日本政策金融公庫(国金)からの借入が返せなくなってしまったら
この記事では、日本政策金融公庫からの借金の返済を滞納したらどうなるのか、また返済不能に陥ってしまった場合の対処法につ…[続きを読む]
自営業者は、事業を立ち上げ、継続、拡大するために融資が必要となるケースがほとんどです。
「自営業が借金をするのが当たり前」とも言えるでしょう。
事業資金を借りても、収支のバランスを維持して返済ができるならば問題はありません。しかし、赤字が毎月続く場合や、余剰資金が少なくなってきた場合は、やがて支払不能に陥ってしまうリスクがあります。
自営業者の方が借金返済に行き詰まったならば、早い段階で弁護士や司法書士に相談し、債務整理を検討しましょう。
この記事では、銀行などから融資を受けた自営業者の方が借金まみれになってしまった場合、どのように解決するべきかを解説します。
目次
業種や事業規模にもよりますが、自営業者が借金をするのは自然なことです。
自営業者が融資を受ける理由(メリット)としては、以下のようなものが考えられます。
借り入れによって手元の資金を増やし、それを設備投資や広告活動へ費やすことにより、事業の確立・拡大を目指せます。
特に開業時は多額の資金が必要になりますので、お金を借りられないとそもそも事業を立ち上げられないケースも多いです。融資のシステムがなければ市場の発展に悪影響が及ぶでしょう。
借り入れによって現金(預金)を確保しておけば、万が一業績が悪化した際にも債務を支払い続けることができるため、廃業や破産の回避に繋がります。
一時的に赤字が続くシーズンの運転資金も確保できるため、安心して事業を継続できます。
借りたお金を約定通りしっかりと返済し続ければ、その実績に対して金融機関の信頼を得ることができます。
これは、将来的な資金調達の際にプラスに働きますし、信用が積み重ねれば債権者からのサービスもより充実したものになるでしょう。
上記のように、自営業者にとって借金は積極的に事業を展開する上で必要不可欠といえます。
一方で、借金の額が大きくなりすぎると返済の負担が重くのしかかります。収入を上回る返済を何ヶ月も連続で強いられると、事業の資金繰りは一挙に悪化し廃業や破産に追い込まれてしまいかねません。
自営業者は、借入を効果的に活用しつつも、収支のバランスが取れる借入額を見極めることが大切なのです。
自営業者がお金を借りて運営をする際には、特に以下の2点を念頭に置きつつ、借入額を適切にコントロールしましょう。
事業を継続していくに当たって最も重要なのは、中長期的なキャッシュフロー(金銭収支)の黒字を確保することです。
当然ながら、赤字が毎月続く場合は危険と言えます。
単月の赤字であれば大きな問題はありませんが、何か月も赤字が続く可能性がある金額を借り入れることは、極めてリスクが高いと認識しましょう。
自営業の場合、月々の収入・支出としては以下のような費目が挙げられます。
収入 | 支出 |
---|---|
・売上(売掛金の振り込み) ・資産運用による収入(配当金等) |
・仕入れ代金 ・事務所の賃料 ・人件費(従業員を雇っている場合) ・機械・備品の購入費用 ・税金(所得税、住民税、個人事業税、固定資産税等) ・国民年金保険料 ・国民健康保険料 ・借金の返済 ・生活費(水道光熱費、家賃、交際費等) |
収入が支出を上回っていれば、自営業者の手元資金は増えていきます。
これに対して、支出が収入を上回っていると、当然ながら自営業者の手元資金は減っていくことになります。
自営業者がお金を借りる際には、数ヶ月から数年のスパンで考えたときに収入が支出を十分上回ると見込まれる金額に抑えるべきです。
仮にキャッシュフローの赤字が続いたとしても、手元に余剰資金が十分にあれば、それを支払いに充てることで事業を継続できます。
反対に、手元の余剰資金が少ない場合は、業績の悪化など不測の事態が生じると途端に事業の継続が困難となってしまいます。
自営業者が借金をする際には、廃業・破産を防ぐため、十分な余剰資金を確保し続けられる金額に抑えるべきです。
あくまでも目安ですが、6ヶ月分の支出に充てられるだけの余剰資金は常に確保しておくのが安心でしょう。
日本公庫とは、「一般の金融機関が行う金融を補完すること」を旨としつつ、国の中小企業・小規模事業者政策や農林漁業政策に基づき、法律や予算で決められた範囲で金融機能を発揮している政策金融機関です(日本政策金融公庫公式サイトより引用)。
つまり、自営業者の方は、銀行だけでなく日本政策金融公庫からも融資を受けられる可能性があります。
日本政策金融公庫から融資を受けた場合の返済期間は、通常の銀行、消費者金融、クレジットカードなどの借り入れよりも長期になるケースが多いです。また、利率も低く設定されているため、資金調達先として有効的な支援を受けられるでしょう。
しかし、日本政策金融公庫からの融資も借金であるため、当然ながら将来的には返済の義務があります。借入額についてはよく検討の上で申し込むようにしましょう。
事業者が受けられる融資や制度を駆使しても借金の返済が困難であったり、日本政策金融公庫等からの借入返済さえ難しいような状態ならば、弁護士に依頼して債務整理を行うことをおすすめします。
債務整理手続きの主な種類は、「任意整理」「個人再生」「自己破産」の3つです。
それぞれメリット・デメリットの両面があり、特に自営業者は(代表者個人の債務整理であっても)今後の事業全体に様々な支障が生じる可能性があります。弁護士のアドバイスを踏まえ、適切な手続きを選択しましょう。
「任意整理」は、銀行などの債権者と直接交渉を行って、借金の利息の減額や返済スケジュールの変更を認めてもらう手続きです。
任意整理は、取引先に与える影響を最小限に抑えられる債務整理手続きです。さらに、整理する債権者を自分で選択できますので、「この取引先には継続して支払っていきたい」「家族が保証人になっている」という債権を交渉の対象から外すことができます。
よって、今後も事業を継続したい場合は、任意整理が有力な選択肢となるでしょう。
ただし、任意整理後は事故情報の登録(=ブラックリスト)により完済から5年程度は新規の借入れができなくなる点に注意が必要です(個人再生・自己破産の際も同様です)。
任意整理で減額できるのは将来利息の一部にとどまるため、借金額が多額に及ぶならば「個人再生」が有力な選択肢となります。個人再生を利用すれば、元金から大幅に債務を減額できる可能性があります。
個人再生は、債権者の決議と裁判所の認可を経た再生計画に基づき、債権者全員との間で債務の減額や返済スケジュールの変更を行う裁判手続きです。
個人再生では原則として(担保権が設定されているものを除いて)財産が処分されないため、事業用財産への影響も限定的です。
ただし、重要な取引先も債権カットの対象となるため、今後の取引には悪影響が及ぶ可能性が高いです。
多くのケースでは契約が強制解約されてしまう上、任意整理と同様に事故情報の登録により5~7年間程度は新規の借入れができなくなるため、現状を維持したまま事業を継続することは難しくなる可能性があります。
「自己破産」は、債務者の財産の一部を換価・処分して債権者へ配当した上で、債務の残額すべての支払義務を免除する裁判手続きです。
不動産・高価な車などの財産の処分によって債務者に大きな影響が生じる一方で、唯一債務全額が免除される強力な債務整理手続きと言えます。
借金が相当多額に及び、返済の目処が全く立たない場合は自己破産を検討すべきでしょう。
なお、業務のために必要不可欠な物は、破産手続きによる処分の対象外とされています(破産法34条3項2号、民事執行法131条4号~7号)。よって、事業で使用している什器やパソコン、車などは原則として処分されません。
法人の場合は、破産をすると法人格が消滅します。再び法人を設立して代表取締役になることはできますが、全く同じ会社を立ち上げることは難しいと言わざるを得ないでしょう。
これに対して自営業者(個人事業主)の場合は、原則として自己破産をしても事業を継続することに支障はありません。
ただし、重要な取引先も債権放棄の対象となるため取引の継続は絶望的と言えるほか、士業などについては自己破産手続き中に資格制限が発生して登録ができなくなります(手続きが終われば制限は解除されます)。
また、やはり事故情報の登録により5~7年間程度は新規の借入れができなくなる点にはご注意ください。
自営業をしている場合、借入の額を増やせばその分将来の支出額(返済額)も増えますので、バランスの取れた金額を借り入れるようにしましょう。
借金について悩んでいる自営業者の方は、早い段階で弁護士にご相談ください。
専門家に相談をすれば、現在の借金額や収支の状況などを踏まえ、考えられる有効な対処法についてアドバイスを受けられます。もしかしたら債務整理以外の解決策が見つかるかもしれません。
また、債務整理をすると決めた場合には、弁護士に依頼すれば必要書類の準備・作成や、債権者との交渉・裁判所手続きを全面的に代行してもらえます。一般の方ならば失敗してしまうであろう複雑な手続きを一任できるので、ご本人の負担は大幅に軽減されるでしょう。
もちろん、その分事業の継続や再建に注力することも可能です。
仮に「手元にお金がない」という場合でも、売掛金の回収や商品の売却などで債務整理の費用を捻出できるケースも少なくありません。
借金の返済が難しくなり困っている自営業者の方は、どうぞお早めに弁護士までご相談ください。