借金について裁判所の出頭命令を無視するとどうなるの?

借金について裁判所の出頭命令を無視するとどうなるの?

借金の滞納を続けると、裁判所から出頭命令の連絡・呼出を受ける場合があります。

裁判所から連絡が来るということは、債権者が法的手続きを通じて借金回収に乗り出したことを意味します。出頭命令を無視・拒否すると欠席判決となり、強制執行によって財産を失ってしまうため、早い段階で弁護士にご相談ください。

本記事では借金に関する裁判所からの連絡(出頭命令)について、連絡が来る理由・無視した場合のリスク・返済できない場合の対処法などを解説します。

借金の滞納について、裁判所から出頭命令が来る理由

借金の滞納に関して裁判所から連絡が来た場合、債権者はすでに法的手続きを通じた債権回収に着手しています。

具体的には、以下のいずれかの事態が生じているので、早急に対処が必要です。

①債権者が支払督促を申し立てた
②債権者が貸金返還請求訴訟を提起した

①債権者が支払督促を申し立てた

支払督促」とは、簡易裁判所が債務者に対して行う支払いの督促です。申立てを受理した簡易裁判所は、債務者に対して特別送達により支払督促を発送します。

支払督促は、金銭債務(借金)が実体的に存在するか否かを審理することなく、形式的な書類審査のみによって発せられます。
債務者は異議を申し立てることができますが、異議申し立てをせずに一定期間が経過すると「内容に反論がない」と受け取られ、仮執行宣言付支払督促が出されます。

この後は、間も無くして債権者に強制執行を申し立てられてしまう可能性が高いです。

参考:支払督促|裁判所

②債権者が貸金返還請求訴訟を提起した

貸金返還請求訴訟」とは、債権者が債務者に対して貸金(借金)の返還を求める民事訴訟です。債権者が貸金返還請求訴訟を提起すると、裁判所は債務者に対して訴状などを送達し、口頭弁論期日への呼び出しを行います。

債権者が貸金返還請求権の発生原因を立証することに成功し、債務者側に有効な抗弁がなければ、裁判所は債務者に対して借金の返済を命ずる判決を言い渡します。お金を借りて返していないという事実があるならば、通常は債権者の勝訴となるでしょう。

判決が確定すると、債権者は強制執行の申立てが可能となります。

裁判所からの出頭命令を無視するとどうなるのか?

借金に関する裁判所からの連絡・呼び出しを無視すると、支払督促・訴訟のいずれについても、最終的には債権者による強制執行の申立てが可能となります。

強制執行が申し立てられると、債務者は差し押さえにより一部の財産を失ってしまい、これが借金の返済に充てられます。差し押さえをされる財産として代表的なものは、給料(給与)や預貯金でしょう。

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もし借金について裁判所から連絡・呼び出しを受けたら、無視せずに弁護士のアドバイスを受けながら対応しましょう。

支払督促|送達から2週間が経過すると差し押さえ

支払督促が債務者に送達されてから2週間が経過すると、債権者は裁判所に対して、支払督促に「仮執行宣言」を付すことを申し立てることができます。この時の仮執行宣言付支払督促は、改めて債務者に対して送達されます。

仮執行宣言付支払督促が発せられた場合、債務者はそれを「債務名義(=強制執行をするために必要になる裁判所の許可書)」として、裁判所に対する強制執行の申立てが可能となります(民事執行法22条4号)。

訴訟|敗訴判決が確定して差し押さえが可能に

裁判所から訴状と期日呼出状が届いたにもかかわらず、債務者がそれを無視して口頭弁論期日を欠席すると、債務者不在の状況で審理が進められます

実務上は、債務者(被告)が初回から2回連続で口頭弁論期日を欠席すると「擬制自白」が成立し、債権者(原告)の主張を全面的に認める判決が言い渡されます(民事訴訟法159条3項)。

判決が言い渡された後、被告には判決書または口頭弁論期日の調書が送達されます(同法255条)。送達を受けた日から2週間の控訴期間が経過すると、債権者勝訴の判決が確定します(同法285条)。

確定判決は債務名義となり、これを得た債権者は、裁判所に強制執行を申し立てることができます(民事執行法22条1号)。

借金を返済できない場合の裁判所の出頭命令への対処法

強制執行によって給与や預貯金などの財産を差し押さえられると、債務者の生活には大きな悪影響が生じてしまいます。

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強制執行を回避するためには、裁判所の連絡・呼出・出頭命令を無視することなく、法的手続きの種類(支払督促・訴訟)に応じて適切に対処しなければなりません。

支払督促への対処|異議申立て・債務整理

支払督促および仮執行宣言付支払督促に対しては、いずれも送達を受けた日から2週間以内に限り、債務者は督促異議を申し立てることができます。適法な督促異議の申し立てがあった場合、自動的に訴訟手続きへと移行します(民事訴訟法395条)。

異議の理由は問いませんので、とにかく異議申し立てをして訴訟手続きに持っていくことが大事です。
訴訟手続きに移行すれば、仮執行宣言付支払督促に基づく強制執行をいったん回避できます。

その上で、債務整理(詳しくは後述)を行い、借金の返済負担の軽減・免除を目指しましょう。

訴訟への対処|答弁書を提出・債務整理

債権者が貸金返還請求訴訟を提起した場合は、擬制自白の成立による敗訴を避ける必要があります。

基本的には口頭弁論期日に出席すべきですが、仕事などで出席が困難な場合には、裁判所に答弁書を提出しましょう。訴状記載の事実関係(借金の経緯や残高など)に間違いがない場合でも、ひとまず争う旨を答弁書で明らかにしておけば、擬制自白の成立を回避できます。
(答弁書の作成は弁護士に手伝ってもらうことをお勧めします。)

答弁書の提出によって時間的猶予を確保しつつ、弁護士に代理人として訴訟への対処を依頼するほか、債務整理によって借金負担の軽減・免除を図りましょう。

なお、裁判所が遠方で行けない場合には、答弁書の前に「移送申立て」をすることも考えられます。

主な債務整理手続きの種類

異議申し立てや答弁書で一旦は裁判所からの呼び出しに対処できても、その後も借金問題が続くのでは同じことの繰り返しになります。
そこで、借金問題は弁護士・司法書士などに相談し「債務整理」で根本的な解決を目指しましょう。

「債務整理」とは、借金などの債務負担を軽減・免除してもらう手続きです。主な債務整理手続きとしては、「任意整理」「個人再生」「自己破産」の3つが挙げられます。

各債務整理手続きにはメリット・デメリットの両面があり、どの手続きを選択するのがよいかは債務者の状況によって異なります。弁護士のアドバイスを踏まえて、効果的な債務整理手続きを選択しましょう。

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任意整理

「任意整理」とは、債権者との個別の交渉を通じて、借金(利息・遅延損害金)の減額や返済スケジュールの変更を認めてもらう手続きです。

<任意整理のメリット>
・簡易、迅速、安価に借金の負担を減らせる可能性がある
・対象とする借金を選べるため、保証人や友人などに迷惑がかかることを防げる・財産が処分されない・家族などに知られることなく手続きを進めやすい

<任意整理のデメリット>
・元本は減額されないケースが多い
・債権者の同意が必要
・債権者が多数の場合は、個別に交渉するのが大変
・個人信用情報機関に事故情報が登録される(一定期間、ローンやクレジットカードなどが利用できなくなる)

個人再生

「個人再生」とは、債権者の決議・裁判所の認可を受け、原則として債権者全員との間で債権カットや返済スケジュールの変更を行う裁判手続きです(税金などの公租公課の滞納は減額されません)。

<個人再生のメリット>
・大幅に借金を減額できる場合がある
・一部の債権者が反対している場合でも、債権者全員との間で債権カットを実現できる可能性がある
・担保権が設定されているものを除き、財産が処分されない
・住宅ローンが残っている自宅については、処分を回避できる特則がある

<個人再生のデメリット>
・裁判所に対する申立ての準備に手間がかかる
・数十万円程度の費用がかかる
・対象とする借金を選ぶことはできないので、保証人や友人に迷惑がかかることがある
・債務総額が100万円以下の場合は、減額が認められない
・債務総額が5000万円を超える場合は利用できない
・安定した収入がないと利用できない
・個人信用情報機関に事故情報が登録される(一定期間、ローンやクレジットカードなどが利用できなくなる)

自己破産

「自己破産」とは、債務者の一部の財産を換価・処分して債権者へ配当した後、残った債務全額を免除する裁判手続きです(税金などの公租公課の滞納は免除されません)。

<自己破産のメリット>
・最終的に債務全額が免除される
・安定した収入がなくても利用できる(無職やアルバイトの方なども利用可)
・債権者の同意が不要

<自己破産のデメリット>
・裁判所に対する申立ての準備に手間がかかる
・数十万円程度の費用がかかる
・不動産など高価な財産が処分される(今後の生活に必要な資産は残せる)
・一部の職業(士業や警備員など)について一定期間資格制限が発生する
・対象とする借金を選ぶことはできないので、保証人や友人に迷惑がかかることがある
・個人信用情報機関に事故情報が登録される(一定期間、ローンやクレジットカードなどが利用できなくなる)

借金について裁判所から連絡を受けたら弁護士に相談を

借金について裁判所から支払督促や訴状の送達を受けた場合は、強制執行を避けるための対応をとらなければなりません。滞納している借金を返済することが望ましいですが、返済が困難な場合は弁護士・司法書士に相談して債務整理を行いましょう。

弁護士や司法書士は、裁判所からの呼び出し・出頭命令への対応方法や、適切な債務整理の手続きや進め方をアドバイスいたします。弁護士にならば、実際の債務整理手続きについても全面的にお任せいただけます。

借金について裁判所から連絡を受けたら、お早めに弁護士・司法書士までご相談ください。

借金による裁判所への出頭命令に関するFAQ

借金滞納による裁判に出頭しないとどうなる?

裁判所から連絡が来るということは、債権者が法的手続きを通じて借金回収に乗り出したことを意味します。

借金に関する裁判所からの連絡・呼び出しを無視すると、支払督促・訴訟のいずれについても、最終的には債権者による強制執行の申立てが可能となります。
強制執行が申し立てられると、債務者は差し押さえにより一部の財産を失ってしまいます。

借金滞納で訴えられても呼び出しを無視したらどうなる?

裁判所から訴状と期日呼出状が届いたにもかかわらず、債務者がそれを無視して口頭弁論期日を欠席すると、債務者不在の状況で審理が進められます。

実務上は、債務者(被告)が初回から2回連続で口頭弁論期日を欠席すると「擬制自白」が成立し、債権者(原告)の主張を全面的に認める判決が言い渡されます(民事訴訟法159条3項)。

判決が言い渡された後、被告には判決書または口頭弁論期日の調書が送達されます(同法255条)。送達を受けた日から2週間の控訴期間が経過すると、債権者勝訴の判決が確定します(同法285条)。

確定判決は債務名義となり、これを得た債権者は、裁判所に強制執行を申し立てることができます(民事執行法22条1号)。

強制執行によって給料や預貯金などの財産を差し押さえられると、債務者の生活には大きな悪影響が生じてしまいます。

出頭命令を受けても行けない場合はどうすればいい?

強制執行を回避するためには、裁判所の連絡・呼び出し・出頭命令を無視することなく、法的手続きの種類(支払督促・訴訟)に応じて適切に対処しなければなりません。

支払督促への対処|異議申立て・債務整理

支払督促および仮執行宣言付支払督促に対しては、いずれも送達を受けた日から2週間以内に限り、債務者は督促異議を申し立てることができます。適法な督促異議の申し立てがあった場合、自動的に訴訟手続きへと移行します(民事訴訟法395条)。

訴訟手続きに移行すれば、仮執行宣言付支払督促に基づく強制執行をいったん回避できます。

訴訟への対処|答弁書を提出・債務整理

債権者が貸金返還請求訴訟を提起した場合は、擬制自白の成立による敗訴を避ける必要があります。

基本的には口頭弁論期日に出席すべきですが、出席が困難な場合には、裁判所に答弁書を提出しましょう。訴状記載の事実関係(借金の経緯や残高など)に間違いがない場合でも、ひとまず争う旨を答弁書で明らかにしておけば、擬制自白の成立を回避できます。

いずれにしても、無視をせずに対応した後で債務整理を行い、借金の返済負担の軽減・免除を目指しましょう。
弁護士や司法書士は、債務者の状況に応じて適切な債務整理の手続きや進め方をアドバイスいたします。

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阿部 由羅 弁護士
監修・執筆
阿部由羅(あべ ゆら) 弁護士
ゆら総合法律事務所・代表弁護士。西村あさひ法律事務所・外資系金融機関法務部を経て現職。一般民事から企業法務まで、各種の法律相談を幅広く取り扱う。webメディアにおける法律関連記事の執筆・監修も多数手がけている。
■URL https://abeyura.com/lawyer/

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