっかり理解しておきましょう。
法人破産とは、支払不能または債務超過に陥った法人について、破産手続を通じた財産の処分および債権者への配当を行い、その後法人を清算することをいいます。
破産は、法律に基づいて裁判所における手続きに従って進められるという意味で、「法的倒産手続」と呼ばれるものの一つです。
法的倒産手続には、「再生型」「清算型」の2種類があります。
再生型とは、会社を温存した状態で債務を減額し、事業の再建を目指すタイプの法的倒産手続をいいます。
民事再生手続や、会社更生手続が再生型に該当します。
これに対して、破産手続は清算型に該当する法的倒産手続です。
清算型とは、会社の所有する一切の財産を処分して債権者に分配してしまい、その後債務を免除するとともに法人を消滅させてしまうタイプの法的倒産手続をいいます。
清算型の法的倒産手続である破産においては、会社が消滅してしまうというデメリットがあります。
しかし、破産には様々なメリットもあるため、支払不能や債務超過の状況に陥っている法人にとっては、法人破産を検討する価値があります。
法人破産をするメリットとしては、以下のようなものが挙げられます。
法人破産の手続きが完了すると、法人が負担していた債務は税金などを含めてすべて消滅します。
よって、法人破産をすることにより、事業主は、借金の返済や資金繰りに関する悩みから解放されるのです。
弁護士が法人破産を受任すると、各債権者に「受任通知」を送付します。
以降、債権者は債務者に直接の取り立てをすることができなくなります(連絡は弁護士へと行わなければならないことが法律で決められています)。
また、破産手続開始決定がなされると、債権者から破産者に対する債権の強制執行が禁止されます。
したがって、法人破産の初期段階で、通常は債権者からの取り立てや強制執行が止むことになるのです。
厳しい取り立てが日常的に続いていて、精神的な負担になっている場合には、法人破産をするメリットがあるといえます。
経営している法人が支払不能・債務超過の状況では、事業をどう立て直すかということばかり考えてしまうでしょう。
また、そのような状況では事業主の方の生活にも余裕がないのが通常です。
こうした状況をいったんリセットするためにも、法人破産を行って事業を清算することが有効です。
また、法人破産をしたとしても、改めて新規に会社などを設立して事業を行うことに制限はありません。
新会社の役員に就任することも、以前と変わらず可能です。
心機一転、生活と事業を再出発させるためにも、法人破産を検討する価値はあるといえます。
今回は、新型コロナウイルスの影響により経営がうまくいかなくなってしまった旅行会社や旅行代理店が取ることのできる対処法について解説してきました。
まずは国の助成金制度や金融機関の融資を利用して、なんとか事業を続けていくことができないかを検討しましょう。
しかし、新型コロナウイルスの影響がいつ収束するのかということは誰にも予測できず、旅行会社や旅行代理店の事業への影響が長引くことも想定されます。
そのような状況では、世間の自粛ムードも継続し、売上が戻る見通しが立たない旅行会社や旅行代理店も多くなってしまうでしょう。
影響が長期にわたってしまう場合には、法人破産を含めた債務整理を検討する必要があるかもしれません。
借金問題はなるべく迅速に解決する必要があります。
いつまでも借金問題を放置していると、借金の金額が膨れ上がってしまい、事態が深刻化してしまいます。
事業上の借金をどうしても返しきれない、借金で経営が苦しくなってしまったという場合には、お早めに弁護士にご相談ください。