面会交流調停とは?流れ・聞かれること・必要書類などを解説
面会交流について離婚の際の夫婦間の話し合いで条件がまとまらなかった場合、面会交流の概要を取り決める調停を行うことにな…[続きを読む]
子どもがいる状態で離婚をした場合、親権者にならなかった方の親は「面会交流」によって子どもと定期的に会うことができるのが通常です。このために、離婚する際には面会交流の頻度や時間などのルール(条件)を決めることになるでしょう。
しかし、親権者でない親が離婚後もスムーズに子どもと会うことができるとは限りません。
特に夫婦仲が険悪な場合には、「親権者が面会交流の条件を守らない」というケースは少なくないですし、反対に「面会後に時間通りに子どもを返してくれない」というトラブルも発生し得ます。
今回は、面会交流についての様々な疑問を解決するため解説していきます。
目次
面会交流とは、子持ちの夫婦が離婚した場合に、子どもを監護・養育していない方の親が子どもと定期的・継続的に面会等を行うことをいいます(民法766条1項)。
面会交流の内容は、父母間の合意か家庭裁判所の判断によって決まります。
適切な面会交流を行うことで、子どもは両親から愛されているという安心感を持つため、子の健全な成長に面会交流は非常に重要とされています。
単に面会をするだけでなく、電話や文通、メールの交換、プレゼントの受け渡しなどを行うケースもあります。
なお、夫婦が離婚していないまま別居状態にあるときでも、子どもを監護していない親と子どもの面会交流について、離婚後と同様に認められています(最高裁平成12年5月1日決定)。
面会交流は、原則として子どもが成人するまで実施される制度です。
民法改正により2022年4月からは成人年齢が18歳となりましたが、18歳までにするか、20歳までにするかは、夫婦間で協議して決めることができます。
また、本人達の取り決めによっては、例えば「大学を卒業するまで」などとする場合もあります。
面会交流のルールは、夫婦が話し合いで自由に決めることができます。
といっても、平均や制限などもありますので、ルールの決め方については以下を参考にしてください。
なお、条件について話し合いでまとまらない、一方が拒否するという場合は、後述する「面会交流調停」「面会交流審判」の方法で決めることになります。
面会交流の頻度について、一般的な平均は「月に1回程度」と考えるのが良いでしょう。
面会交流の時間について平均や相場というものはないですが、幼児や小学校低学年までならば3時間以下が多く、年齢が高くなるに連れて時間も長くなるケースが多いです。
場合によっては1日中、あるいは宿泊を伴う面会が行われることもあります。
面会交流の場所として「遊園地」や「カフェ」などを具体的に決めることもあります。
また、子どもの成長に伴い、引き渡し場所だけ決めて「面会時間内は自由にする」などと裁量によることもできます。
ただ、子どもを不健全な場所に連れていく親もいる可能性があるため、面会交流場所を一定の範囲に制限することも少なくありません。
また、直接会うだけでなく、電話やメールなどの間接交流を定められることもあります。
この他、面会交流については以下の内容・ルールを取り決めることが多いです。
取り決める内容について特別な制限はありません。
しかし、取り決めをするにあたっては「子の利益を最も優先して考慮しなければならない」(民法766条1項)とされているため、親同士の都合だけではなく、子どもの年齢、性別、生活リズム、生活環境などを十分に考慮して、子どもに負担をかけないように心掛けなければなりません。
面会交流のルールは、もちろん夫婦での話し合いによって決めるのが原則です。
しかし、話し合いでまとまらない場合は、「面会交流調停」「面会交流審判」の方法で決めることになります。
調停でも審判でも、子どもの福祉や利益が特に重要視されます。子どもの福祉や利益を特に害しないと判断される場合には、原則として面会交流が認められると考えましょう。
夫婦間で折り合いがつかず話し合いが不調の場合には、「面会交流調停」を申し立てることになります。
この調停では、裁判所の調停委員が仲介をしながら協議し、面会交流の詳細について合意を目指します。
通常は調停委員が双方の意見を交互に聞きながら解決策を探るため、親同士で顔を合わせることはありません。
面会交流調停では、離婚に至った経緯や現在の家庭状況、親と子との関係、希望する面会交流の条件などを聞かれます。
面会交流調停でも取り決めがまとまらなかった場合には、調停に代わる審判、裁判などに移行することになるでしょう。
調停が不成立となった場合には、自動的に面会交流審判手続が開始されます。
審判では、裁判所が調停時に提出された資料やその後追加された主張や資料に基づいて判断を下します。
多くの場合、調停を担当した裁判官が審判も担当し、あらゆる事情を考慮した上で「面会交流を実施しても問題ないか」と「どのようなルールで面会交流を行うか」を決定します。
夫婦が積極的に審判の内容に同意していなくても、異議申し立てさえ行われなければ、審判は成立します。
調停や審判などで面会交流について取り決めをしても、相手方がこれを守らないというケースはあるかもしれません。
この場合、履行勧告や強制執行といった手段を撮ることができます。
親権者は、父母間で取り決めがされている場合、親権者でない親と子どもを面会させる義務があります。
つまり、原則として親権者は面会交流を拒むことはできません。
親権者が正当な理由なく面会を拒んでいる場合には、家庭裁判所による「勧告」が行われることがあります(家事事件手続法289条)。
履行勧告は、取り決めを守らない相手に対して、義務を実行するように家庭裁判所から説得・勧告をしてもらう手続きのことです。
履行勧告のメリットは、手続費用がかからないことです。当事者からの主張は無視をされても、裁判所からの要求ということであれば聞いてもらえる可能性があります。
一方、履行勧告には法的拘束力がないため、強制することはできず無視される可能性もあります。
親権者が合意・調停・審判の内容に従わない場合には、「強制執行」(間接強制)という手続きが取られることもあります。
間接強制とは、適切に履行されるまで金銭の支払いを命じることで間接的に約束や決定の履行を促すものをいいます。
ただし、間接強制が認められるのは、次のような項目が定められ、厳密に特定されている場合に限られます。
したがって、例えば「面会交流は2ヶ月に1回程度実施し、半日程度の長さとする」などの内容や「いつどこで引き渡すか」などを明記していないルールでは、特定を欠き、間接強制は認められないので注意が必要です(最高裁平成25年3月28日・ 平成24(許)48)。
また、強制執行で無理やり子どもとの面会を実現させることは、子どもに精神的な苦痛を与えてしまう結果にもなりかねないので注意が必要です。
お困りならば、ご自身で対応をするよりも離婚問題に強い弁護士に相談することをお勧めします。
親権者による面会拒否が悪質な場合には、親権者・監護者の変更も検討しうることになります。
一度決まった面会交流でも、相当な理由があれば実施を拒否できます。
この場合には義務違反とはならないので、履行勧告や間接強制をされることはありませんし、慰謝料支払義務も生じません。
また、子どもの成長などに応じて既に決まった内容の「変更」「制限」「禁止」を家庭裁判所に求めることも可能です(民法766条3項)。
もちろん、最初に面会交流を決める審判においても、相当な理由があれば、家庭裁判所は面会交流を認めない決定を下すことができます。
親権者でない親が子どもを虐待する可能性がある場合には、面会交流が認められません。
典型的には、親権者でない親の子どもに対する虐待の過去があり、将来においても虐待の危険性が高いケースです。
虐待の事実は、当事者の主張と必要に応じて「調査官による調査」により判断されます。
当事者としては、子どもが虐待を受けた後の写真や診断書、警察や児童相談所への相談の記録など、虐待の事実の裏付けとなる証拠資料があれば保管しておくことが望ましいでしょう。
親権者でない親が子どもを連れ去る危険性がある場合も、やはり面会交流が禁止されます。
面会交流時の子どもの連れ去りを危惧している場合には、第三者を立ち会わせたり、面会交流支援団体を利用したりするなど、何かしらの対策をとるべきでしょう。
親権者でない親が子どもに対して親権者の悪口を吹き込み子どもを洗脳するおそれがある場合や、子どもを使って親権者の様子を伺ったりお金を引き出そうとする場合も、面会交流は認められません。
また、引き渡しの際に親権者に暴力をふるう可能性がある場合も、第三者を立ち会わせる、面会交流支援団体を利用するといった工夫が必要です。
父母の間におけるDVを目撃した子どもは精神的に大きなダメージを受け、子どもの福祉を害する恐れもあります。
子どもへ直接的な影響がなくても、場合によっては面会自体が禁止されることもありますので、一度弁護士に相談してみると良いでしょう。
【養育費の未払いを理由に面会交流を拒否できない?】
よくある質問として、「養育費未払いを理由に面会交流を拒否することはできないの?」というものがあります。親権者としては、養育費も支払わない片親に子どもを会わせたくないと考えるのは当然でしょう。
しかし、養育費と面会交流は全く別の問題であり、養育費を面会交流の条件にすることはできないと考えられています。養育費の未払いについては別途、弁護士に相談すると良いでしょう。
面会交流は、あくまで子どもの成長のための制度です。面会交流の取り決めにあたっては、子どもの意思を第一に尊重することを心掛ける必要があります。
面会交流の内容はそれぞれの状況に応じて原則として当事者間で取り決められ、状況によっては面会交流を拒否できる場合・禁止される場合もあります。
条件面で折り合いがつかないならば、弁護士に依頼して調停や審判に臨みましょう。
もし、面会交流について配偶者と争いになりそうな場合や、既に争っている場合など、お困りのことがあれば離婚案件の経験豊富な弁護士に相談してみるのがおすすめです。