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子連れ離婚の手続きの順番|子供ありの流れとまずやることリスト
子連れの離婚はハードルが高いものです。子どもがいない状態での離婚よりも必要な準備が多く、また、子どもと不自由なく暮らせるような離婚後の住まいも整えなければなりません。貯金なしの場合、仕事(収入)の面での問題もあるでしょう。
子連れの離婚を決意した場合、女性(妻)はまず何をするべきなのでしょうか?どのような順番で離婚手続きを進めれば良いのでしょうか?
この記事では、子連れ離婚を考えている女性に向けて、子供がいる場合の離婚の手続きの流れ、するべき準備の順番、住まいやお金に関する対応策などについて解説します。
離婚条件を決める際のアドバイスややることリストも掲載しているため、ぜひ参考にしてください。
目次
1.子連れ離婚手続きの準備・やることリスト
子ありの離婚を決意したならば、まずは事前の準備が必要です。手続きの進め方や離婚後の生活についてもしっかり理解しておきましょう。
配偶者・自治体等に対して請求可能なお金を調べる
子連れでもそれ以外でも、離婚をする場合は配偶者に対してさまざまな金銭的請求ができる場合があります。
女性が離婚を決めたらまずすること、やることの1つ目として、まずはこのようなお金の請求についてしっかり整理することです。
配偶者に対して請求可能なお金の種類としては、婚姻費用・財産分与・慰謝料・養育費などがあります。
それぞれの詳細については、段落3で解説しています。
特に、子どもがいると離婚後の生活にはお金がかかりますので、上記のお金をできるだけ多く獲得することが重要です。
「難しそうだから」「大した額はもらえないだろうから」などと思わず、弁護士に相談をしつつそれぞれの金銭を請求するための手続きの準備を整えていきましょう。
また、女性がひとり親家庭になった、安定した収入が得られなくなったなどの理由により、離婚後に自治体から助成金を受け取れる場合もあります。
特に貯金なしの場合や収入が少ない場合は、これらの助成金についても必ずチェックするべきと言えるでしょう。
助成金制度の内容は、居住している市区町村によっても異なります。離婚後の居住地となる自治体に問い合わせるなどして、子連れ離婚の前に確認しておきましょう。
離婚の理由を明確にし、必要に応じて証拠を収集する
配偶者を説得するため、子連れであっても離婚をする理由を明確にしておくことも大切です。
婚姻関係を続けられない理由をはっきりと説明し、協議離婚において合意ができれば、離婚が調停や裁判までもつれ込むことはありません。
なお、話し合いがまとまらずに裁判で離婚を争う場合には、民法770条1項各号に規定される離婚事由がなければ、離婚が認められないことに注意が必要です。
裁判上の離婚(民法770条1項)
夫婦の一方は、次に掲げる場合に限り、離婚の訴えを提起することができる。
一 配偶者に不貞な行為があったとき。
二 配偶者から悪意で遺棄されたとき。
三 配偶者の生死が三年以上明らかでないとき。
四 配偶者が強度の精神病にかかり、回復の見込みがないとき。
五 その他婚姻を継続し難い重大な事由があるとき。
離婚裁判では、これらの離婚事由の存在は証拠により立証する必要があります。
たとえば、不倫やDVなどを離婚事由として主張する場合は、その事実を裏付ける写真・動画・メールやLINEなどの証拠を集める必要があります。
また、子連れ離婚の条件について話し合い・裁判をする場合、配偶者の財産状況についての証拠も重要になります。
たとえば、以下のような書類があれば、配偶者の財産状況を明らかにするのに役立つでしょう。
- 預貯金通帳
- 所得を証明する書類(源泉徴収票、納税証明書など)
- 不動産登記簿謄本
- 生命保険に関する書類
- 証券口座の明細
これらの証拠をどのように集めたら良いのか分からない、配偶者との話し合いが不安だといういう場合には、離婚や男女問題に強い弁護士にご相談ください。
離婚後に備えて経済的に自立する
子連れで離婚をする場合、収入や財産(貯金)が少なくなりがちな女性にとって大きな問題となるのが経済面です。
特にこれまで専業主婦だった場合は、収入源となる職もキャリアもない状態からのスタートになります。
そのため、まずすることの1つとして、離婚後の生活設計をしっかりと行い、将来の家計収支が成り立つかどうかについて事前に検討しておきましょう。
財産分与の手続きなどでもらえる金銭を当てにすることもある程度は可能ですが、離婚後の生活を安定させるためには、ご自身の収入を安定させることが何より重要です。
現在貯蓄がなかったり専業主婦であったりするならば、離婚の話し合いへと進む前に仕事を確保し、収入をある程度安定させておくことが望ましいでしょう。
子連れ離婚後の住まいを確保する
子連れ離婚後の住居を探す際には、自分自身の生活スタイルに合った場所ということだけでなく、子どもの通学・通園などのことも考慮しなければなりません。
また、子どもと一緒に住む場合と一緒に住まない場合とでは、住まいの条件が異なってくることもあります。
子あり離婚後の住居探しや転居の手続きは、時間的な余裕をもって行うことが望ましいです。急いで決めてしまうと後悔することになりかねません。不自由のない生活を送るためにぴったりの住まいを慎重に選ぶようにしましょう。
なお、実家に帰るという選択肢も考えられます。その際には両親に事前に子連れ離婚の事情を説明しておく必要があるでしょう。
2.相手に離婚の意思を伝える|上手な伝え方とは?
子連れの離婚に向けて上記のような準備が整ったら、ステップ2として、実際に配偶者に対して離婚の意思を伝えることになります。
しかし、離婚を切り出すのはなかなか勇気がいることです。離婚の意思を上手に伝る方法はあるのでしょうか?
離婚のような重大な決め事については、しっかりと顔を合わせて口頭で伝えるべきと考える方も多いと思います。
しかし、離婚の意思を伝える際には、口頭ではなく文章で伝えることもおすすめします。
文章であれば、離婚の意思を明確かつ論理的に伝えることができるでしょう。形式は手紙でもメールでも構いません。
また、口頭で伝えたい場合でも、言いたいことをメモにして準備しておくことがおすすめです。
さらに、配偶者に対して感情的な態度で接しない努力をすることが大切です。
感情的になってしまうと、女性・男性の双方がけんか腰になり、スムーズな話し合いができなくなってしまう可能性があります。
あくまでも離婚の意思を伝える際には、配偶者を批判することなく、自分が考えていることを順番に丁寧に伝えるようにしましょう。
なお、もしDVやモラハラが理由で離婚したい場合は、ご自分の身に危害が及ばないよう、離婚を伝える前から弁護士に相談し、交渉時代を弁護士にお任せするべきです。
必要に応じて自治体の「配偶者暴力相談支援センター」等への相談も検討しましょう。
離婚自体について合意が得られた場合は段落3へ、反対された場合は段落5へ進んでください。
3.夫婦で離婚条件について話し合う
配偶者から離婚についての合意が得られた場合には、離婚の条件面について話し合います。
子どもがいる場合に特に決めておくべき条件と、子どもあり・子どもなしにかかわらず決めておくべき条件があります。
離婚後にトラブルが蒸し返されないよう、漏れなく話し合いを行うことが大事です。
子どもありの場合に決めておくべき離婚条件
夫婦の間に子供がいる場合に決めておくべき離婚条件は、以下のとおりです。
親権
2024年現在の日本では、離婚後はどちらかの親が単独で子どもの親権者になります。
離婚届を提出する際にも子どもの親権の所在を記載する必要がありますので、事前に親権者をどちらにするかについて話し合っておきましょう(数年以内には共同親権が可能となります)。
なお、仮に調停や裁判になった場合、夫婦それぞれの収入状況や生活環境、これまでの子育てへの貢献度、子どもの意思などが考慮されて親権者が決定されます。
調停や裁判における親権者の決定の際にどのような要素が考慮されるかについては、以下の記事を参考にしてください。
養育費
未成年の子がいる場合には、両親の年収・子どもの年齢・人数に応じて、養育費の金額を決定します。
入学費用など、まとまったお金が必要となった際などの分担についても事前に決めておくことが可能です。
養育費については、裁判所の計算方法を元に試算できるツールをご用意しています。必要に応じてご活用ください。
面会交流
子どもと離れて暮らす親の側が、離婚後にどのように子どもと交流するか?についても話し合っておく必要があります。
面会交流について決めておくべき事項としては、以下のようなものが考えられます。
- 面会日時
- 面会頻度
- 面会場所
- 子どもの受け渡し方法
- 連れて行かない場所
面会交流について詳しくはこちらの記事で解説しています。
特に子どもについての話し合いは感情的になってしまう場合もありますので、弁護士を代理人として立てて交渉してもらうことをおすすめいたします。
子どもあり・なしに関わらず決めておくべき離婚条件
子どもがいる・いないにかかわらず、夫婦が離婚をする際に共通して決めておくべき離婚条件は、以下のとおりです。
財産分与
婚姻期間中に夫婦が共同で築いた財産については、「財産分与」によって夫婦間で公平に分ける必要があります(民法768条1項)。
特に、夫婦のうち収入が少ない側にとっては、財産分与がどの程度認められるかが極めて重要です。
財産分与を行うにあたっては、配偶者が所有している財産を正確に把握することが大切です。
これについてはご自身で集める必要がある書類もありますが、弁護士にも調査を依頼するといいでしょう。
なお、財産分与の割合は原則として2分の1ですが、協議により割合は自由に決めることができます。
特に、どちらか一方の特殊技能によって収入を稼ぎ出した側面が大きいと判断される場合には、異なる割合による財産分与が行われることもあります(医師など)。
財産分与の詳細については、以下の記事もご参照ください。
婚姻費用
婚姻費用とは、夫婦生活を営むうえで必要となる費用です。
特に婚姻中の別居期間があるケースにおいて、婚姻費用の精算が問題となります。
婚姻費用の詳細については、以下の記事をご参照ください。
慰謝料
離婚の原因が配偶者の不貞行為(不倫)やDVであるなど、もっぱら配偶者の側に責任があると認められる場合には、慰謝料を請求できる場合があります。
また、配偶者の合意なく勝手に別居をする(同居義務違反)、生活の様々な場面でお互いに協力しない(協力義務違反)、生活費や医療費を渡さない(扶助義務違反)など、婚姻関係に関する義務違反も慰謝料の対象です。
配偶者に対して慰謝料を請求するには、配偶者の不法行為(民法709条)を基礎づける事実について立証しなければなりません。
離婚の慰謝料の詳細については、以下の記事をご参照ください。
こうした離婚の条件について、配偶者と合意できた場合は段落4へ、合意できなかった場合は段落5へ進んでください。
4.合意した内容を離婚協議書にまとめる
離婚協議書の作り方
夫婦間で離婚の条件について合意できたら、その内容を離婚協議書の形でまとめておきましょう。
離婚協議書の作成は法律上義務付けられているわけではありませんが、後から離婚の条件について合意があったことを証明するのに役立ちます。離婚後のトラブル防止という効果もあるでしょう。
離婚協議書の内容についてのイメージを持つためには、以下の離婚協議書サンプルメーカーを利用してみてください。
離婚協議書は公正証書にする
なお、離婚協議書は、公正証書の形式で作成することがおすすめです。
公正証書の中で「債務者が直ちに強制執行に服する」旨が記載されていれば、合意内容が履行されなかった場合に裁判を経ることなく直ちに強制執行することができます(民事執行法22条5号)。
公正証書はこのように非常に強力なものですので、弁護士のサポートを受けて作成することをお勧めします。
5.離婚に合意できない場合の手続き|離婚調停申立
配偶者が離婚自体に反対していたり、離婚の条件について合意が得られなかったりした場合は、裁判所を通じた手続きによって解決することになります。
離婚調停を申し立てる
夫婦同士での離婚の話し合いがまとまらない場合、最初の解決手段となるのが「離婚調停」です。
離婚調停では、調停委員が夫婦双方の言い分を交互に聞いて、双方が合意できる離婚調停案の作成が試みられます。
家事事件手続法257条1項の規定により、離婚事件についてはいきなり裁判を起こすことはできず、原則として先に離婚調停を申し立てる必要があります。
そのため、弁護士と相談をして、まずは離婚調停を前提とした準備を進めるようにしましょう。
離婚調停の場では、夫婦が直接対話する必要はありません。調停委員が交互に話を聞くため、ヒートアップせずに冷静な話し合いが行われやすいというメリットがあります。
離婚調停にかかる費用としては、以下のようなお金が必要です。
(※弁護士に依頼する場合には、これに加えて弁護士費用も必要。)
- 収入印紙1,200円分
- 連絡用の郵便切手の購入費用
- その他公的書類の発行費用
離婚調停の費用や必要書類の詳細については、それぞれ以下の記事で解説しています。
離婚調停が不成立の場合は離婚裁判
離婚調停は、夫婦双方が調停委員よる離婚の条件に合意できなければ不成立となってしまいます。
その場合は、裁判の場で離婚について争うことになります(離婚裁判)。
離婚裁判では、夫婦双方がそれぞれ主張・立証を行い、離婚を認めるかどうか、および離婚の条件について裁判所の判決が言い渡されます。
離婚裁判はきわめて専門的な法的手続のため、弁護士に代理人への就任を依頼することが一般的です。
離婚裁判の詳しい流れについては、以下の記事をご参照ください。
まとめ|子連れの離婚は弁護士に相談を
離婚を決意した場合には、話し合い(協議)・調停・裁判などの離婚手続きに向けた準備(証拠集めなど)、離婚後の生活に向けた準備、配偶者の説得など、やるべきことがたくさんあります。
必要に応じて弁護士にアドバイスを受けながら、段階ごとにやるべきことを確実にこなしていくようにしましょう。
法律の専門家のアドバイスがあると、先を見通した対応ができます。
「自分は今、何をするべきか」「有利な条件で離婚するにはどうしたら良いか」「子どもに不自由させないためにやるべきことは何でもやりたい」などとお考えの方は、ぜひ一度離婚に強い弁護士にご相談ください。