取締役会の書面決議を行うためには|議事録の文例など紹介
取締役の人数が多い会社や社外取締役を導入している会社では、取締役会を開催する際に、全員の日程を調整することは負担が大…[続きを読む]
会社法では「株主総会」と「取締役」については、どのような会社であっても必ず置かなければならないと定めています。
ただ「取締役会」は、公開会社以外の会社では、設置するかどうかは任意とされています。
取締役会を設置した場合には、一定の決議事項を除き、株主総会に代わって会社の業務執行に関する事項を決定する権限を有することになるため、取締役会は、会社経営の中核を担う重要な機関と言えます。
今回は、取締役会の決議事項一覧や定足数について、また開催頻度、設置義務などを解説します。
取締役会とは、どのような機関で、必ず設置義務があるのでしょうか。以下では、取締役会に関する基本的な事項についてわかりやすく説明します。
取締役会とは、取締役全員によって構成され、その会議によって会社の業務執行に関する意思決定をするとともに、取締役の職務執行の監督をする機関のことをいいます。
公開会社、監査役会設置会社、監査等委員会設置会社および指名委員会等設置会社においては、取締役の全員(3人以上)から構成される取締役会を必ず設置しなければなりません(会社法327条1項、331条5項)。
他方、監査役会を置かない非公開会社など上記に該当しない会社は、取締役会を置くか否かを自由に選択することができ設置義務はありません。
このような会社においては、取締役と株主総会だけというシンプルな機関設計をすることができますが、その場合には株主総会の必要的決議事項の範囲が広く、迅速な業務執行が阻害される可能性もあります。
そのため、そのような点も考慮したうえで適切な機関設計を行う必要があります。
取締役会には、以下のような職務を行う権限があります(会社法295条2項、362条2項)。
取締役会設置会社においては、会社法または定款をもって株主総会の権限とされている事項を除いて、会社の業務執行の権限はすべて取締役会に属します。
取締役会で意思決定をした事項は、代表取締役などの業務執行取締役がその執行を行います。
取締役の職務執行については、取締役会の決定に反するものであってはなりませんので、個々の取締役が適正に職務の執行を行っているかどうかを取締役会が監督することになります。
取締役会の監督権限を担保するために、会社法では、代表取締役および選定業務執行取締役に対し、3か月に1回以上の職務執行状況の報告を取締役会にすることを求めています(会社法363条2項)。
取締役会には、代表取締役の選定および解職の権限が与えられています。
上記の取締役会の監督権限の最も強力なものがこの代表取締役の解職です(会社法362条2項3号)。
代表取締役は、業務執行権限が委ねられた者ですが、解職の権限を取締役会が握っていることによって、代表取締役の暴走を抑止することが可能になります。
会社法では、一定の重要事項については必ず取締役会の決議によらなければならないとしています。取締役会が決定しなければならない重要事項には、以下のものがあります。
重要な財産の処分や譲受けは、会社の事業活動や財務状況に影響を及ぼすことから取締役会の決議事項とされています。
「財産」には、動産や不動産のほかに金銭も含み、「処分」には、財産の出資、貸与、寄付、貸付、担保供与、債権放棄、債務免除などが含まれます。
「重要な財産」であるかどうかは、一般抽象的に決めることはできず、会社の規模、事業の性質、業務または財産の状態などに照らして、代表取締役の決定に任せることが相当であるかどうかという見地から判断しなければなりません。
多額の借財についても上記と同様の理由で取締役会の決議事項とされています。
「多額の借財」に該当するかどうかの判断基準についても上記と同様です。
会社の重要なポストに誰を置くかについては、重要な決定になりますので取締役会の決議事項とされています。
「重要な使用人」であるかどうかは、会社の経営組織や職制上からみて営業所の主任者である支配人に準ずる重要性を持つかどうかによって判断します。
一般的には、執行役員、営業本部長、支店長、工場長などは重要な使用人にあたります。
「会社組織や体制を変更すること」は重要な経営事項です。そのため、取締役会の決議事項とされています。
たとえば、本店の重要な機構の変更、事業部制の採用、海外支店の設置・廃止などがこれにあたります。
社債募集事項のうち重要な事項については、取締役会の決議事項とされています。
取締役会で定めるべき具体的内容については、会社法施行規則99条によって定められています。
健全な会社運営のためには、その会社の営む事業の規模、特性などに応じたリスク管理体制の整備が必要になります。
この体制は、「内部統制システム」と称されており、ある程度規模の大きい会社においては、その整備が必要になってきます。
会社法では、大会社は、必ず内部統制システムの整備に関する事項を取締役会で決定しなければならないとされています(会社法362条5項)。
監査役設置会社、監査等委員会設置会社または指名委員会等設置会社では、一定の要件を満たす場合には、会社法423条1項の役員の責任の一部免除を定款に定めることができます。
この定款の定めに基づき役員の責任免除を行うためには、取締役会の決議が必要になります。
上記の(1)から(7)に列挙したもの以外にも業務執行にあたって重要な事項については、取締役の決定に委ねることができず、必ず取締役会の決議によらなければなりません。
実際に取締役会を開催するにあたっては、どのような頻度や方法で行えばよいのでしょうか。以下では、取締役会の開催に関する基本的な事項について説明します。
取締役会が各取締役の業務執行状況を適切に監督することができるようにするために、代表取締役および業務執行取締役は、3か月に1回以上の頻度で、自己の職務の執行状況を取締役会に報告しなければなりません(会社法363条2項)。
そして、この報告は省略をすることができませんので(会社法372条2項)、取締役会設置会社においては、少なくとも「3か月に1回以上」、取締役会を開催する必要があります。
取締役会の決議は、議決に参加することができる取締役の過半数が出席し(定足数)、その取締役の過半数の賛成をもって行います。
定款をもってこれらの要件を加重することはできますが、軽減することはできません。
取締役は、個人的な信頼関係に基づいて選任されていますので、株主総会のように他人に委任して議決権を行使することはできません。
また、決議の公正を期すため、決議について特別の利害関係を有する取締役は、決議に加わることができません。
取締役会を開催する場合には、一般的に以下のような方法で開催します。
取締役会の招集は、通常、各会社の定款または取締役会決議によって招集権者として定められた取締役(会長など)が取締役会の日の1週間前までに各取締役に対して通知を発することによって行われます。
ただし、この招集期間は、定款によって短縮することが可能です。また、急を要するときには、取締役全員の同意を得ることによって、招集手続きを経ることなく直ちに取締役会を開催することができます。
取締役会の議事運営は、各会社の定款や取締役会規程に基づいて行われますが、その決議は、定款に別段の定めがない限り、決議事項について特別利害関係を有する取締役を除いた取締役の過半数が出席し、その過半数をもって行います(会社法369条1項、2項)。
取締役が遠隔地にいるような場合には、即時性や双方向性を備えたいわゆるテレビ会議方式や電話会議方式など出席役員が一堂に会するのと同程度の議論を行うことができる方法であれば、そのような方法による取締役会の開催も差し支えないものとされています。
取締役会が閉会した後は、速やかに、書面または電磁的記録をもって議事録を作成し、出席した取締役および監査役がこれに署名または記名押印をしなければなりません。
取締役会議事録は、取締役会の日から10年間本店に備え置き、株主や債権者らからの閲覧、謄写請求などに備えることになります。
取締役会は、会社経営に関する重要な事項について決定をするなど重要な意思決定機関となります。
取締役会を十分に機能させることが会社経営や内部統制システムを整備するうえで非常に重要となりますので、取締役会の設置や運営にあたって不安なことがあれば、専門家である弁護士に相談をしてみるとよいでしょう。