親権と子供の意思|何歳から反映される?離婚時の親権決定と変更

阿部 由羅 弁護士
ゆら総合法律事務所・代表弁護士。西村あさひ法律事務所・外資系金融機関法務部を経て現職。一般民事から企業法務まで、各種の法律相談を幅広く取り扱う。webメディアにおける法律関連記事の執筆・監修も多数手がけている。
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親権と子供の意思|何歳から反映される?離婚時の親権決定と変更

離婚時の親権をめぐる問題は、子供の将来に大きな影響を及ぼします。
親権決定に子供の意思をどの程度尊重するかは、子どもの年齢や成熟度によって異なります。より具体的に言えば、年齢が上がるについれて真剣の決定に子どもの意思が反映されやすくなるでしょう。

とはいえ、上記は一般論で、実際の裁判所の判断基準や個別のケースによっても異なる点に注意が必要です。

この記事では、離婚時における親権決定に子どもの意思がどの程度反映されるのか、また、後から子どもの意思で親権変更ができるのか、という点を詳しく解説します。

離婚時に子供の未来を考える親御さんや、親権変更を検討する方々にとっては重要な問題となります。子供の将来のためにも、子どもの意思を尊重しながら最適な決定を目指しましょう。
どうしてもトラブルを避けられない場合は、一度離婚に強い弁護士などに依頼をするのが良いでしょう。

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親権者決定において考慮される要素

早速ですが、法律上、親権者を決定するためにはどのような要素を考慮すべきとされているのでしょうか。

子の親権者・監護権者を決定する際には、「子の利益」を基準として決定すべきというのが民法のルールです(民法819条6項・民法766条1項)。

さらに、親権者決定に関する以下の4つの原則が存在します。

  • 継続性の原則:できる限り子供にとっての現状を維持することを目的として、これまで子供を「監護してきた側の親」に親権を認める傾向
  • 兄弟姉妹不分離の原則:子供が複数いる場合には、どちらか一方の親に親権を集中させる傾向
  • 子供の意思尊重の原則:子供の年齢が高い場合には、子供が選択する方の親に親権が認められる傾向
  • 母親優先の原則:母親による監護の必要性が高いものと考えられているも、最近は重要度は下がりつつある

これに加え、原則は「具体的な事情」を総合的に考慮します。その上で、どちらの親に親権を与えるのが良いかが判断されることになります。

考慮要素の例としては、以下のものが挙げられます。

  • これまでの監護状況
  • 監護に対する意欲と能力
  • 経済的・精神的家庭環境
  • 居住・教育環境
  • 子供の意向、年齢、性別、兄弟姉妹関係、心身の発育状況
  • 監護補助者の有無

上記のうちどの要素がより大きなインパクトを持つかは、子供の年齢によっても変わってきます。

例えば、子供の年齢が低い段階では、これまでの監護状況が大きなウェイトを占めると考えられます。
一般的には子供が小さければ小さいほど、環境の変化に敏感であるとされているためです。

一方、子供が大きくなればなるほど、子供の判断能力が高まりますので、子供の意向がより重視されるようになります。

親権決定の原則やポイントなどについて、詳しくは下記ページもご参考ください。

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子供が親権を選べる年齢は何歳から?

そうは言っても、親権者決定の際に子供の意思が重視されるのは何歳くらいからなの?という疑問を持つ方も多くいらっしゃるでしょう。

そこで、親権者の決定に子供の意思がどの程度反映されるかについて、大まかな年齢別に見ていきましょう。

子供が「0歳・1歳・2歳」の場合

まずは、0歳・1歳・2歳などの赤ちゃん(幼児)の場合です。

一般的には、赤ちゃんは1歳前後から何らかの言葉を話し始めます。しかし、0歳・1歳・2歳の言語能力がまだまだ低いのは当然のことで、幼児が自らの意志で親権を選ぶことはできないと言えます。

子供が「3歳・4歳・5歳」の場合

3歳、4歳、5歳と大きくなっていくと、文法能力が向上し、複雑な言葉の構成が可能になる時期と言えます。
自分から大人の会話に耳を傾けるようになり、言葉の意味を理解しようとする意識が芽生えてきます。日頃から当たり前だと思っていた物事にも疑問を感じるようになり、「これなに?」「どうして?」と質問が多くなる時期でもあります。

ただ、このように言語を扱えるとはいえ、通常は親権を選べる年齢とは言えません
なんとなく、その場の雰囲気で「ママがいい」などと言ってしまう可能性もありますので、親権者の決定に関して子供の意思が反映されるとは言えないでしょう。

子供が「6歳・7歳・8歳」の場合

小学1年生の年齢は6歳・7歳です。幼稚園までとは状況が異なり、言語能力もしっかりしてきていることでしょう。

しかし、小学生低学年までの年齢である6歳・7歳・8歳の子どもだと、一方の親から「自分と一緒にいたいと言いなさい」などと圧力をかけられた場合、本心とは違うことを言ってしまう可能性が高い年齢といえます。
そのため、やはり、親権者の決定に関して子供の意思はあまり反映されません。

この年齢になると、どちらの親がより長い時間子供を監護しているかということが大きなポイントとなります。

世間ではまだまだ母親がより長い時間育児に関与しているという例も多く、また母親優先の原則があることも考慮すると、母親が親権者となるケースの方が多いと考えられます。
しかし、母親が育児放棄していたり、父親が積極的に子どもの世話をしていたりするならば、父親に親権が認められる可能性も十分にあります。

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子供が「9歳・10歳・11歳」の場合

子供が9歳・10歳になると、小学4年生となります。
子供が9歳・10歳を超えてくると、ある程度自分で自分の生きる環境を選ぶ力がついてくると考えられます。

法律上のルールで決まっているわけではありませんが、子供が10歳以上になると、裁判所は子供の意見を聞き、判断の参考にする傾向にあります。
つまり、10歳を超えると子供の意思が親権者の決定に反映される可能性が上がります。

しかしこの年代では、子供の意思は一つの考慮要素に過ぎません。子どもの意思一つだけで親権が決まることはなく、「監護の継続性」や「経済状況」など他の要素も高い重要性を持ちます。

子供が「12歳・13歳・14歳」の場合

12歳・13歳になると、中学1年生です。
上記の通り、(法律上のルールで決まっているわけではありませんが)子供が10歳以上になると裁判所は子供の意見を聞き、判断の参考にする傾向にあります。つまり、12歳・13歳・14歳と年齢が上がるほど、子供の意思が反映される可能性が高まります。

ただ、仮に子供の意思とは反対であっても、他の要素から客観的により良いと判断された親に親権が認められるケースも多い点は覚えておきましょう。

なお、両親間で監護の継続性や経済状況などの要素にあまり差がなく、子供としてもどちらでも良いという意思を持っている場合であれば、母親に親権が認められる傾向にあります(母親優先の原則)。

子供が「15歳以上」の場合

子供が15歳以上の場合、ほとんどは高校生(あるいは大学生)で、中卒・高卒で社会人となっているケースもあるでしょう。

この場合には、一般的に十分な判断能力を備えていると考えられています。そのため、親権者の決定に際しても子供の意思が尊重される傾向にあります。

子供が15歳以上であれば、裁判や審判を行う際に裁判所は子供の陳述を聞かなければなりません(人事訴訟法32条4項、家事事件手続法152条2項、169条2項)。
言い換えれば、15歳以上の子供の意思については、裁判所は親権者を決定する際に必ず考慮するということです。

もちろん他の要素が重要でないというわけではありませんが、15歳以上の子供については、親権獲得や親権の変更などについて子供の意思が最大限尊重されるといえるでしょう。

子ども(高校生)が親権変更を望んでいる場合

物心がついていない幼い子どもの場合は、自分が不遇な環境に置かれていることについての判断能力がなく、深く考えず「お母さん(お父さん)と暮らす」などと答えている可能性があります。
そして、親権変更に関する知識もないために、後から自分で親権変更を訴えることもできません。

しかし、子どもがある程度成長して自身の考えが主張できるようになり、「今の環境に堪え難い」「非親権者である父親(あるいは母親)と一緒に住みたい」と望んでいるならば、親権が変更できることがあります。

具体的には、子どもが15歳以上であれば自身で家庭裁判所に行き申し出をすることができます。
その後、法律に沿って調停を成立させ親権変更を認めてもらうことが必要になります。

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親権者の決定で裁判所が重視するポイント

協議や調停で話し合いがまとまらず、離婚訴訟などで家庭裁判所が親権者を決定する場合、事前に家庭裁判所調査官による調査が行われます。

家庭裁判所調査官は、家事事件(離婚、親権者の決定など)に関して、親や子供などの関係者を調査し、裁判官が判断をするための材料を提供する役割を担っています。

家庭裁判所は、通常の裁判所とは異なり家庭の問題を取り扱いますので、家庭裁判所に要求される判断は繊細になります。
そのため、それぞれの家庭環境について「きめ細かい調査」を行うことが必要です。

家庭裁判所調査官は、家族の問題に寄り添った調査を行う専門官として、家庭裁判所において不可欠な役割を果たしているのです。
全員ではありませんが、臨床心理士の資格を持った人や心理学を学んできた人が多くいます。

離婚で親権が争われている場合、家庭裁判所調査官が調査で重視するのは以下のような点です。

  • これまでどちらの親が子供の面倒を見てきたか
  • 現在はどちらが子供の面倒を見ているか
  • 子供の意思はどうか

親権者を決定する際に裁判所が考慮すべき要素のうち、一部(経済状況など)は客観的な資料から大部分の情報を得ることができます。
しかし、子の監護状況は、実際の生活を見てみたり、当事者と顔を合わせて面談をしたりしなければ実態を把握することは困難です。

そのため、家庭裁判所調査官の調査は「子の監護状況」を中心に行われ、「子供の意思」についても必要に応じて調査官から聞き取り等が行われます

単純に「どっちの親と暮らしたい?」と聞くのではなく、子供の話し方や行動の観察、祖父母との面談など、場合に応じて適切な方法で子供の意思を酌み取ります。

【家庭裁判所調査官との面談で気をつけるべきこと】
家庭裁判所調査官の調査を受ける際に、親権を得たいからといって実際の状況を取り繕うために嘘をついたりするメリットはありません。
家庭裁判所調査官は、相手や子供からも事情を聞くことになります。当事者全員の話を総合すれば、嘘はほとんどの場合ばれてしまい、裁判所の心証も悪くなってしまうでしょう。
よって、家庭裁判所調査官の調査には最大限協力的な姿勢で臨み、誠実に質問に回答するべきといえます。

まとめ

親権者を判断する際に重視される考慮要素は、子供の年齢によって変化します。
例えば、子供が15歳以上であれば子供の意思が大きく尊重されますが、15歳未満であればそれ以外の要素の重要性が高くなります。

一般的な傾向としては、母親に親権が認められる場合が多いようです。
ただし、母親に虐待傾向やネグレクトがあったり、ある程度年齢が高い子供が父親と一緒に暮らすことを望んでいたりする場合には、父親に親権が認められることもあります。

このように、親権問題についてはさまざまな考慮要素が存在しますので、裁判官や家庭裁判所調査官に対して自分の主張を効果的に伝えることが重要です。

そのためには、弁護士に相談することがおすすめです。

弁護士は、どのような要素が親権者を決定する際に重視されているかを熟知しています。
そのため、依頼者が必要な情報を収集して、効果的に裁判官や調査官に主張を伝えるためのサポートをしてくれるでしょう。

離婚問題や親権問題にお悩みの方は、ぜひ離婚に強い弁護士にご相談ください。

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