株主総会の特別決議について詳しく解説|普通決議との違いとは

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弁護士相談Cafe編集部
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株主総会は、株式会社における最高の意思決定機関です。

株主総会では、株式会社における一切の事項について決議をすることができますが、決議事項によって決議方法が異なってきます。決議事項の中でも重要なものについては、普通決議よりも要件が加重された「特別決議」によって決める必要があります。

今回は、株主総会の特別決議について詳しく解説します。

1. 会社法|株主総会の特別決議とは?

株主総会の特別決議とは、どのような決議方法なのでしょうか。以下では、特別決議の概要と普通決議との違いについて説明します。

(1)特別決議とは?

株主総会の特別決議とは「議決権を行使することができる株主の議決権の過半数を有する株主が出席し(定足数)」、「その出席株主の議決権の3分の2以上の賛成を要する」決議方法です(会社法309条2項)。

定足数については、定款で引き下げることもできますが、議決権を行使することができる株主の議決権の3分の1未満に引き下げることはできません。

また、表決数については定款で引き上げることができますし、一定数以上の株主の賛成を要する(たとえば、株主全員の同意を要件とする)などの要件を定款で定めることもできます(会社法309条2項)。

(2)普通決議と特別決議の決議要件の違い|定足数など

株主総会の決議方法には、特別決議以外にも普通決議という決議方法があります。

普通決議とは「議決権を行使することができる株主の議決権の過半数を有する株主が出席し(定足数)」、「その出席株主の議決権の過半数の賛成を要する」決議方法です(会社法309条1項、341条)。

会社法や定款に特別の定めがない限りは、この普通決議が株主総会の基本的な議決方法となります。

普通決議と特別決議には、決議要件に関して違いがあり、それらをまとめると以下の表のようになります。

定足数 表決数
原則 定款での変更の可否 原則 定款での変更の可否
普通決議 議決権を行使することができる議決権の過半数 可能 出席株主の議決権の過半数 可能

ただし、過半数の賛成要件を引き下げることはできない

特別決議 議決権を行使することができる議決権の過半数 可能

ただし、3分の1未満に引き下げることはできない

出席株主の議決権の3分の2以上 可能

ただし、3分の2以上の賛成要件を引き下げることはできない

2. 特別決議の決議事項は?普通決議との違いは?

株主総会の特別決議を要する「決議事項」にはどのようなものがあるのでしょうか。以下では、特別決議の決議事項と普通決議の決議事項とその違いについて説明します。

(1)特別決議の決議事項

株主総会の特別決議を要する事項としては、以下のものがあります。

  • 譲渡制限株式の会社による買取り(会社法140条2項)、指定買取人の指定(会社法140条5項)
  • 自己株式の相対での買受け(会社法156条1項、160条1項)
  • 全部取得条項付種類株式の取得(会社法171条1項)
  • 相続人に対する自己株式の売渡請求(会社法175条1項)
  • 株式の併合(会社法180条2項)
  • 募集株式の募集事項などの決定(会社法199条2項、200条1項、202条3項・4項、204条2項)
  • 募集新株予約権の募集事項などの決定(会社法238条2項、239条1項、241条3項・4項、243条2項)
  • 累積投票により選任された取締役の解任・監査役の解任(会社法339条1項)
  • 役員などの責任の軽減(会社法425条1項)
  • 資本の減少(会社法447条1項)
  • 株主に金銭分配請求権を与えない現物配当(会社法454条4項)
  • 定款の変更(会社法466条)
  • 会社分割・合併・株式交換・株式移転、事業の全部または重要な一部の譲渡、解散(会社法467条1項、471条3項、473条、783条1項、795条1項、804条1項)

(2)普通決議の決議事項

一方、株主総会の普通決議を要する事項としては、以下のものがあります。

  • 合意による自己株式の取得(会社法156条1項)
  • 総会検査役の選任(会社法316条1項)
  • 業務財産検査役の選任(会社法316条2項)
  • 株主総会の延期・続行決議(会社法317条)
  • 役員の選任・解任(会社法329条1項、341条)
  • 会社と取締役との間の訴えにおける会社代表者の選定(会社法353条)
  • 会計監査人の出席要求決議(会社法398条2項)
  • 計算書類の承認(会社法438条2項、441条4項)
  • 欠損額を超えない範囲で決定する資本金の額の減少(会社法447条1項)
  • 準備金の額の減少(会社法448条1項)
  • 資本金の額の増加(会社法450条2項)
  • 準備金の額の増加(会社法451条2項)
  • 剰余金の処分(会社法452条)
  • 剰余金の配当(会社法454条1項)

3. 特別決議の拒否権とは?

株主総会の特別決議によって決議をとろうとしても、確実にその議案が承認されるとは限りません。決議をとる場合には、以下の「拒否権」および「拒否権付株式(黄金株)」の存在に注意が必要です。

(1)拒否権

拒否権とは、特別決議を否決することができる権利のことをいいます。株主総会の特別決議は、議決権を行使することができる株主の議決権の過半数を有する株主が出席し、その出席株主の議決権の3分の2以上の賛成を得ることが必要になります。

そのため、総議決権の3分の1を超える株式を保有している株主がいる場合には、その株主の賛成が得られなければ特別決議による決議ができなくなります。

(2)拒否権付株式(黄金株)

拒否権付株式とは、株主総会において決議すべき事項のうち、当該決議のほかに、拒否権付株式を有する株主の賛成を必要とするものです。

上記の拒否権では、総議決権の3分の1を超える株式を保有している必要がありますが、拒否権付株式であれば、それを1株でも保有していれば拒否権を発動することができます。

拒否権付株式は、敵対的買収に対する防衛策において利用されるものであり、不都合な相手に拒否権付株式が渡るのを防ぐために、譲渡制限株式になっていることが多いです。

4. まとめ

会社の重要な意思決定機関である株主総会では、決議事項の重要度によって、決議方法や課される要件が異なってきます。

特に、特別決議は、重要な決議事項が対象になっていますので、定足数や表決数などは普通決議とは違い、より厳しい要件が課されています。

企業の経営者としては、特別決議で決めるのはどのような事項かを正確に理解したうえで、株主総会に向けて準備を進めていきましょう。

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