少額訴訟と費用|相手に請求可能?自分で負担?弁護士に依頼すべき?
少額訴訟とは、60万円以下の金銭支払いを求める場合に限って利用することができる、簡易裁判所の特別な訴訟手続きです。
原則として、1回の期日で審理が終了し、判決を得ることができますので、通常の訴訟手続きに比べて簡易迅速に債権回収を行うことが可能です。
しかし、60万円以下の請求しかできませんので、弁護士に依頼をした場合には費用倒れになる可能性もあります。
そのため、少額訴訟を利用する際には、費用対効果について十分に検討することが必要になります。今回は、少額訴訟を利用する場合の費用について詳しく解説します。
目次
少額訴訟に費用はどのくらいかかる?
少額訴訟を利用する場合には、どの程度の費用がかかるのでしょうか。以下では、少額訴訟の手続きを自分で行う場合と弁護士に依頼した場合の費用について説明します。
少額訴訟を自分で行う場合の費用
少額訴訟を自分で行う場合には、主に以下のような費用がかかります。
①収入印紙
少額訴訟を利用する場合には、請求額に応じて、裁判所に手数料を納めなければなりません。手数料は、収入印紙で納めることになりますので、収入印紙代がかかることになります。少額訴訟の手続きで必要となる収入印紙の金額は、以下のとおりです。
訴額 | 手数料 |
0円~10万円まで | 1000円 |
10万円を超えて20万円まで | 2000円 |
20万円を超えて30万円まで | 3000円 |
30万円を超えて40万円まで | 4000円 |
40万円を超えて50万円まで | 5000円 |
50万円を超えて60万円まで | 6000円 |
②予納郵券
少額訴訟の手続きでは、原告が相手方に書類を送付するための郵便切手を裁判所に納める必要があります。
これを「予納郵券」と呼びます。予納郵券の金額や組み合わせは、少額訴訟を利用する裁判所によって異なってきますので、少額訴訟を提起する予定の裁判所に確認をするようにしてください。
参考までに、東京簡易裁判所では、以下の金額と組み合わせの予納郵券(合計5200円)を納めることが求められます。
郵便切手の種類 | 枚数 | 備考 |
500円 | 5枚 | ただし、当事者が1名増すごとに2500円分追加する。
(内訳) 500円 4枚 100円 2枚 50円 4枚 20円 2枚 10円 4枚 5円 4枚 |
③その他
当事者(原告・被告)が法人である場合には、少額訴訟の提起にあたって資格証明書の提出が必要になります。
資格証明書としては、一般的に会社所在地、会社名、法人番号、代表者の情報が記載された「代表者事項証明書」で足ります。
代表者事項証明書は、法務局で取得することができます。
少額訴訟を弁護士に依頼した場合の費用
少額訴訟を弁護士に依頼した場合には、上記の費用のほかに、以下のような費用がかかります
①相談料
少額訴訟を弁護士に依頼する前に、弁護士に法律相談を行うのが一般的です。法律相談を行った場合には、相談料が発生し、一般的には30分5500円、1時間1万1000円が相場になります。
②着手金
弁護士に相談をした結果、正式に依頼をすることになった場合には、着手金という費用が発生します。着手金とは、事件の成功・不成功にかかわらず発生する費用であり、業務処理の対価の一部になるものです。
着手金の金額については、請求額の8.8%(税込)としている弁護士事務所が多いです。ただし、最低額の着手金として11万円(税込)という基準も併用していますので、少額訴訟の場合には、着手金として少なくとも11万円を要することになります。
③報酬金
弁護士に依頼をした事件が解決した場合には、成功の度合いに応じて報酬金という費用が発生します。少額訴訟の場合には、裁判所の判決により認容された額または実際に回収した額などを基準として、その17.6%(税込)が報酬金の一般的な相場になります。
たとえば、少額訴訟によって60万円を回収した場合には、10万5600円が報酬金となります。反対に、まったく債権回収できなかったという場合には、報酬金は0円となります。
④実費|交通費など
上記の費用のほかにも、実際の事案処理にあたって発生する実費の支払いを求められることがあります。
たとえば、相手方の財産調査として、弁護士会照会を行った場合には、その手数料の負担、少額訴訟において裁判所に弁護士が出頭した場合には、日当、交通費、旅費などがかかる場合があります。
費用倒れ回避!少額訴訟の費用負担を抑える方法
少額訴訟を弁護士に依頼をした場合には、上記のとおり、多額の費用がかかります。費用倒れにならないようにするためには、以下のような方法を検討しましょう。
無料相談を利用する
弁護士事務所の中には、「初回相談料無料」、「債権回収に関する相談は無料」など相談料を無料で対応してくれるところがあります。請求額が低額な場合には、1万円の相談料であっても大きな負担になりますので、弁護士に相談をする際には、無料相談を実施しているところを選択するとよいでしょう。
自分でできる手続きは自分で行う
弁護士に依頼をした場合には、着手金と報酬金という費用が生じます。たとえば、30万円の債権回収を弁護士に依頼をした場合には、一般的な相場として着手金11万円、報酬金5万2800円の合計16万2800円という費用がかかります。
このケースでは、30万円満額を回収できたとしても、手元に残るお金は半分以下になってしまいます。
少額訴訟の手続きは、通常の訴訟手続きに比べて簡単な手続きですので、できる限り自分で行うことで、費用を抑えることができます。弁護士に依頼をして行うのではなく、手続きの流れや書類の書き方などを相談しながら対処することによって、相談料だけの負担で済ませることが可能になります。
費用が安い弁護士事務所を選ぶ
少額訴訟の手続きは、当事者だけでできるとはいっても自分だけで行うのは不安であったり、業務が多忙で訴訟手続きに時間を割く余裕がないということもあります。
そのような場合には、弁護士への依頼を検討することになりますが、弁護士に依頼をする際には、できる限り費用の安い弁護士事務所を選択するとよいでしょう。
昔は、どこの弁護士事務所でも同じ弁護士費用の基準が採用されていましたが、現在は、弁護士費用を各弁護士事務所が自由に設定することができるようになっています。過去の弁護士費用の基準をそのまま踏襲しているところもあれば、独自の弁護士費用の基準を定めているところもあります。
そのため、弁護士事務所のホームページを確認したり、相談時に見積もりを依頼するなどして、各法律事務所の費用を比較し、できる限り安い費用の弁護士事務所に依頼をすることで費用負担を抑えることが可能です。
少額訴訟の費用を相手方に請求できるか?
少額訴訟で勝訴判決を得た場合に、少額訴訟でかかった費用を相手に請求できるのでしょうか。
訴訟費用とは?
訴訟で原告が勝訴した場合には、判決で「訴訟費用は被告の負担とする」と命じられることが一般的です。
ここでいう「訴訟費用」には、訴訟提起にあたって必要となる収入印紙代、予納郵券代、出頭日当・旅費、証人の旅費日当などが含まれます。しかし、弁護士費用については、訴訟費用には含まれませんので、相手方に対して請求することはできません。
訴訟費用を請求する場合には、別途裁判を起こさなければならない
少額訴訟で勝訴判決を得たとしても、それだけでは相手方に訴訟費用を請求することはできません。訴訟費用を請求するためには、勝訴判決の確定後に、別途、訴訟費用額確定の裁判を起こさなければなりません。
少額の訴訟費用を請求するために裁判を行うのは面倒だという人も多く、実際に訴訟費用額確定の裁判まで行うケースは多くはありません。どこまで行うかについては、費用対効果という面から検討するようにしましょう。
まとめ
少額訴訟は、弁護士に依頼することなく当事者だけでも十分に行うことができる手続きです。
弁護士に依頼した場合には、着手金や報酬金などの負担が生じるため、請求額によっては、費用倒れになることもあります。
できる限り費用を安く抑えたいという場合には、無料相談などをうまく利用しながら、ご自身で手続きを行うようにするとよいでしょう。