離婚調停とは?|流れ、期間、やってはいけないことを解説
家庭裁判所のサポートを得ながらお互いに納得できる解決策を見出すための手段として「離婚調停」があります。しかし、離婚調…[続きを読む]
離婚前には、養育費に関する合意をする必要があります。
しかし、離婚の交渉の中で、養育費についての合意が成立しないこともあります。
そのため、一旦離婚の基本的な手続きを進める中で、養育費については後日決めるという選択肢もあります。
養育費に関しては、離婚後に決める場合には、家庭裁判所で行われる「養育費請求調停」の手続きを利用することをおすすめします。
ただし、家庭裁判所での調停と聞くと、少し抵抗を感じる方もいるかもしれません。
など、数多くの疑問を感じる方も多いでしょう。
この記事では、養育費請求調停に関するこれらの疑問点に対して、専門的な内容を分かりやすく解説します。
今回お話する養育費請求調停は「離婚後」の話です。下記にまとめましたので、定義を事前にご確認ください。
なお、離婚調停を申し立てる方法については、下記の記事を参照してください。
まず、離婚後の養育費請求調停に関する基本的な事項について解説します。
養育費請求調停とは、離婚後に養育費を取り決める際に行われる家事調停の手続き*をいいます。
*認知後の子の養育費を取り決める際にも利用されますが、ここでは割愛します
「家庭裁判所」に対して調停を申し立てて、改めて養育費についての取り決めを行うことになります。
調停委員により、元夫婦それぞれとの面談が行われ、さまざまなことを聞かれます。
その中で聞き取った事実を元にして、元夫婦の経済状況をはじめとする一切の事情を考慮したうえで、裁判官や調停委員による助言や解決案(調停案)の提示が行われます。
調停案の内容には、以下のような事情が反映されることになります。言い方は違う場合もありますが、調停委員から一部似たような聞かれ方をするでしょう。聞かれることを確認しながら準備を進めましょう。
など
そして、調停委員と元夫婦双方とのやり取りを通じて、元夫婦による調停案への合意を目指します。
家庭裁判所では、原則として「養育費算定表」を用いて養育費を検討し、元夫婦や子供の個別事情を考慮しつつ決定します。
養育費算定表は裁判所のサイトで公開されており、調停をしなくても、ご自分の状況で養育費がどうなるのか、目安を知るのに活用できます。
また、養育費算定表の元となった標準算定方式で「養育費を試算できるツール」を当サイトでもご用意していますので、ご利用ください。
なお、義務者(支払う人)が年収2000万を超えている場合や、権利者(受け取る人)が年収1000万を超えている場合は、標準算定方式では適切な計算結果にならないため、裁判所でも算定表から修正して運用をしています。
このような場合、本ツールで計算結果は出ますが、目安としてはあまり適切ではなくなりますので、養育費に強い弁護士に相談するのが良いでしょう。
離婚後の養育費請求調停では、養育費の支払いに関するさまざまな事項が決定されます。
たとえば、以下のような事項が調停調書に記載されることになります。
特に支払い期間については、子どもが20歳になるまで、大学を卒業するまでなどさまざまな決め方が考えられます。
しかし、たとえば「大学を卒業するまで」とすると、留学や留年などが発生した場合にも養育費を支払い続けなければならないのかなどについて争いが生じるおそれがあります。
そのため、いったんは明確に「子どもが満20歳に達する日の属する月なるまで」「〇〇年〇月末日まで」などと決めておくのが良いでしょう。
また、養育費は原則として定期支払いですが、交渉次第で一括払いもあり得えます。
なお、離婚後の養育費請求調停では、一度取り決めた養育費について変更を求めることも可能です。
従来の額を決定した際に基準とした事情に重大な変更が生じ、その変更が合意当時予測し得ず、従来の額では不合理といえる場合には、金額の変更を求めることが可能です。
例としては、以下のようなものが考えられます。
上記のようなケースでは、養育費の金額変更が認められる可能性があるでしょう。
離婚後の養育費請求調停を申し立てるための手続きについて解説します。
後ほどご紹介する申立書の書式と併せて参考にしてください。
養育費請求調停は、子どもの監護親から非監護親に対して申し立てることができます。
監護親が父、非監護親が母であれば、父から母に対して申し立てることになります。
申立先は、原則として相手方(非監護親)の住所地または夫婦が合意した家庭裁判所です(家事事件手続法245条1項)。
夫婦双方の合意ができない場合は、相手方の住所地に申し立てる必要があります。
特に夫婦の一方が遠方に別居している場合は、申立人は遠方の家庭裁判所に申し立てなければならない点に注意しましょう。
養育費請求調停を申し立てるためには、弁護士なしの場合、以下の費用が必要となります。
・収入印紙1200円分(子ども1人につき)
・連絡用の郵便切手(家庭裁判所に金額を要確認)
弁護士なしではなく、ありの場合は、もちろん別途弁護士費用が発生します。
申立てに必要な書類は、以下のとおりです。なお、家庭裁判所により追加の資料の提出が求められることもあります。
・申立書およびその写し2通
(必須の写しは1通ですが、調停時に自分で確認するための写しを取っておきましょう)
・対象となる子の戸籍謄本(戸籍全部事項証明書)
・申立人の収入に関する資料(源泉徴収票、給与明細、確定申告書、非課税証明書などの写し)
・上記の他、事情説明書や進行に関する照会回答書などが必要になる場合があります
養育費請求調停の申立書の書式は、裁判所ホームページに以下のとおり掲載されています。
また、離婚後に子を養育している母から父に対して支払いの調停を求める場合の、申立書の記載例のページもあります。
必要に応じて参照してください。
【参考PDF】裁判所:養育費請求調停申立書 書式
【参考PDF】裁判所:養育費請求調停申立書 記載例
養育費請求調停の申立てが家庭裁判所によって受理された場合の、その後の手続きの流れについて、順を追って解説します。
家庭裁判所は、養育費請求調停の申立てを受理した後、第1回の調停期日を決定し、呼び出し状により元夫婦双方に通知します。
第1回調停期日では、調停委員2名が参加し(状況により、裁判官も参加することはあります)、元夫婦それぞれが出席して、調停が開かれることになります。
基本的に夫婦が顔を合わせ続けることはありません。交互に調停室に入って調停委員と話し合う形です。
養育費請求調停では、夫婦それぞれに対して個別に、調停委員による質問が行われます。
前述もしましたが、養育費を請求する側の親に対する質問例、聞かれることは、以下のとおりです。
調停委員は、元夫婦双方から意見・希望などを聞いたうえで、互いに合意できる落としどころを探っていくことになります。
調停期日における話し合い・交渉がまとまらず、さらなる調停が必要と判断される場合には、2回目、3回目と調停期日が指定され、引き続き調停が行われます。
調停が開かれるペースは事案によっても異なりますが、だいたい1か月~1か月半に1回程度開かれることが多いです。
2回目以降の調停期日でも、手続きの要領は1回目と同じで、引き続き調停委員を間に挟んで、元夫婦間の調整が進められます。
元夫婦が養育費の支払内容について合意できた場合には、養育費請求調停は成立となり、手続きは終了します。
一方、話し合いが平行線をたどり、もはや調停成立は不可能と判断された場合には、養育費請求調停は不成立となり、やはり手続きは終了します。
また、調停の途中でも、申立人が調停の必要性がなくなったと判断する場合には、自ら養育費請求調停の申立てを取り下げることもできます。
調停が成立・不成立・取下げによって終了した場合の、その後の手続きや流れについて見てきましょう。
調停成立となった場合には、調停調書が作成されます。
調停調書には、元夫婦間で合意した内容が記載され、双方に対して法的な拘束力を持つことになります。
もし養育費を支払う側が任意に支払いを行わない場合には、調停調書を債務名義として払わない場合強制執行を行うことも可能です(民事執行法22条7号)。
調停が不成立により終了した場合でも、何の解決策も得られないまま手続きが終了してしまっては、養育費の支払いを必要としている親の側にとっては酷です。
そのため、養育費請求調停が不成立となった場合には、調停の申立て時に審判の申立てがあったものと扱われ、審判手続きに移行します(家事事件手続法272条4項)。
審判では、家庭裁判所の判断によって養育費の支払条件が決定され、審判書にその内容が記載されます。
当事者が審判の結果に対して不服がある場合は、審判書の送達を受けてから2週間以内に即時抗告をする必要があります。
どちらの当事者からも即時抗告がない場合には、審判の内容は確定し、両当事者に対して拘束力を持ちます。
この拘束力は調停が成立した場合と同様です。
養育費請求調停が取下げにより終了した場合には、その後特段の手続きは行われません。
元夫婦としては、必要があれば、引き続き話し合いを行う、再度調停を申し立てるなどの選択肢がありますが、いずれにしても養育費の支払いに関して引き続き交渉を行っていくことになるでしょう。
養育費請求調停を有利に進めるために、準備や調停期日での振る舞い方などの面で、注意しておくべきことを解説します。
養育費に関する交渉を行うにあたって、養育費の相場を把握しておくことは重要です。
相手方や調停委員から提示される養育費の金額が高いのか低いのかがわかれば、交渉に関する指針を立てることができます。
養育費の相場については、元夫婦それぞれの収入や子どもの年齢・人数に応じて、「養育費算定表」により算定することができます。
ただし、養育費の分担はあくまでも元夫婦間の交渉・合意によって決定されるものなので、養育費算定表は参考程度に把握しておけばよいでしょう。
例えば、算定表での計算そのままの場合、学費などは最低限しかもらうことはできません。
調停案や審判の内容を決定する際には、当事者の言い分だけでなく、客観的な証拠が重要な意味を持ちます。
特に収入面に関しては客観的な証拠をそろえやすいので、自分が主張する養育費の金額が妥当であることを示す証拠をしっかり収集して、家庭裁判所に対して提出しましょう。
収入を証明する証拠の例としては、以下のようなものが挙げられます。
法的な観点からのサポートを得るためには、弁護士に依頼をすることをおすすめします。
弁護士は、養育費の相場や決め方などを熟知したうえで、どうすれば依頼者に少しでも有利な形で養育費問題を解決できるかについてのアドバイスをしてくれます。
特に、高額な収入がある、収入の変動が大きい、高額の教育費・医療費がかかっている、再婚・認知などにより扶養家族が他にもいるなどの場合は、法的に整理して主張をする必要があり専門家に依頼をする方が安心です。
また、以下のようなメリットもあります。
つまり、養育費の請求に関して万全の態勢で調停に臨むという観点からは、弁護士に依頼をするほうが賢明でしょう。
養育費請求調停では、調停委員が仲介人として重要な役割を担っています。
中立の立場とはいえ、調停委員も人間ですので、適正な金額より著しく離れた金額を根拠なく主張したり、感情的な発言を繰り返しますと、調停委員への心証も良くありませんし、養育費の金額を決める上でメリットは何もありません。
ですので、そのような態度はできるだけ避けましょう。
それに加えて、主張内容が整理された書面を作成したり、客観的な証拠を提出したりして、調停委員が元夫婦の状況を理解しやすいように配慮することも大切です。
書面や証拠を準備する際には、弁護士のサポートを受けるのがよいでしょう。
今回は、離婚後の養育費請求、養育費請求調停の内容、聞かれること、弁護士なし・ありの場合の費用、不成立の場合、申立書、相手が払わない場合などについて解説しました。
養育費請求調停は、離婚後に改めて養育費の支払いについて話し合うための手続きです。
調停の場で、相手方や調停委員に対して、養育費を受け取る正当な権利をアピールするためにも、弁護士に依頼をして専門的なサポートを受けることをおすすめします。
養育費問題にお悩みの方は、ぜひ弁護士にご相談ください。