法人の任意整理とは?
- 会社経営がうまくいかない、資金繰りが厳しい、法人の借入金の返済が厳しい
経営者の皆さま、資金繰りの厳しさに直面し、借金の返済が滞ってしまった経験をお持ちではありませんか?
そんな場合に有効な手段として「任意整理」が挙げられます。任意整理は、資金提供機関などの債権者との交渉を通じて、債務のカットや返済期間の再調整を行うことで、債務者の負担を軽減します。
実は、任意整理は個人だけでなく、法人経営者も利用できる手法です。
この記事では、法人が選択する任意整理について詳しく解説します。法人の任意整理のメリットやデメリットについて理解を深めることで、適切な判断ができるようになるでしょう。経営者の方々にとって有益な情報となることを願っています。
目次
法人の任意整理とは?
法人の任意整理とは、債務の負担の大きさに悩む法人が、債権者と個別に交渉を行うことにより、債務の負担を軽くしてもらうことをいいます。
負担軽減の方法としては、①利息その他の債務のカット、または②返済スケジュールの見直し(延長)が考えられます。
任意整理は、いわゆる「債務整理」と呼ばれる手続きの中でも、もっとも簡単な方法により行うことができる手続きです。
破産などとは異なり、会社を存続させながら債務の負担を軽減することができるので、将来性の見込める法人にとっては利用価値の高い手続きといえます。
法人も任意整理できる?
任意整理は、個人が利用するものというイメージがあるかもしれませんが、法人も利用することが可能です。
ただし、法人の場合は資金の出入りが個人よりも激しく、債権額や債権者の数も多くなりがちです。
そのため、債務を抜本的に整理したいと考えるならば、弁護士への相談が事実上必須といえるでしょう。
法人による任意整理の流れ
法人が任意整理を行う場合、具体的にどのような流れで手続きが進むのかについて解説します。
弁護士に相談して方針を事前に決める
任意整理を行う場合、まずは弁護士に相談して、交渉の方針を決めましょう。
そもそも、任意整理は債権者との個別交渉により行うため、交渉先の債権者を選択することから始める必要があります。
債権者の数が少なければ、すべての債権者との間で交渉を行うことも考えられます。
しかし、債権者数が多い場合には、一部の債権者にターゲットを絞って交渉に臨む方が効率的でしょう。
その際には、弁護士と相談のうえで債権者のタイプを分析して、債権額の多い債権者や、任意整理の交渉に応じてくれそうな債権者を交渉相手に選ぶと、任意整理がうまくいく確率が上がります。
また、現実的にどの程度の支払い負担であれば許容できるのかという最低ラインについても、交渉を担当する弁護士との間で認識をすり合わせておく必要があります。
交渉を行う債権者(金融機関など)に連絡する
弁護士と相談して交渉の方針がある程度固まったら、実際に金融機関などの債権者に対して、任意整理の交渉に応じてくれるよう連絡を行います。
債権者の対応はさまざまであり、すんなり交渉のテーブルに着いてくれることもあれば、門前払いのような形で突っぱねられる可能性もあります。
債権者の態度があまりにも頑なであれば仕方がないですが、交渉の余地がありそうであれば、弁護士による説得で活路が開けるかもしれません。
任意整理の交渉を行う
債権者が交渉のテーブルに着くことを承諾すれば、任意整理の交渉が始まります。
交渉の形式には特に決まったものはなく、基本的には債権者と債務者の1対1での話し合いが行われます。
交渉の場では、
- このままでは会社が破産してしまうこと
- 破産してしまうと、債権者は配当をほとんど得られないこと
- 今のうちに任意整理に応じてくれれば、債務の大部分を支払える可能性が高いこと
などを説明しながら、債権者の出方を窺いつつ、新たな支払い条件への合意を目指すことになるでしょう。
なお、ある程度大規模な会社になると、何社かの大口債権者とまとめて任意整理の交渉を行うケースもあります。
これには、「主要債権者が横並びで債権カットに応じる」というある種の大義名分を債権者に与えることによって、高額の債権カットに応じるためのハードルを低くするという狙いがあると考えられます。
大口債権者とまとめて任意整理の交渉を行う場合には、説明会の開催や事業計画案の作成など、形式を整えたうえで交渉が進められることも多く見受けられます。
新たな支払い条件について合意書を締結する
債権者との間で新たな支払い条件に合意した場合、その内容を合意書にまとめ、債権者・債務者がそれぞれ調印します。
合意書は、任意整理の結果合意した内容を証明する証拠となるため、弁護士に作成を依頼して、法的に正しい用語や記載ぶりを用いて作成しておくことが大切です。
合意書の内容に従って債務の支払いを継続する
新たな支払い条件についての合意書が締結された後は、その合意書の内容に従い、債務者は債権者に対して、引き続き債務の支払いを継続します。
法人が任意整理を行うメリット・デメリット
法人の任意整理には、メリット・デメリットの双方が存在します。
具体的にどのようなメリット・デメリットが存在するのかについて、以下で見ていきましょう。
法人が任意整理を行うメリット
法人が任意整理を行うメリットは、以下のとおりです。
月々の支払い額を減らせる
任意整理の最大のメリットは、利息のカットや返済スケジュールの見直しにより、月々の支払い負担を減らせる点です。
月々の支払い額が減れば、会社のキャッシュフローが改善するため、経営再建への活路が見出せることでしょう。
手続きが比較的簡単
任意整理は裁判所を通さない手続きなので、複雑な書類の作成などは必要なく、手続きが比較的簡単であるというメリットがあります。
そのため、破産や民事再生などの法的倒産手続きに比べると、準備の手間や弁護士費用などを節約することが可能です。
当事者が主体となって柔軟な解決を模索できる
任意整理では、裁判所を介さずに、純粋な当事者間の交渉により、債務負担の軽減について話し合われます。
合意内容などについて、特に法律でルールが決まっているわけではないので、当事者が主体となって柔軟な解決を模索することができます。
会社の評判が傷つくことを最小限に抑えられる
破産・民事再生といった法的倒産手続きの場合、手続き開始の事実が官報で公告されてしまいます。
また、ニュースなどで倒産の事実が大々的に報道されることもあるかもしれません。
この点任意整理は、あくまでも債権者との内密な交渉によって行われるので、任意整理の事実が世間一般に知られてしまうことは基本的にありません。
そのため、会社の評判が傷つく可能性を最小限に抑えられるメリットがあります。
法人が任意整理を行うデメリット
一方、法人が任意整理を行うデメリットとしては、以下のものが考えられます。
同じ金融機関からの融資は困難になる
法人が一度任意整理を行ってしまうと、任意整理に応じた金融機関に対しては、法人に対する信用を再び獲得することは困難でしょう。
そのため、今後融資などを受けたい場合には、新たな金融機関を探してくる必要があります。
3-2-2.法人カードの停止
任意整理を行った場合、その事実が信用情報機関のブラックリストに登録されます。
ブラックリストは主に金融機関の間で共有されていますが、クレジットカード会社もこれを閲覧することができます。
もし会社が法人カードを作成している場合、任意整理の事実を受けて、クレジットカード会社により利用を停止されてしまう可能性があるので注意が必要です。
3-2-3.大幅な債務減額は期待できない
任意整理は簡易な手続きであるがゆえに、破産や民事再生で認められるような、大幅な債務カットは期待できません。
そのため、債務の総額が巨額である場合には、法的倒産手続きの利用を検討した方が良いでしょう。
法人の任意整理を弁護士に依頼するメリット
法人が任意整理を行う際には、債務整理に強い弁護士に相談することをおすすめいたします。
弁護士に任意整理を依頼することには、以下のようなメリットがあります。
受任通知の送付により法人への督促がストップする
弁護士が任意整理を受任すると、対象となる債権者に対して受任通知を発送します。
受任通知には、今後債務についての窓口は弁護士が務める旨が記載されます。
そのため、債権者が受任通知を受け取って以降は、債務者の法人ではなく弁護士宛に債務に関する連絡が来ることになるのです。
したがって、法人に対して債務の支払い督促が行われていた場合には、弁護士への依頼を契機にストップするというメリットがあります。
交渉や手続きを代行してくれる
法人の任意整理は、個人の任意整理に比べて債権額や債権者の数も多く、また必要な確認事項も多いため、交渉や手続きへの対応には専門的な知識を必要とします。
弁護士は法人に代わって、債権者との交渉や、任意整理に関する手続きの一切を代行してくれるので、会社経営者にとっても安心です。
費用面の不安があれば分割払いに応じてくれる場合もある
法人の任意整理には、数十万円から百数十万円程度の弁護士費用がかかることが通常です。
会社の資金繰りが厳しい場合には、弁護士費用をすぐに準備することが難しいかもしれません。
その場合には、弁護士に相談すれば、分割払いに応じてくれるケースもあります。
もし費用の支払いに不安がある場合でも、何とか任意整理を依頼することはできないか、弁護士に確認してみましょう。
まとめ
今回は、法人の任意整理のメリット・デメリットについて解説しました。
借金などの債務負担が厳しく、会社の経営が行き詰まってしまっている場合には、法人の債務整理に詳しい弁護士へ相談することをおすすめいたします。
弁護士は、任意整理・民事再生・破産などの選択肢の中から、依頼者の状況に合わせた適切な方法についてアドバイスをしてくれます。
いずれの手続きを利用するにしても、弁護士に依頼をすることで、債務整理をスムーズに進めることが可能です。
会社の借金などにお悩みの方は、ぜひ一度弁護士にご相談ください。