不倫の慰謝料請求が届いた!奥さんからの内容証明は無視すべき?

服部 貞昭
ファイナンシャル・プランナー(CFP・日本FP協会認定)
2級ファイナンシャル・プランニング技能士(国家資格)
東京大学大学院 電子工学専攻修士課程修了
新宿・はっとりFP事務所
離婚と住宅
  • 不倫相手の奥さんから不倫の慰謝料請求をするという内容証明郵便が届いたが、どうすればいい?
  • 不倫慰謝料請求の内容証明を無視するとどうなるの?
  • 不倫が奥さんにバレた場合は、どうするべきなの?

現実では、バレずに上手く不倫を続けていると思う人も多いかもしれません。しかし、Twitter(X)などのSNSで「サレ妻」「サレ夫」の投稿が話題になることが多いように、不倫相手の配偶者(旦那・奥さん)に浮気がバレて慰謝料請求をされる、というケースは少なくありません。
特に、奥さんに不倫がバレることを、俗に「奥バレ」と呼びます。

相手の奥さんに浮気がバレても、謝罪だけで解決することは少ないです。実際には慰謝料を請求され、その金額を見て多くの方が困惑します。「内容証明郵便」が突然家に届き、数百万円の慰謝料の支払いを求められることもあるのです。
特に、シングルマザーや若い学生で不倫をしてしまっていた場合は、その金額に絶望感を覚えるでしょう。

このような時、内容証明郵便を無視したくなるのは当然の心理ですが、その対応は正しいのでしょうか?
また、どのような手順で対処するのが最善なのでしょうか?

奥さんに不倫がバレたらまずするべきこと

内容証明郵便の中身を確認

不倫の慰謝料請求は、多くの場合で普通郵便ではなく「内容証明郵便」で届きます。
「内容証明郵便」とは、郵便局に送付を依頼した文書について、「このような内容で書類を郵送しました」ということを証明できる発送方法です。

内容証明と聞くと「公式な文書だから、すぐ内容に従わなくては」と考えがちですが、実際はそれほど大掛かりな文書ではありません。一般的な請求書・通知書と同じものとお考えください。

内容証明郵便を受け取ったら、まずは開封して内容を確認しましょう。
誰から、いくら請求されたのかを知ることが大事です。

不倫・浮気相手の奥さんから直接連絡された場合

まず、不倫相手の配偶者から直接請求されるパターンがあります。
この場合、内容証明郵便ではなく、LINEや電話などの口頭で「慰謝料を支払え!」と言われることがあるかもしれません。あるいは、メールや手紙などで「慰謝料を支払ってください」と請求されるかもしれません。

いずれにせよ、すぐに支払いの対応をしなければいけない段階とはいえません。
相手も感情的になっているケースが多く、誠実に対応して反省を示せば慰謝料などを支払わずに穏便に解決できる可能性もあります。

とはいえ、内容証明郵便で請求された場合は本気度が高いと言えますので、無視せず期日までに連絡した方が良いでしょう。
その後の交渉方法については、後の段落で解説します。

相手の奥さんに依頼された弁護士からの請求の場合

次に、相手の奥さんが弁護士に依頼し、その依頼された弁護士から請求されたケースです。

弁護士に依頼しているということは、相手方も本気で慰謝料を請求しようと考えていることでしょう。放置していると訴訟を起こされる可能性がありますので、放置せず必ず書かれてある連絡先(弁護士宛)に連絡する必要があります。
通常は応答の期限が示されているため、その期日までに応答します。

ただし、ここで「○○万円支払います」など確定的なことは言わないようにしましょう。弁護士からの郵便でも、やはりまだ交渉を始める段階だと考えてください。

回答書で返事をする

内容を確認したら、期日までに連絡をするべきということが分かりましたが、この時、どのように連絡するべきか分からないというケースが多いでしょう。
特に、相手が奥さん本人の場合、怒りや悲しみを抱く相手方に配慮してコンタクトを取る必要があります。

そこで、「回答書」という返事を書くことが有効です。正式な文書として反論あるいは打診を行うのです。
内容としては、以下のような内容が必要です。

  • 回答書やおわび状というタイトルにて返事をする
  • 不倫が事実なら、具体的な事実を書いた上でお詫びの言葉を必ず書く
  • 金額に不満があるなら、支払い能力がないこと、いくらなら支払えるかを書く
  • 示談書を作成したいことを伝える

文例

◯◯(請求者の名前)様

お詫び状(回答書)

内容証明郵便に書かれた損害賠償請求について回答します。

書かれている平成〇年〇月から平成〇年〇月まで不倫関係にあったという内容は事実であり、深く反省しています。心からお詫びを申し上げます。

お支払いをしたく思いますが、現在の経済的状況を考えると、お支払いが難しい状況ございます。(あるいは「◯◯円なら支払い可能です」といった支払い能力に関する文言を入れる。)
上記金額でご納得いただけるようでしたら、示談書を作成したい所存です。

この度は、多大なるご迷惑をかけ、申し訳ございませんでした。

日付
氏名(請求された側)
住所  印鑑

しかし、相手方の請求について「事実と異なる」と考える場合や、「どのくらいの支払いが妥当かわからない」というケースもあることと思います。
この場合は、届いた内容証明郵便を持って弁護士に相談してみてください。

裁判所からの訴状は無視しないこと

内容証明郵便を無視した結果、裁判所から訴状が届いた!という場合もあるでしょう。

訴状が届いたら無視してはいけません。内容を確認して、すぐにでも弁護士に相談しましょう。
訴訟では相手方に弁護士がついていることがほとんどですので、こちらも弁護士で対応した方が対等に手続きを進めることができます。

仮に訴状など裁判所から届いた書類を無視していると、相手の主張のまま請求が認められ、高額な慰謝料を支払わなければいけなくなってしまうこともあります。これさえ無視していると、給料の差し押さえなどの強制執行に発展するでしょう。

不倫慰謝料に関する示談交渉のやり方

内容証明郵便が届いて奥さんから慰謝料請求されていることを認識していたにも関わらず、どうすれば良いか分からず無視してしまうと、相手方から裁判を起こされてしまう可能性があります。内容証明郵便の放置はやめましょう。

とはいっても「すぐ支払うべき」というわけでもありません。
不倫が事実であっても、相手方と交渉を行うべきというケースが多いでしょう。

支払いの根拠があるのかどうかを確認

仮に不倫の事実があっても、内容によっては支払わずに済むことがあります。
したがって、まずは支払うべき理由があるのかを確認するべきです。

以下の事情に当てはまれば、支払う必要がないケースが多いでしょう

  • 不倫の事実がない(この「不倫」は原則として肉体関係のみを指す)
  • 不倫の事実はあるものの、相手から強制的に肉体関係を迫られた
  • 不倫時に、相手方夫婦の婚姻関係が破綻していた
  • 既婚者であることを知らなかった、かつ知らなかったことに落ち度がない

当然ながら、不倫(肉体関係)がなければ請求の根拠がありません
相手と食事をしただけ、デートしただけ、キスをしただけ等であれば、原則として不倫の事実があったということはできません。

相手が上司等で強い圧力によって強制的に性交渉を迫られたケースなどでは、逆に相手に損害賠償を請求できる可能性があります。

不倫時に相手方が離婚に向けた別居を開始している場合などは、守るべき婚姻関係が既に破綻しているため、慰謝料請求ができません。
さらに、相手に未婚だと騙されていたというケースの場合も、支払わずに済む可能性が高いです。

とはいえ、上記の場合でも個別の事情によっては慰謝料請求が発生する可能性もあるため、不安な場合は無視することなく弁護士に確認するのがベストな対応といえるでしょう。

不倫慰謝料の減額交渉する

不倫の慰謝料請求は、正式には不法行為に対する損害賠償請求となります。
婚姻関係にある相手と関係を持ったことで配偶者の女性・男性を傷つけたこと(精神的苦痛)に対し、損害賠償としての慰謝料を支払うことでトラブルを解決するのです。

不倫慰謝料の金額・相場はいくら?

慰謝料の金額に関しては、当事者が納得して合意に至れば、その金額が損害賠償の金額となります。つまり、具体的に法律で金額が定められているというわけではないのです。

もっとも、交渉での相場はあり、全体で考えると50-300万円となるケースが多いです。
実際の金額は、不倫の期間、回数、夫婦仲、婚姻年数、子供の有無、離婚の有無、支払う側の経済状況などを総合的に考えて、妥当な金額を判断していきますので、相場よりも高くなる・低くなることはあり得るでしょう。

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しかし、慰謝料を請求する場合は、高めに請求して相手の出方を見ることもよくあります。
例えば、最初は500万円を内容証明郵便で請求してきたが、交渉の末に最終的に支払った金額は200万円というケースもあります。減額交渉を前提として最初の請求では高めに設定されることも多いため、「高すぎる!」と感じるならば減額交渉をするべきです。

不倫慰謝料が減額される条件としては、以下のような内容が挙げられるでしょう。
ポイントは、不倫された配偶者の精神的苦痛が少ないと判断できるかどうか?という点にあります。

  • 不倫の結果として離婚や別居に至っていない
  • 子どもがいない
  • 不倫期間が短い、回数が少ない(半年以内・1〜2回のみなど)
  • 不倫が相手からの誘いで始まった
  • 不倫相手が会社の上司など地位が高い人だった(関係を断りにくかった)

特に、不倫関係が相手の積極的なアプローチにより始まり、その後関係を拒否できなかった(会社の上司である、先輩である)場合など、こちらが不倫に積極的でなかったという事情がある場合は、減額の要因となります。

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なお、あなた自身も既婚者であるという場合には、あなたの配偶者から相手方(不倫した人)に対しても請求が可能です(=ダブル不倫)。つまり、両者の家計がともに支払い責任を負いかねないため、減額や相殺で解決するという方法があることを覚えておきましょう。

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求償権は放棄することになる

不倫の当事者二人は、どちらにも不倫の責任があります。共同不法行為者といって、不倫は行った当事者2人に平等に責任があると考えられているためです。
よって、不倫の慰謝料請求を受けた場合は、その請求の半分はあなたの不倫相手(婚姻している側)に負担させることができます。

しかし、実際には不倫の示談をする際、支払い後に「もう一方の相手に対し求償権を主張(半分支払うように相手に言うことを)しない」という「求償権の放棄」を取り入れることが通常です。
場合によってはこの求償権の放棄を主張することで減額を見込めるかもしれません。

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慰謝料の分割払いをお願いする

損害賠償請求に対する支払いは、一括払いが基本です。しかし、いくら減額してもらった金額であっても、「何十万、何百万もの大金をすぐには用意できない…」という方は多いでしょう。
このような経済的事情がある場合には、分割払いの交渉を行うことで対応します。

分割払いを選択すると、相手も「支払ってもらえないリスク」があると考えます。
そのため、以下のような内容が条件となりやすいでしょう。

  • 慰謝料を高めにする
  • 期限はなるべく短く設定する
  • 初回でできる限りの一時金の支払いを受け、その後は分割とする
  • 示談交渉時に公正証書を作成する(強制執行が可能)

特に、公正証書を作成すると、支払いが滞った場合はすぐに強制執行が可能となります。給料や預金などの資産を差し押さえることが容易になるため、公正証書の作成は必ず行われると考えておくべきでしょう。

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不倫慰謝料の減額対応を弁護士に依頼するメリット

不倫慰謝料請求をされても、そこから長い時間放置してから弁護士事務所に駆け込んでくる方は意外と多いです。
最初は「支払う必要がない」と思っていても、相手方が本気になって弁護士をつけ訴訟を提起されたら、こちらも放置しておくことはできなくなるのです。

訴訟を起こされてからでは減額交渉が難しいこともあり、穏便に解決することも叶いにくくなります。
そのため、不倫の事実があり慰謝料請求を受けたならば、無視せず誠実に対応することが大切です。

特に、相手に弁護士がついている場合には、こちらも弁護士をつけることをおすすめします。

弁護士依頼のメリット3つ

不倫慰謝料に関する弁護士依頼のメリットは以下の通りです。

  • 請求額が妥当な金額かどうか判断できる
  • 適切な減額交渉、分割払いの交渉などができる
  • 相手方からの脅しや嫌がらせがあっても、適切な警告をしてもらえる

「減額したい」と思っていても、どのくらいが現実的か判断できないのが通常です。
弁護士に相談すれば、不倫の内容や相手方の夫婦関係等から、最終的に妥当な金額を提示してもらえます。

また、不倫の事実はあるものの「請求を否定できる理由がある」といえるかも…と考える場合も弁護士に相談してください。
相手に主張してうまくいけば良いですが、相手から反論を受けた場合は問題が長期化する場合もあります。当事者間のトラブルを長引かせないためにも、専門的なアドバイスを受けるのが賢明なやり方です。

このように、ご自身で判断できない事情に関しては、専門家である弁護士に相談すべきです。

弁護士費用の相場

不倫慰謝料の減額に関する弁護士費用の相場は、着手金で20万円〜30万円(もしくは請求額の10-20%)、さらに成功報酬として利益の10-20%程度となります。以下が計算例です。

《200万円の請求で、100万円に減額できた場合》
①着手金(固定):20万円〜30万円
成功報酬(減額幅の10-20%):10-20万円

②着手金(請求額の10%-20%):20万円
成功報酬(減額幅の10-20%):10-20万円

また、これにプラスして、実費として日当1-3万円程度がかかることもあります。

不倫慰謝料の問題は専門家に相談すべき

不倫慰謝料を請求された場合、相手方から求められた期日は守って連絡をすること、そして反省の気持ちを相手方に見せることが大事です。
「こちらとしては償いたい気持ちがあるが、現実的に支払える収入がない」ことなどを丁寧説明していけば、減額交渉にも応じてくれる可能性があります。

とはいえ、素人の方が自力で不倫の慰謝料交渉を行うと、トラブルが大きくなり長期化しがちです。
弁護士を通せば冷静かつスムーズに解決できるため、比較的早く解決できるでしょう。

さらに、ご自身で対応するよりも、「弁護士が対応している」というだけで減額幅が大きくなる可能性もあります。

内容証明郵便が届き、奥さんに慰謝料請求されてどう対応して良いか悩んでいる方は、ぜひ一度弁護士にご相談ください。

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