債権回収に強い弁護士に依頼すべきか?依頼のメリット・弁護士の選び方
企業が債権回収に失敗すると、資金繰りに支障が生じる可能性があります。
迅速な債権回収を望む場合、弁護士に依頼することをおすすめします。
弁護士に依頼することで、煩雑な債権回収手続きを任せることができ、また回収率も向上する見込みがあります。
この機会に、債権回収のプロセス、弁護士に依頼することの利点や欠点、債権回収を依頼する際の弁護士の選び方などについて解説いたします。
目次
債権回収の大まかな流れ
債権回収とは、債務不履行(未払い)となった債権を回収するための手続きを意味します。
債権回収の流れは、大まかに以下のとおりです。
口頭・メール等での催促
最初は口頭・電話・メール・メッセンジャーなどを通じて、できるだけ早く債権を支払うように催促するのが一般的です。
この段階で債務者が支払いに応じれば、債権回収は短期間かつ低コストで完了します。
ただし、債務不履行を起こした債務者が、催促に応じて自発的に債務を支払う可能性はそれほど高くありません。
債務者が支払いに応じない場合は、本格的な債権回収の手続きへと移行する必要があります。
内容証明郵便による催告
内容証明郵便は、郵便局が差出人・受取人・内容・差出日時を証明してくれる郵便物です。
内容証明郵便によって債務の支払いを催告すると、債務者に対して「本格的に債権回収へと着手した」という印象を与えることができます。
その結果、単に口頭やメール等で催促を行っていた段階よりも、自発的に債務が履行される可能性が高まるでしょう。
また、内容証明郵便による催告には、消滅時効の完成を6か月間猶予する効果もあります(民法150条1項)。
債権の消滅時効完成が迫っている場合には、速やかに内容証明郵便による催告を行い、時効の完成を阻止することが大切です。
民事保全の申立て
債務者が内容証明郵便による催告にも応じない場合、法的手続きを通じた債権回収に移行します。
ただし、法的手続きを通じて債権の存在が確定しても、債務者に財産がなければ、実際に債権を回収することはできません。
債務者の中には、債権回収が開始されたとわかった途端に、財産を浪費したり、別の人に譲渡したりして債権回収を逃れようとする者がいるので要注意です。
債務者財産の流出を防ぐためには、民事保全法に基づく仮差押えの申立てが有効になります。
仮差押えには、財産の処分等を禁止する効果があるため、債務者財産の防止に役立ちます。
なお、仮差押えの手続きは債務者に知らせずに行われ(密航性)、かつ1週間程度の短期間で完了します。
速やかに仮差押えの申立てを行うことが、債権回収を実現するための重要なポイントです。
訴訟・支払督促等で債務名義を取得
債権回収は、最終的に強制執行によって実現しますが、その際に必要となるのが「債務名義」です(民事執行法22条各号)。
債務名義とは、強制執行の申立てによる公文書で、以下のものがあります。
・確定判決
・仮執行の宣言を付した判決
・抗告によらなければ不服を申し立てることができない裁判(確定しなければその効力を生じない裁判にあっては、確定したものに限る
・仮執行の宣言を付した損害賠償命令
・仮執行の宣言を付した届出債権支払命令
・仮執行の宣言を付した支払督促
・訴訟費用等の負担額を定める裁判所書記官の処分
・強制執行認諾文言が記載された公正証書(執行証書)
・確定した執行判決のある外国裁判所の判決
・確定した執行決定のある仲裁判断
・確定判決と同一の効力を有するもの(和解調書・調停調書・審判書など)
債権回収の際に活用されることの多い債務名義は、主に「確定判決」「仮執行の宣言を付した判決」「仮執行の宣言を付した支払督促」の3つです。
これらの債務名義は、訴訟または支払督促の手続きを通じて取得します。
①訴訟
確定判決・仮執行の宣言を付した判決については、民事訴訟の手続きを通じて取得します。
債権の存在を証拠により立証することに成功すれば、裁判所は債権者の請求を認める判決を言い渡します。
認容判決には、債権者の申立てによって仮執行の宣言が付される場合があります。
判決に仮執行の宣言が付されれば、早期に強制執行を申し立てることが可能です。
また、控訴・上告の手続きを経て判決が確定すれば、確定判決を強制執行の債務名義として用いることができます。
②支払督促
訴訟を通じた債権回収は、煩雑かつ時間がかかります。
迅速な債権回収を図りたい場合には、裁判所に支払督促を申し立てることも有力な選択肢です。
参考:
支払督促|裁判所
https://www.courts.go.jp/saiban/syurui/syurui_minzi/minzi_04_02_13/index.html
支払督促は、裁判所が債務者に対して債務の履行を促す手続きです。
債務者が支払督促を受け取ってから2週間以内に異議申立てが行われなければ、債権者は支払督促に仮執行宣言を付すことを裁判所に請求できます。
仮執行宣言を付した支払督促は、強制執行の債務名義として利用することが可能です。
強制執行の申立て
債務名義を取得したら、裁判所に強制執行を申し立てます。
強制執行の手続きでは、債務者の財産を差し押さえたうえで、換価処分や転付命令等を通じて、債権の弁済に充当します。
なお、強制執行を申し立てる際には、債務者財産を特定する必要がある点に注意しましょう。
債権回収を弁護士に依頼するメリットは?
債権回収は、弁護士に依頼することで手間なくスムーズに行うことができます。
債権回収を弁護士に依頼することの主なメリットは、以下のとおりです。
債務者にプレッシャーを与える効果がある
弁護士から債権回収の連絡を受けた債務者は、債権者が本腰を入れて債権回収に着手したことを認識するでしょう。
訴訟・支払督促・強制執行といった法的手続きへの移行も現実的となるため、プレッシャーを感じた債務者が任意に債務を支払う可能性が高まります。
煩雑な債権回収の手続きを一任できる
債権回収を本格的に行うためには、訴訟・支払督促・強制執行などの法的手続きを含めて、全体的に煩雑な対応が要求されます。
時間も労力もかかりますし、対応を誤ると債権を回収できなくなってしまうおそれがあるので、慎重に対応しなければなりません。
弁護士に依頼すれば、債権回収に必要となる煩雑な手続きを一任できます。
会社としては、日々の業務に注力することができますし、適切な対応によって回収確率が上がることも期待できます。
債権回収を弁護士に依頼するデメリットは?
債権回収を弁護士に依頼する場合、弁護士費用がかかる点がデメリットとなります。
弁護士費用の具体的な仕組みは、個々の弁護士が定めている報酬体系によって異なります。
かつて日本弁護士連合会が定めていた報酬基準では、訴訟による債権回収の弁護士費用は以下のとおり規定されています(いずれも税抜)。
- ①着手金
- 事件の経済的な利益の額が
- 300万円以下の場合:経済的利益の8%
- 300万円を超え3,000万円以下の場合:経済的利益の5%+9万円
- 3,000万円を超え3億円以下の場合:経済的利益の3%+69万円
- 3億円を超える場合:経済的利益の2%+369万円
- ②報酬金
- 事件の経済的な利益の額が
- 300万円以下の場合:経済的利益の16%
- 300万円を超え3,000万円以下の場合:経済的利益の10%+18万円
- 3,000万円を超え3億円以下の場合:経済的利益の6%+138万円
- 3億円を超える場合:経済的利益の4%+738万円
上記はあくまでも目安ですので、実際の弁護士費用は個々の弁護士にご確認ください。
債権回収を依頼する弁護士の選び方
円滑に債権回収を実現するためには、弁護士選びも重要なポイントになります。
弁護士によって、債権回収に関する知識や経験には差があるからです。
債権回収を依頼する弁護士を選ぶ際には、以下の方法により検討・選定を進めるとよいでしょう。
ホームページやポータルサイトで情報収集する
最近では、ホームページやポータルサイトを通じて、業務内容や事務所の特徴などを紹介する弁護士が増えています。
弁護士のホームページやポータルサイトでは、債権回収に関する実績や解説記事などが掲載されているケースがあります。
これらの記載が充実しているかどうか、信頼性のある内容かどうかといったポイントは、債権回収を依頼する弁護士を選ぶ際の参考となるでしょう。
無料法律相談を利用する
債権回収に関する法律相談は、無料で実施している弁護士もたくさんいます。
信頼できる弁護士に巡り合うためには、実際に弁護士と話をしてみることも大切です。
わかりやすい説明をしてくれるかどうか、質問にきちんと答えてくれるかどうかといったポイントを、無料法律相談を通じて確認するとよいでしょう。
複数の弁護士から相見積もりを取得する
前述のとおり、債権回収の弁護士費用は個々の弁護士によって異なります。
弁護士費用が多額になるほど、債権回収による利益が減ってしまいます。
安ければ安いほどよいというわけではありませんが、債権回収を依頼する弁護士を選ぶ際には、弁護士費用も重要な要素の一つでしょう。
弁護士費用が合理的なものであるかどうかを確認するためには、複数の弁護士から相見積もりを取得することをお勧めいたします。
費用面を含めて複数の弁護士を比較し、サービスの質・費用ともに納得できる弁護士にご依頼ください。
債権回収は弁護士にご相談ください
債権回収に強い弁護士にお任せいただければ、法的手続きを含む必要な手続きをすべて代行いたします。
複雑で手間のかかる手続きを弁護士にお任せいただくことで、日常業務に集中することが可能です。
債権回収に課題が生じた際は、ぜひ早急に弁護士にご相談ください。