受任通知で督促・取り立てが止まる!
借金の支払いを滞納しているとき、債務者の頭を悩ませるものの1つが「取り立て」「督促」などの催促です。 精神的な負担は…[続きを読む]
特定調停は債務整理の1種ですが、法律のプロである弁護士は、あまり特定調停をすすめません。
特定調停にはメリットもありますが、デメリットもたくさんあります。別の債務整理方法を利用した方が、スムーズに借金問題を解決できる可能性もあります。
この記事では、特定調停とはどんな手続きなのか、またそのメリット・デメリットについて解説していきます。
特定調停とは、借金の返済が滞りつつある人の救済措置である債務整理方法の1種で、債務者自身が簡易裁判所に申し立てをして行われます。
簡易裁判所が、お金を借りている人(債務者)とお金を貸している人(債権者)を仲裁し、利息のカット等の返済条件の見直しをして、双方の合意が得られるようにする制度です。
特定調停を利用できる条件は、①減額後の借金が原則3年程度で返済できる金額である、②収入を継続して得る見込みがある、の2つになっています。
しかし、弁護士が特定調停の利用を勧めることはほとんどありません。
というのも、そもそも特定調停の成功率は極めて低いですし、申し立てられている件数もとても少ないです。
債権者が調停に同意しないケース、借金を減額しても返済していけないと判断されてしまうケースなど、特定調停が失敗するケースは多々あります。
特定調停に失敗した場合は、別の債務整理方法の利用を考えなければいけません。そうなってしまうと二度手間になり、特定調停にかけた時間がただの無駄になってしまうことも考えられます。
債務整理の1種である任意整理は年間300万~500万件は行われているという推測もある中、特定調停はわずか3,000件程度しか申し立てられていません。
借金の根本的な解決をしたいのであれば、他の債務整理方法の方が有効なケースがほとんどです。
特定調停には行うメリットもありますが、反対にデメリットもあります。次の章から、特定調停のメリットとデメリットをそれぞれ細かく解説していきます。
まずは特定調停を行うことのメリットについて解説します。
特定調停は、申立人本人が1人で行うことができます。
債務整理を弁護士に依頼した場合は弁護士費用がかかりますが、特定調停は1人で行うので、弁護士に依頼する必要がないので費用が抑えられます。
特定調停の費用は、一社あたり500円の手数料+予納郵券だけですので、ほぼ手続き費用はかからないと言って差し支えないと思います。
申立手続については裁判所の書記官が教えてくれますし、調停は調停委員会がすすめてくれるので、申立人本人が法律に詳しくなくても、手続きを行うことができます。
ただし、必要となる書類集めは自分でしなければいけないので注意が必要です。必要書類は少なくないため、その収集作業は決して楽なものとは言えないでしょう。
特定調停は裁判所で行う調停です。期日に出頭し、調停委員会主導による話し合いが行われ、手続きが進んでいきます。
調停条項案という、調停委員が立ててくれた案に沿って調停は進行しますので、債権者と直接交渉をする必要がありません。
債権者に叱責されたり問い詰められたりする、などという事はないと考えていいでしょう。
債務整理を考えている人の不安要素として、「借金の取り立てによって精神的にまいってしまっている」ということがあります。
借金の返済を滞納していると督促の電話や郵便は次第に厳しい口調になり、精神的に追い詰められ、借金のことで頭がいっぱいになってしまい、日常生活に支障をきたすことになってしまう人もいます。
特定調停の場合、書類等を全て揃えて裁判所に申し立てすると、申立受付票というものが債権者各位に送付されます。申立受付票が送付されると、取り立ては完全に止まります。
次に、他の債務整理方法を比較対象にして、特定調停のデメリットを解説していきます。
一般的に特定調停の成功率は3%程度と言われています。確実に借金を整理したいのであれば、特定調停の利用はあまりおすすめできません。
特定調停に失敗した場合は、改めて別の債務整理を検討することになり、二度手間になる恐れがあります。
きちんと正当な手続きを踏んで交渉しても、債権者が拒否すれば失敗するため、特定調停をしようとしてもただの無駄骨に終わる可能性もあります。
(逆に、別の債務整理方法であれば、弁護士のサポートを受けることでほぼ成功すると考えていいでしょう。)
弁護士は委任されると「代理人」として、申立人に代わり手続きを行ってくれるので、別の債務整理方法であれば、弁護士にサポートしてもらうほうが本人の負担は少ないと言えるでしょう。
それに対し、特定調停は一社ずつ交渉していかなくてはならないし、裁判所には平日に呼び出されます。
交渉が1日で終わるわけではないし、それが平日だけとなると、会社を休まなくてはいけなくなってしまいます。
別の債務整理方法であれば、弁護士がスケジュール調整をしてくれるから無理なく債務整理をすることができます。任意整理の利用であれば、弁護士が債権者と直接交渉してくれますので、自分が裁判所に行く必要もありません。
特定調停に必要な「申立書」や、その他必要書類は自分で集めたり、作成したりする必要があります。
特定調停は裁判所を介する法的手続きですので、申し立てや書類の作成には非常に手間がかかり、複雑なので時間がかかってしまいます。
裁判所を介しない任意整理であればそのような申し立て等は不要です。また、裁判所の申し立てをする自己破産や個人再生という債務整理手続きであっても、弁護士が書類準備等をサポートしてくれるので、特定調停ほど面倒なことにはならないでしょう。
特定調停の場合、申立受付票が債権者に送付されると、取り立てが止まることは先述しました。
しかし、この申立受付表というのは、面倒な書類等を全て裁判所に提出してから送付されます。
つまり、特定調停に向けて書類作成をしている間も容赦なく督促がされるでしょう。その期間で周囲にバレることもありますし、督促は一刻も早く止めるべきです。
これに対し別の債務整理方法では、弁護士に債務整理を依頼した段階で「受任通知」というものを弁護士は債権者各位に送付します。これは特定調停における申立受付票と同じ効果があり、送付されると督促が止まります。
申立受付票と受任通知の何が違うかというと、そのスピードです。
受任通知は弁護士に債務整理を依頼する意思をみせたらすぐに送付されます。受任通知が送付されてから、落ち着いて書類集めをすることができます。
特定調停ではそこまで大きな額の減額はできません。そんな減額を債権者が認めてくれるはずもないのです。
つまり、引き直し計算をしたところで、結局借金がそこまで減らなかった、借金問題の根本的な解決には繋がらなかった、というケースが多々あります。
特定調停は法的手続きです。特定調停で決まった内容は法的な内容ですので、そこでの取り決めを一度でも破ると、強制執行されてしまう可能性があります。
特定調停をする場合、少しでも借金額を減らすという目的ではなく、「現実的に、借金をきちんと返ししきる」ということを目的にしなければいけません。
返しきれるだけの算段がつく返済内容でも、病気等で収入がなくなってしまった場合、返せなくなってしまうこともありますので十分注意が必要です。
交渉が行われている間も遅延損害金は発生し続けます。債権者も減額に素直に応じてくれるばかりではないでしょうし、多数の債権者と交渉をしているとどうしても時間はかかります。
交渉が長引くと、特定調停を申し立てる前より借金額が増えている、というケースも考えられます。
では、特定調停以外の債務整理方法にはどんな手続きがあるのでしょうか。3つの手続きを紹介します。
これらは制度としては申立人本人による手続き遂行も可能ではありますが、手続きが難しいので、弁護士に依頼するのが一般的です。
任意整理は裁判所を介さず、借金の利息のカット等を債権者に直接交渉する制度です。
利用者はとても多いですが、借金そのものの減額率は特定調停同様あまり高くないので、借金が大量にある場合はこの方法でない方がいいかもしれません。
個人再生は、裁判所に申し立てて、借金を最大10分の1まで減額してもらう制度です。
借金の減額率は利用者の財産等によって変動するため一概には言えませんが、最大10分の1、おおよそ5分の1程度と見込んでおけばいいでしょう。所有財産が多い方は、財産処分をしたほうがいいケースもあります。
自己破産は、裁判所に申し立て、借金を全てなくしてもらう制度です。今ある借金が全てなくなる代わりに、自分の財産を生活に必要となる一部を残して全て処分する必要があります。
借金額がとても多い場合や、所有財産が少ない場合、自己破産は有効な手続きといえるでしょう。
いかがだったでしょうか。今回は、特定調停とは何か、そのメリットとデメリットについて解説しました。
正直なところ、特定調停はあまりおすすめできません。申立人の負担が大きく、結局失敗に終わる可能性の方が高いです。弁護士に依頼して別の債務整理方法を検討したほうが、費用はかかりますが、その分迅速かつ安定して借金整理を行うことができます。
借金を払いきれない程抱えてしまった場合、弁護士にご相談下さい。債務者の借金や財産状況によって、どの債務整理が適切かきちんとアドバイスをします。弁護士は法律のプロです、必ず力になってくれます。
債務整理を検討されている方、借金問題に悩まされている方は是非一度弁護士にご相談下さい。