リース契約は解約できる?リース契約のトラブルを解決するために

監修
弁護士相談Cafe編集部
本記事はを企業顧問・企業法務弁護士相談カフェを運営するエファタ株式会社の編集部が執筆・監修を行いました。
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新しい機械・設備の導入の際には、多額の初期費用を抑えることができるリース契約を利用することには大きなメリットがあります。多くの企業でもパソコンや電話機の購入の際には、リース契約を利用しているのではないでしょうか。

このように便利なリース契約ですが、「経営が悪化した」などの理由で、リース契約の解約を考えることもあると思います。そのような場合、そもそも解約はできるのでしょうか。

今回は、リース契約の中途解約について解説します。

リース契約の仕組みとは?

リース契約という言葉自体は聞いたことはあっても、その仕組みについて詳しく知っている人は少ないかと思います。以下では、簡単にリース契約の仕組みと類似の契約との違いについて説明します。

リース契約とは?

そもそもリース契約とは、物件を購入するのではなく、リース会社から長期間借りて使用する契約のことをいいます。

具体的には、リース会社が機械・設備を導入しようとするユーザー(顧客)に代わって、ユーザーからリース料の支払いを受けることを条件に購入代金を負担してサプライヤーから機械・設備を購入し、ユーザーにその機械・設備を貸し渡し、ユーザーはリース会社にリース期間の間、機械・設備の購入資金をリース料として支払う形式の契約です。

リース契約の対象物件は、電話機やコピー機などのOA機器、パソコンなどのIT機器、机や椅子などの事務用品などさまざまなものがあります。

ローン契約との違い

リース契約と同じように設備・機械の導入の際に利用される契約として、「ローン契約」と「レンタル契約」があります。

ローン契約とは、物件自体を購入し、購入代金の支払いを分割で行うという契約です。

リース契約が、物件の所有権がリース会社にあるのに対し、ローン契約では、「物件の所有者はユーザー(顧客)」にあるという違いがあります。

レンタル契約との違い

レンタル契約は、リース契約と同様に物件を借りるという契約です。

レンタル契約の場合、比較的短期間の物件の使用で利用される契約であるのに対し、リース契約は、比較的長期間の物件の使用で利用される契約です。

また、レンタル契約は「中途解約がいつでも可能」ですが、リース契約では、後ほど説明するとおり中途解約に制限があります。

リース契約を途中で解約することはできるのか?

リース契約を締結した後、さまざま事情により解約をしたいと考えることもあると思います。一旦成立したリース契約を解約することができるのでしょうか?

リース契約を中途解約することは原則としてできない

リース契約を中途解約することは、原則としてできません。

リース契約は、リース会社からサプライヤーにリース物件の代金が全額支払われ、リース会社は、ユーザー(顧客)からリース物件の代金と諸費用をリース料として回収することを予定しています。

それにもかかわらず、リース期間中にユーザー(顧客)から中途解約をされるとリース会社は、回収を予定していたリース料を失うことになり、大きな損失を被ってしまいます。

そのため、リース契約では、原則としてリース期間中の中途解約が禁止されているのです。

例外的にリース契約を中途解約できる場合とは?

通常のリース契約では、中途解約をする場合には、残りのリース期間のリース料に相当する違約金を支払うといった内容が契約で定められていますので、もし、経営が悪化したなどの理由でどうしてもリース契約を解約しなければならないという場合には、高額な違約金を一括で支払うことで解約できる場合があります。

しかし、そもそも経営が悪化している状態では支払いも難しいでしょう。

リース契約にはクーリングオフは適用されない

事業者が利用するリース契約では、原則として、クーリングオフは適用されません。

クーリングオフとは、訪問販売などの特定の取引で商品を契約した場合に、一定期間内であれば無条件で契約を解除できる制度のことをいいます。

クーリングオフは、商取引に不慣れな消費者を保護するための制度ですので、普段から商取引をしている事業者は保護の必要性に乏しいという理由から、事業者には適用されません。

もっとも、一口に事業者といっても必ずしも商取引に慣れている人ばかりとは限りません。個人事業者などを狙った悪質な電話機リースの被害が増えていることを受けて、経済産業省は「一見事業者名で契約を行っていても、事業用というよりも主として個人用・家庭用に使用するためのものであった場合は、原則として本法は適用される」との通達を出しました。

これによって、事業者のリース契約であっても、場合によってはクーリングオフができることになりました。

設置前であれば解約することができる?

リース契約は、中途解約は原則として禁止されていますが、リース物件の設置前であれば解約することができます。

リース物件は、サプライヤーからユーザー(顧客)に納入されます。

ユーザーは、納入された物件に問題ないことを確認した場合には「物件借受書」をリース会社に交付します。そして、物件借受書記載の借受日がリース期間の開始日とされています。

リース契約自体は、契約締結により成立しますが、リース期間の開始前であれば、契約上の権利義務は発生していないため、リース契約を解約することができます。

この場合の解約は、中途解約とは異なるため、高額な違約金を請求されたとしても支払う必要はありません。

機械が動かず故障した場合に、修理費を請求したいが可能か?

リース契約では、リース物件の保守・修繕について、「ユーザー(顧客)は物件の保守、点検、整備などを行い、物件が損傷した場合は、ユーザー(顧客)が費用を負担しまたは修繕を行う」といった条項を定めることが一般的です。

そのため、リース契約では、リース物件の保守・修繕はリース会社ではなくユーザー(顧客)において行う必要があり、リース物件が故障したとしてもユーザー(顧客)において修理費を負担しなければなりません。

もっとも、実際には、リース契約時にサプライヤーとユーザー(顧客)との間で、「保守契約」を締結していることが多いです。

このような場合、ユーザーは、リース料とは別途保守料金を支払う必要がありますが、リース物件の点検、整備、修理などを受けることができますので、リース物件が故障したとしても、ユーザー(顧客)が修理費用を負担する必要はありません。

リース契約と法規制

リース契約を規制する法律はある?

リース契約は、ローン契約と類似の側面もあるものの、割賦販売法ではリース契約は対象となっていないため、割賦販売法の適用はありません。

また、特定商取引法については、役務提供にリースが含まれるものの、「営業のため」の場合は、適用除外となりますので、事業者に対しては、特定商取引法の適用もありません。

そのため、事業者に対するリース契約については、現在、規制する法律はありません

2020年の改正民法でリース契約に関係する内容で、変更点はある?

2020年4月から改正民法が施行されることになりました。

民法改正によるリース契約への影響は、以下で説明するとおりですが、リース契約を利用する事業者側には特に大きな影響はありません。

民法改正により、連帯保証人制度について変更がありました。リース契約書において、リース料の支払いを担保するために連帯保証人を要求される場合もあるかと思います。

今までの民法では、「契約上負担する一切の債務を連帯して保証する」といった契約条項が用いられていました。

しかし、改正民法では、個人が連帯保証人となるケースで、このような包括的な債務の負担を定める保証契約は無効とされ、「極度額」という上限額を定めることが義務付けられました。

これによって、今後新たにリース契約を利用する際の「契約書について変更」が必要になりますので注意しましょう。

なお、リース契約については、改正前の民法には規定がなく、非典型契約と呼ばれていました。民法改正の審議会においては、改正民法にリース契約を明文化することも検討されましたが、リース契約の定義自体にも種々の見解があることや消費者保護の観点からの懸念もあることから、結局明文化自体は見送られることになりました。

リース契約でトラブルが起きたときに、弁護士は何をしてくれるか?相談すべき?

リース契約でのトラブルは、高額なリース契約を締結してしまったが解約もできない、営業マンから虚偽の説明を受けたといったケースに多くみられます。

リース契約は、原則として中途解約ができませんが、経済産業省の通達や過去の裁判例などを踏まえると事業者であっても例外的に中途解約ができる場合もあります。

また、サプライヤーの営業マンから虚偽の説明を受けて契約をしたような場合には、民法上の詐欺または錯誤を理由に契約を取り消すことができる場合もあります。

さらに、悪質なケースでは損害賠償請求も認められる余地もあります。

しかし、これらの手段はいずれも法的知識がなければ対応できませんし、容易に認められるものでもありません。このようなトラブルで困ったときは、弁護士に相談をすることで、適切な解決方法についてのアドバイスを得られる場合もあります。

リース契約は中途解約できないと一人で判断し、あきらめてしまう前に、一度弁護士に相談をしてみるとよいでしょう。

まとめ

リース契約は、手軽に設備・機械を導入することができるというメリットがあるという反面、中途解約が制限されるというデメリットがあります。

リース契約を締結する際には、費用は適切かどうか比較検討し、本当に必要なものかどうかを慎重に吟味するようにしてください。

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