関連記事自己破産の「管財事件」とは?
この記事は、自己破産の「管財事件」というものについて説明します。はたして、管財事件とはどういったものなのでしょうか?[続きを読む]
自己破産を裁判所に認めてもらえれば、長年頭を悩ませてきた借金が原則として全て0になります。
クレジットカード、消費者金融、銀行などからの負債を免除してもらえるので、その後の生活も大きく改善して新たな一歩を踏み出すことができるでしょう。
しかし、自己破産は裁判所に申立てを行う手続きです。
裁判所の手続きは、時間と手間、費用がかかるケースが多く、自己破産手続きも例外ではありません。
「自己破産手続きを弁護士に依頼すれば借金がすぐになくなる!」というわけではなく、借金が免除されるのは自己破産手続きが全て終わり、裁判所の許可を得た後で、場合によっては免除まで1年以上かかります。
では、自己破産手続きは終了までにどれくらいの期間がかかるのでしょうか?なるべく早く終わらせるポイントはあるのでしょうか?
自己破産の流れと合わせて解説します。
目次
自己破産の手続きには「管財事件」と「同時廃止」の2種類があり、終了までの期間や費用が大きく異なります。
どちらになるかは裁判所が事例の内容をチェックした上で判断するため、債務者(自己破産者)が自分で選ぶことはできません。
まずは、それぞれどういった手続きなのか簡単に見ていきましょう。
管財事件は、自己破産の原則的な手続きです。
しかし、実際のところは自己破産案件の半数以上は後述する同時廃止で処理されているようです。
管財事件になると、裁判所が「破産管財人」という人を選任します。
借金の総額、借金をした理由、手持ち資産の金額などの事情によっては破産管財人が必要になるため、管財事件となるのです。
例えば、借金をした理由がギャンブルや浪費だと、破産管財人により反省の色を問われ、「本当に借金を0にして良いのか?」「二度と繰り返さないか?」ということをチェックされます。
手持ちの資産が多いなら、破産管財人は破産申立人の財産を調査し、一定以上の財産を売却してお金に換えます。そのお金を債権者に配当する手続きを経て、ようやく破産申立人の借金がゼロになります。
また、個人事業主の方が自己破産をする場合、契約関係が複雑なことが多いため原則的に管財事件になります。
管財事件は破産管財人による免責不許可事由の調査、財産の調査、債権者への資産の分配などの手間があるため、同時廃止よりも手続きの期間が長くかかります。
少額管財とは、東京地方裁判所など一部の裁判所で独自に運用されている管財事件の一種と言える手続きです(他の裁判所では別の名称で呼ばれていることもあります)。
管財事件では、破産管財人の人件費などに50万円以上かかってしまい、自己破産を躊躇う人が出てしまいました。
そこで、自己破産を利用しやすくするために、人件費を節約しながらよりスピーディーに手続きを終わらせる制度が必要となり、設立されました。それが「少額管財」です。
「申立人が弁護士に依頼している(弁護士が代理人となっている)」「債権者の数が少ない」などの一定の条件をクリアしていれば、同時廃止の条件に該当しなくても、少額管財により破産管財人への費用を20万円ほどまで抑えて自己破産できることになっています。
同時廃止は、破産管財人が選任されずに行われる自己破産手続きです。
現状はほとんどの自己破産がこの同時廃止で処理されています。
破産申立人にさしたる財産がなく、借金の理由や申立時の状況にも問題がない(免責不許可事由がない)場合などに行われる手続きです。
同時廃止が選ばれた場合、財産の調査・処分・配当などが行われないため、手続きが迅速に進みます。
また、破産管財人に支払う人件費が発生しないため、費用も安く済みます。
ここからは、自己破産手続きの流れと期間について紹介します。
まずは自己破産本来の手続きである管財事件の流れを見ていきましょう。
管財事件の場合、借金が0になるまでの期間は「弁護士に依頼後7~11ヶ月程度」のことが多いです。ケースによってはさらに期間が伸びる可能性もあります。
自己破産は、まず弁護士に相談して依頼をするところから始めます。
依頼後は弁護士と協力して必要書類を収集し、作成してください。
住民票、預金通帳、不動産の権利書、課税証明書、給与明細、退職金証明書など、自己破産に必要な書類は多いです。
借金の内容や契約関係など、本人でなければ分からない情報も多いはずです。包み隠さず弁護士に打ち明けて、書類作りを進めていくことが大切です。
「ギャンブルが理由の借金は怒られそう」「家族や友人から借りているお金もあるが、それは払い続けたい」などと思う方も多いのですが、このような隠し事をしていると、裁判所に書類を提出した後に不備や矛盾点を指摘されて最悪の場合自己破産に失敗してしまいます。
特に時間がかかるのは裁判所に提出する「家計収支表」を作成する土台となる「家計簿」の作成です。
2ヶ月分程度の家計収支表の提出を求めている裁判所が多いため、必然的に2ヶ月分の家計簿を作成することになります。
前々から家計簿をつけていれば話は別ですが、そうでない場合は申立ての準備に2ヶ月程度かかることを想定しておきましょう。
準備ができたら、必要書類を裁判所に提出します。
東京地裁本庁などでは、提出時にその場で代理人弁護士と裁判官が面談することが通例です(即日面接)。裁判所や事案によっては、裁判所で申立人本人が裁判官と面談するケースもあります(破産審尋)。
裁判所は面談の結果や提出された書類などを総合的に判断して、管財事件とするか同時廃止とするかを決定します。
管財事件の場合は、破産管財人・破産申立人・代理人弁護士の三者で打ち合わせをする必要がありますが、ケースによっては代理人弁護士を除いた2者で打ち合わせをすることもあります。
面談の内容や書類などに問題がなければ、申立てから1ヶ月以内には裁判所から「破産手続開始決定」が行われ、自己破産がスタートします。
破産申立人(破産者)に不動産や高価な車などの資産があるケースでは、破産管財人が破産申立人の財産を調査し、処分してお金に換えます。これを「換価処分」と言います。
このような財産の処分までの手続きを、「破産手続」と言います。
換価処分は、資産の内容や量などによって期間が変動します。
例えば、資産に不動産(マイホームなど)が含まれている場合は、査定から売却、分配までの時間が多くかかってしまうのは致し方ありません。
換価処分の進捗や結果は「債権者集会」で報告され、各債権者への配当額が告げられます。
債権者への配当が終われば、破産手続は終了です。
※生活必需品や家具家財、仕事に使う道具、当面の生活に必要な上限での現金や預貯金は手元に残すことができますのでご安心ください。
「免責」とは「借金をゼロにすること」です。
破産手続の後に行われる「免責手続」は、裁判所がこの「免責」を認めるかどうかを決定するための手続きです。
借金の事情や破産管財人の意見などを参考にして、裁判所が最終的な判断を下します。
破産手続きに非協力的だったり、書類の内容に虚偽が含まれていたりすると、免責を認めてもらえない可能性が出てきます。
また、裁判所が債権者からの意見を聴取するため、その内容も参考にされます。
さらに、破産申立人が裁判所に出頭して面談を受ける必要もあります。これを「免責審尋」と言います。
以上の手続きを経て、特に何も問題がなければ免責を認めてもらえます。
裁判所から免責許可決定が出ると、裁判所はその決定を官報に掲載します。掲載日から2週間が経過すると免責許可決定が確定し、自己破産手続きが終了(借金が免除)となります。
以上より、管財事件の場合、借金が0になるまでの期間は「弁護士に依頼後7~11ヶ月程度」のことが多いです。
事案が複雑であったりする場合は1年以上の期間が必要となるケースもあります。
主に東京地裁で行われる少額管財の流れは管財事件と同じです。ただし、破産手続(財産の処分・分配)に当たる部分が大きく簡略化されます。
あくまで目安ですが、それぞれにかかる期間は以下のようなイメージです。
少額管財の場合、借金がなくなるまでの期間は、「弁護士に依頼後6~8ヶ月程度」だと考えてください。一般的に通常の管財事件に比べると短期で終わらせることが可能です、
続いて、同時廃止の場合を紹介します。
同時廃止の場合、債権者の財産の処分・配当が不要になりますので、破産手続が開始と同時に終了(廃止)となります。
借金の理由にギャンブル・浪費などの問題もないですので、裁判所からの免責の判断も管財事件よりもスムーズに下される可能性があります。
よって、借金が0になるまでの期間は管財事件よりも大幅に短縮され、「弁護士に依頼後4~6ヶ月程度」が目安です。
同時廃止で弁護士に依頼後から申立ての準備にかかる期間は、管財事件とそれほど変わりません。前述した家計簿などの作成にも、変わらず2ヶ月程度必要です。
ただし、同時廃止が適用されるようなケースでは、債権者が少なく、権利関係も複雑でないことが多いです。書類作成の手間は若干軽減されるかもしれません。
これも管財事件と同じです。
裁判所は弁護士との面談の結果や提出された書類などを確認して、管財事件とするか同時廃止とするかを決定します。
同時廃止になった場合は追加の打ち合わせは行われませんので、他に書類などに問題がなければ、申立てから約2週間ほどで裁判所から「破産手続開始決定」が行われ、自己破産がスタートします。
同時廃止になるケースでは破産申立人の財産が処分されないため、破産手続が省略されます。
そのため、破産手続は開始決定と同時に終了(廃止)します。手続き名が「同時廃止」たる所以はここからです。
管財事件では約3ヶ月~半年かかっていた破産手続が、同時廃止では1ヶ月以内で終わります。
免責手続の内容そのものは、管財事件とほとんど同じです。
借金を0にする「免責」を認めるかどうか、裁判所はあらゆる事情から検討して免責決定を下します。
ただ、同時廃止ならば借金の理由に問題はないでしょう。よって、裁判所からの免責の判断も管財事件よりもスムーズに下される可能性があります。
官報への掲載後は、やはり掲載日から2週間が経過すると免責許可決定が確定し、自己破産手続きが終了(借金が免除)となります。
管財事件の場合、借金が0になるまでの期間は「弁護士に依頼後7~11ヶ月程度」のことが多いです。
少額管財の場合は「弁護士に依頼後6~8ヶ月程度」だと考えてください。
同時廃止の場合、自己破産手続きの完了までの期間は「弁護士に依頼後4~6ヶ月程度」が平均です。
上記は基本的な目安となり、期間の詳細は以下のようなポイントにより上下します。
自己破産に必要な書類は多く、内容も複雑です。正しく作成しなければ裁判所に申立てが受理されず、手続きに必要な期間が伸びてしまうこともあります。
また、裁判所の手続きにも専門的な知識が必要となりますので、個人が自力で完遂するのは不可能とも言えるでしょう。
できるだけ早く、かつ確実に自己破産を終わらせるには、弁護士の知識と経験が不可欠です。
そもそも少額管財などは弁護士がいることが条件のシステムであり、裁判所も弁護士への依頼を前提としているところがあるようです。
弁護士がいれば手続き面以外でも安心です。依頼後は弁護士が債権者に「受任通知」を送付しますので、債権者からの督促・支払いがストップします。表面的には平穏な日常が戻ってきますし、その間に自己破産費用を積み立てることもできるでしょう。
この他、資格制限や信用情報機関への登録(ブラックリスト入り)、旅行の制限など、自己破産によるデメリット・リスクについても弁護士は丁寧に説明してくれます。終了まで長い期間が必要な自己破産も最後まで安心して任せられるでしょう。
弁護士に自己破産を依頼するメリットは非常に大きいです。
債務整理に強い弁護士、自己破産の経験が豊富な事務所へ早めに相談・依頼して、滞りなく自己破産を終わらせることを目指しましょう。