時効の更新・中断とは?民法改正前後の違いをわかりやすく解説

時効の更新・中断とは?民法改正前後の違いをわかりやすく解説

借金の消滅時効とは、一定期間が経過することで、債務者(お金を借りた人)に対する債権(お金を返してもらう権利)が消滅するというものです。
債務者が一定期間以上返済を行わず、時効を「援用」した場合、債権者はそれ以降借金の返済を求めることはできません。

時効の援用(えんよう)とは、債務者が時効の期間が経過したことを債権者に主張することです。債務者が時効の援用を行うことで、債務者は法的に債務を免除されます。

しかし、消滅時効のために必要な期間が経過していても、この時効の援用が失敗するケースがあります。
それが、時効の更新事由(民法改正前は中断事由)があった場合です。

時効の援用を考えている債務者は、時効の更新(中断)事由が途中で起こっていないかを十分に確認する必要があります。

本記事では、この時効の更新(中断)について解説していきます。

時効を援用する条件

冒頭の通り、時効の援用は、債務者が債務(借金)の消滅を主張する手段です。

債務者が時効の援用を行うためには、次のような要件を満たす必要があります。

時効の期間が経過していること

日本においては、銀行・信用金庫・信販会社・消費者金融など、会社に対する借金の場合「債権を行使することができる時から5年」を経過すると消滅時効が完成します(2020年3月31日までに成立した借金の場合※)。

「定められた借金の返済期日」あるいは「債務者が最後に返済した時」を起算点とすることになるでしょう。

※新民法が施行された2020年4月1日以降に成立した借金については、新民法の消滅時効に関するルールが適用されます。現段階で時効が問題となるのは2020年3月31日以前に成立した借金となりますが、念の為ご説明すると、2020年4月1日以降に成立した借金でも消滅時効期間は5年となるケースがほとんどでしょう。

時効の更新・中断となる事由が起きていない

債務者が債権者との間で返済計画や支払い延長の合意に至ったり、債務者が借金の存在を認めたり、債務を一部支払ったりすると、仮に上記の期間が経過していても時効が成立しないケースがあります。
また、債務者が裁判上の請求(訴訟の提起や支払督促など)を受けて判決を受けた場合も同様です。

2020年3月31日までに成立した借金については、このような事柄を「中断事由」と言います(それ以降の借金については「更新事由」)。

時効の援用をする際には、期間が経過しているかどうかというだけでなく、時効の更新事由・中断事由についても確認しなくてはなりません。
これについて、以下で詳しく説明します。

なお、時効援用のやり方については、以下の記事をご覧ください。

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時効の「中断」とは?

時効の「中断」とは、債権者が債務者に対して行なった一定の事柄により時効の期間が効力を失い、ゼロから再びカウントし直すことを指します。

新民法施行前の2020年3月31日までに成立した借金の時効の中断事由としては、以下のとおりです。

  • 裁判上の請求
  • 差押え、仮差押えまたは仮処分
  • 債務の承認

例えば、債権者が債務者に対して訴訟を提起したり、支払督促などを送付したりすると、時効期間は中断されます(しかし、訴えの却下又は取下げがあった場合には中断の効力を生じないとされています)。
裁判外での催告(内容証明郵便などによる催告)については、送った時点で一時的に時効の進行はストップしますが、この後6ヶ月以内に裁判上の請求をしなければなりません。

また、給与や預貯金の差押え、仮差押えまたは仮処分があった場合も時効は中断し、再カウントとなります。

最も注意しなければならないのは、債務の承認です。
債務の承認とは、債務者自身が借金の存在を明示的または黙示的に認めることをいいます。

債務の承認に該当する例としては、以下のようなものが挙げられます。

  • (金額の多少にかかわらず)借金を返済する
  • 借金があることを認める書面を作る
  • 借金を支払う意思があるということを口頭で債権者に伝える

このように、債務の承認は債務者がうっかりやってしまいそうなことが多いですので、債権者は「分割払いでもいいですよ」「少しでも返済してくれれば利息をまけますよ」などと言い、時効の成立を防ごうとしてくることがあります。

時効の「更新」とは?

改正前民法では、「中断」という用語に関して、「時効の完成を一時的にストップする」という意味と、「進行してきた時効期間が効力を失い新たな時効でカウントする」という意味の両方で用いており、分かりにくい運用になっていました。

そこで、新民法施行後の2020年4月1日以降に成立した借金については、時効が数え直しとなる事由を「更新事由」とし、以下のとおりに定めています。

  • 裁判上の請求、支払督促、和解及び調停の申立て、倒産手続参加に関する権利の確定(民法147条2項)
  • 強制執行、担保権の実行、競売、財産開示手続、第三者からの情報取得手続の手続完了(民法148条2項)
  • 権利の承認(=債務の承認)(民法152条1項)

時効の「停止」「完成猶予」とは?

ここまでは「進んでいた時効期間がリセットされて数え直しになる」事由の解説でしたが、一方で、時効の停止事由(改正後民法では完成猶予事由)が発生している間は、一時的に進行がストップすることになります。

2020年3月31日までに成立した借金の時効の停止事由

新民法施行前の2020年3月31日までに成立した借金の時効の停止事由は、以下のものが挙げられます。

  • 天災等
  • 履行の催告(内容証明郵便など)

例えば、自然災害により裁判所の業務が止まってしまうと、債権者は裁判上の請求のための申立てなどができなくなります。
この期間については、時効の進行が一時的に(その障害が消滅した時から2週間まで)ストップします。

内容証明郵便などによる裁判外での催告については、送った時点で一時的に時効が停止します。
つまり、時効期間が満了する直前に履行の催告をすることで時効を停止させ、債権者はその間(6ヶ月以内)に裁判上の請求をして時効の中断を狙ってくることがあるのです。

2020年4月1日以降に成立した借金の時効の完成猶予事由

新民法施行後の2020年4月1日以降に成立した借金の時効完成猶予事由は以下のとおりです。

  • 裁判上の請求、支払督促、和解・調停、倒産手続参加(民法147条1項)
    →これらの事由によって時効の完成が猶予された場合、その後確定判決または確定判決と同一の効力を有するものによって権利が確定したときは、前に説明した時効の更新事由に該当します(同条2項)。
  • 強制執行、担保権の実行、競売、財産開示手続、第三者からの情報取得手続(民法148条1項)
    →これらの事由によって時効の完成が猶予された場合、その後手続きが終了した段階で時効の更新事由に該当します。ただし、途中で取下げ・取消しにより手続きが終了した場合には、例外的に時効の更新事由に該当しません(同条2項)。
  • 仮差押え、仮処分(民法149条)
    →手続きが終了してから6ヶ月間は時効の完成が猶予されます。
  • 履行の催告(民法150条)
  • 協議の合意(民法151条1項)
  • 天災等(民法161条)
    →天災その他避けることのできない事変が原因で手続きができない場合、その障害が消滅した時から3ヶ月間は時効が完成しません。改正前はこれが2週間と短期間でした。

時効の援用は弁護士へ相談を

債権者が時効の援用を受けた場合、法的手続きや証拠の提出を行うことで、債務が消滅していないことを主張することができます。
つまり、債務者がしっかり確認せず援用をすると、債権者は時効の中断や更新があったとしてこれを拒み、代わりに訴訟等に踏み切る可能性があるのです。

時効の援用にデメリットはありませんが、仮に援用に失敗した場合、これまで請求がなかった債権者からの督促・取り立てが再開するリスクがあることを覚えておきましょう。

時効が援用できるかどうかは以下のツールでもチェックできますが、より正確に確認するためには、弁護士や司法書士に相談することを強くお勧めします。
弁護士・司法書士ならば、時効援用の見込みを丁寧に確認した上で、援用手続きまでを滞りなく行ってくれます。

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執筆・監修
服部 貞昭(CFP・日本FP協会認定)
ファイナンシャル・プランナー(CFP・日本FP協会認定)
2級ファイナンシャル・プランニング技能士(国家資格)
東京大学大学院 電子工学専攻修士課程修了

新宿・はっとりFP事務所
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