取締役会の書面決議を行うためには|議事録の文例など紹介

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弁護士相談Cafe編集部
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取締役の人数が多い会社や社外取締役を導入している会社では、取締役会を開催する際に、全員の日程を調整することは負担が大きく、迅速な意思決定に支障を来すことがあります。

このような場合には、「取締役会の書面決議」を利用することによって、役員の負担軽減や意思決定の効率化を図ることができます。

今回は、取締役会の書面決議のやり方やポイント、議事録などの文例、また同意はメールでも可能などかについて解説します。

1.  取締役会の書面決議のやり方とは|どうすればよいのか

取締役会の書面決議とはどのような制度なのでしょうか。以下では、取締役会の書面決議の概要とその手続きのやり方について説明します。

1-1. 取締役会の書面決議とは

まず、会社法370条を確認しましょう。

会社法では『定款に定めることによって、取締役が取締役会の決議の目的事項について提案をした場合において、議決に加わることができるすべての取締役が書面などにより同意の意思表示をしたときは、当該提案(議案)を可決する旨の取締役会の決議があったものとみなして取締役会の開催と決議を省略することができる』のです。

これを「取締役会の書面決議」や「みなし取締役会決議」と呼びます。

これは、外国定住の取締役が増加したことなどから、機動的な業務運営を可能にする趣旨で、会社法によって新たに導入された方法です。

1-2. 取締役会の書面決議の要件

取締役会の書面決議を行うためには、以下のような要件を満たす必要があります。

①取締役全員の書面などによる同意|メールも可

取締役会の書面決議を行うためには、取締役が提案した事項について、取締役全員が書面または電磁的記録によって同意をすることが必要になります。

同意を得る対象となる取締役は、決議事項について特別の利害関係のある取締役を除いたすべての取締役です。

特別の利害関係のある取締役は、取締役会の決議に参加することはできませんので、同意だけでなく提案書の通知も不要です。

なお、「同意書」などの書面を得る方法以外にも「電子メール」などによって同意を得る方法もあります。

②定款による定め

取締役会の書面決議を行うためには、定款にその旨の定めがあることが必要です。

取締役会の書面決議を行うための定款の記載としては、以下のようなものになります。

第○条(取締役会の決議の省略)
当会社は、取締役の全員が取締役会の決議事項につき、書面または電磁的記録によって同意をしたときは、当該決議事項を可決する旨の取締役会決議があったものとみなす。ただし、監査役が異議を述べたときは、この限りではない。

③監査役の異議がないこと

取締役会の書面決議においては、監査役の同意は要求されていません。

しかし、監査役による異議があった場合には取締役会の書面決議ができませんので、実務上は、監査役から異議がないことを証する書面に署名捺印をもらうことが一般的です。

なお、異議を述べることができる監査役は、監査役設置会社の監査役のみですので、監査権限が会計に限定されている監査役は、異議を述べることはできません。

2.  取締役会の書面決議を行う際の注意点やポイント

取締役会の書面決議を行う際には、以下の点に注意が必要です。

2-1. 業務執行取締役による職務執行状況報告は書面決議不可

取締役会には、取締役の職務の執行を「監督する権限」がありますので、会社法では、代表取締役および選定業務執行取締役に対して、3か月に1回以上の職務執行状況の報告を義務付けています(会社法363条2項)。

この定期報告については、たとえ取締役全員の同意があったとしても省略することはできません。

2-2. 重要な決議事項についてはテレビ会議・電話会議などを利用すべき

取締役会の書面決議では、取締役が決議内容を十分に検討することなく同意をしてしまうことがあります。

しかし、十分な検討をすることなく同意をしてしまうと、場合によっては、後日、株主か「任務懈怠責任」を追及される可能性もあります。

そのため、重要な決議事項については、やはり、書面決議ではなく会議による決議を開催する必要があるでしょう。

もっとも、従来の方法では迅速な意思決定に支障を来すこともありますので「電話会議・テレビ会議、ウェブ会議」などといった方法によって取締役会を開催するなどの工夫も必要です。

情報伝達の即時性や双方向性が確保されていれば、上記の方法による取締役会の開催も可能であるとされています。

2-3. 決議があったものとみなされる時期

取締役会の書面決議は、すべての取締役の同意が会社に到達したときに決議があったものとみなされます。

同意書などの書面を利用する場合には、最後の取締役の同意書が会社に到達した時点で取締役会の決議があったものとみなされます。

3. 書面決議を行う場合に必要となる書類のひな形

以下では、「取締役による提案書および同意書」と「取締役会議事録(書面決議)」のひな形・文例について紹介します。

取締役会の書面決議を行うためには、事前に取締役会の決議事項の提案書を送り、同意を得るという手続きを行うのが一般的です。

3-1. 取締役による提案書および同意書の文例

令和〇年〇月〇日

取締役各位

東京都○○区○○番地
株式会社○○
代表取締役 ○○○○

取締役会決議事項についての提案書および同意書

当社の取締役会につきましては、会社法370条の規定に基づき、その開催を省略し、書面による決議をいたしたく存じます。取締役各位におかれましては、下記の決議事項をご確認のうえ、決議事項に同意いただけます場合には、お手数ですが本書面末尾のご署名欄に署名または記名押印のうえ、令和〇年〇月〇日までに当社宛にご提出ください。

【決議を省略する決議事項】
(1)〇〇〇〇〇の件(提案者:取締役〇〇〇〇)
……(略)
(2)〇〇〇〇〇の件(提案者:取締役〇〇〇〇)
……(略)

以上

株式会社○○
代表取締役 ○○○○殿

私は、会社法370条の規定に基づき、上記提案内容に同意いたします。

令和〇年〇月〇日

取締役 ○○○○ ㊞

3-2. 取締役会議事録の文例

 

取締役会議事録

下記の提案事項に関して、取締役全員が同意の意思表示をするとともに、監査役からは異議が述べられなかったため、会社法370条の規定によって、各提案事項を可決する旨の取締役会決議があったとみなされた。

1 取締役会の決議があったとみなされた日
令和〇年〇月〇日

2 取締役会の決議があったとみなされた提案事項
(1)〇〇〇〇〇の件(提案者:取締役〇〇〇〇)
……(略)
(2)〇〇〇〇〇の件(提案者:取締役〇〇〇〇)
……(略)

3 議事録作成に係る職務を行った取締役の氏名
代表取締役〇〇〇〇

令和〇年〇月〇日

株式会社○○
議事録作成者   代表取締役○○○○ ㊞

4. まとめ

今回は、取締役会の書面決議のやり方や提案書・同意書・議事録の文例を解説致しました、

取締役会の書面決議は、実務上もよく行われている方法です。取締役会の書面決議の方法を利用することによって、迅速な意思決定が可能になるなどのメリットがありますので、決議事項によっては、積極的に利用していくとよいでしょう。

ただし、法定の要件を満たさなければ取締役会の書面決議の成立が認められませんので、要件や手続きをしっかりと理解したうえで行うようにしましょう。もし、手続きなどに不安があるようであれば、専門家である弁護士に相談をすることをおすすめします。

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