時効の更新・中断とは?民法改正前後の違いをわかりやすく解説
消滅時効のために必要な期間が経過していても、時効の更新事由(民法改正前は中断事由)があった場合は援用が失敗するケース…[続きを読む]
家賃は毎月支払いが生じるものです。また、値段も安いものではないため、継続的な支払いが難しいと思う方は少なくありません。
どれだけ生活が苦しくても住む家がなくなったら困りますので、「家賃は優先的に支払わなければ」と考えるケースが多いです。しかし、中には数万円の家賃を支払えずに滞納してしまうこともあるでしょう。
家賃の滞納が数日続くと、貸主(家主・大家さん)や管理会社から連絡が来るかと思います。
しかし、「気まずいから」などという理由でこれを無視して何ヶ月か滞納を続けると、物件から強制立ち退きとなってしまいます。家賃滞納がそのまま放置されることは考えられませんので、「催促がこないから、家賃滞納の時効まで無視しよう!」などと考えてはいけません。
この記事では、家賃滞納について、何年で時効が成立するのか、督促や取り立ての無視を続けるとどうなるのか等を解説していきます。
目次
家賃は、民法第169条の「定期給付債権」に該当します。これによれば、家賃滞納に関する時効は5年です。
すなわち、家賃滞納が5年以上経過すると、大家さんや管理会社は(途中で法的手続きを行わない限り)滞納した家賃を回収する権利を失います。
しかし、とにかく5年間払わなければ時効になるというわけではありません。
先述の通り、家賃を回収する権利を失うのは、債務者が「援用」をするまで法的手続きを行わないでいた場合です。
すなわち、債権者から裁判上の請求(訴訟の提起や、支払督促などの送付)を受けた場合や、債務の承認(借金があることを認めたり、支払う意思を見せたりすること)をした場合には、時効のカウントがリセット(更新)され、1から数え直しになります。
このような時効の中断・更新事由は法律上いくつか定められており、債権者は当然ながらそれを熟知していますので、時効が完成するまでの5年間も家賃の滞納を放置することは考えにくいでしょう。
家賃を滞納していると、通常、時効期間が成立する前に、以下のような方法で支払いを請求されます。
うっかり家賃の支払いを忘れてしまったり、引き落とし口座の残高が足りなかったりするケースは誰にでもあり得ることです。
滞納の翌日以降に大家さんや管理会社から「支払いが確認できていませんが、どうしましたか?」「いつならば支払えますか?」などの連絡があっても、すぐ支払えばそれ以上問題にはなりません(しかし、以前にも短い滞納を繰り返していると、すぐに法的措置に移られる可能性も0ではありません)。
家賃滞納から数週間と経過すると取り立ての口調は次第に厳しくなり、1ヶ月ほど経てば保証人が支払いを請求されたり、家賃保証会社が代理で家賃の支払いをしたりします。
現在は家族・親族に家賃の保証人を設定するケースは少なく、大抵の場合は家賃保証会社が代位弁済するでしょう。
こうなると、債務者は代わりに支払ってくれた保証会社に返済をしていくことになります。
滞納から2ヶ月ほど経過すると、内容証明郵便で督促が届きます。
内容証明郵便には「支払わなければ法的措置をとります」と書かれているケースがほとんどで、債権者も家賃の回収に本腰を入れていることが分かります。強制退去手続きを勧告してくるケースもあるでしょう。
多くの場合、滞納期間が3ヶ月以上になると、賃貸契約の解約や立ち退きを求められます。家賃を支払わないことで住居を失うリスクが目前になるのです。
任意退去を求められても無視を続ければ、簡易裁判所に対して建物明け渡しの訴訟が起こされ、判決が下れば強制執行(強制退去)となります。
家賃の滞納から裁判所による強制退去手続までは、おおよそ6ヶ月ほどです。
家賃滞納の時効は5年ですので、この期間が経過するまで放置することは不可能だということが分かるでしょう。
「時効を狙えないならば、どうしても払えない多額の家賃の滞納はどう解決したらいいの?」とお悩みになる方もいるでしょう。
このような場合、以下の方法をお勧めします。
家賃の支払いが滞りそうならば、それが分かった時点で大家さんや管理会社に連絡をしましょう。
できれば滞納前に連絡を入れることをお勧めします。少なくとも、電話や郵便物を無視し続けることはいけません。
例えば「会社から突然契約を打ち切られてしまった」「家族の病気でお金が必要になった」などという理由を説明すれば、支払いを猶予してもらえたり、一定期間での分割払いを受け入れてもらえたりする場合があります。
必ず譲歩を受けられるとは限りませんが、無断の滞納よりも心象は良くなりますし、その後約束通りに支払えれば取り立てを受けることもありません。
他に支払っている借金があり家賃の支払いが苦しいという場合は、債務整理を利用して借金を整理することもお勧めです。
消費者金融やクレジットカード会社、銀行などからの借金を減額・免除することを認めてもらえれば、家賃を捻出できるようになるかもしれません。
なお、家賃の滞納も「借金」ですので、債務整理により滞納分の支払いを免除してもらうことは可能です。しかし、今住んでいる家の家賃を債務整理で免除してもらうと、信頼関係が破綻したとして契約解除になってしまう可能性が高いです。
今の家を借りたまま他の借金を整理できる手続きや方法については、弁護士や司法書士までご相談ください。
診断後は何度でも相談無料
診断後は何度でも相談無料
家賃滞納に関する時効は5年です。
しかし、消滅時効期間が経過していても、債権者が法律上の請求などある一定の手続きを踏むと時効は成立しません。特に家賃の場合、大家さんや管理会社が5年も滞納を放置するとは考えられないでしょう。
よって、家賃滞納を時効で踏み倒そうと考えるのは現実的ではありません。
家賃滞納で法的措置に移行される時期は、債権者ごとによりますので一概には言えません。
しかし、多くの判例では賃貸契約の解除に関して「3ヶ月」滞納が続くと催告なしの解除が可能と考えられています。
そのため、3ヶ月家賃を滞納すれば、賃貸契約を解除されてしまう可能性は高いと考えられ、その後は強制退去のリスクが現実的なものとなってしまいます。
滞納家賃はできれば2ヶ月以内、遅くても3ヶ月以内に解消するようにしましょう。
「家賃は払えないし、時効も狙えないなら、引っ越しをして行方をくらませよう」と考える方もいらっしゃるかもしれません。
家賃滞納中の引越しを禁じる法律はありませんので、現実的に家賃を滞納している現住所から新しい住所に移ることは可能です。大家さんや管理会社としても、このまま家賃滞納を続けられるよりは早期に別住居へ移ってもらったほうがリスクも抑えられると考えることでしょう(※管理会社や保証会社が同じ住居に引っ越す場合は、現在の滞納を理由に新たな賃貸契約の審査に落ちる可能性があります)。
しかし、引っ越しができることと、家賃滞納を時効で逃げ切れることは別問題です。
未払い分の賃料の支払い、遅延損害金の支払いは請求され続けますし、債務者は当然これを支払う義務を負い続けます。
転出届・転入届の手続きが行われていれば、住民票から新しい住所は容易に知ることができます。
仮に音信不通であっても、勤務先に請求書を送付したり、公示送達を行ったりすることができる場合があります。
「家賃の支払いから逃げるために引っ越す」というのは、引っ越し費用を考えても有効とは言えないでしょう。
なお、民法622条の2第2項によると、「賃貸人(大家等)は、賃借人(入居者)が賃貸借に基づいて生じた金銭の給付を目的とする債務を履行しないときは、敷金をその債務の弁済に充てることができる。」としています。
家賃に関するトラブルは、一人で対応するよりも早期に弁護士や司法書士に相談するのが賢明な選択肢と言えます。
家賃が払えない原因が他の借金にある場合、弁護士や司法書士のサポートを受けながら債務整理をすることで、他の借金を減額できる可能性があります。
また、特に滞納が長く続いていると、管理会社や家主(大家)との交渉が困難を極めることがあります。賃貸借契約などの法的知識が必要になることもあり、一人で対処すれば立ち退きを避けられない可能性もあるため注意が必要でしょう。
このような時、弁護士や司法書士のアドバイスを受けた上で支払いの見通し・計画を説明すれば、債権者側も納得して法的措置を取り止めてくれるくれるかもしれません。
借金や料金滞納に悩んだ時、借金問題に強い弁護士や司法書士に早期に相談することには多くのメリットがあります。
債務整理など法的根拠に基づく対応をすることで借金が減免されれば結果的に費用対効果は高いと言えるため、弁護士費用を心配する前にまずは専門家へとお気軽にお問い合わせください。
本ポータルサイトでは、借金問題・債務整理に強い弁護士事務所・司法書士事務所を多数ご紹介しています。