債務整理をしても車は残せる?自動車ローンがある場合の対応
個人再生や自己破産などの債務整理を行う場合、ケースによっては手持ちの財産を処分しなければならないことがあります。 そ…[続きを読む]
借金のことは人に相談しづらいものです。「家族にだけは絶対に借金のことを知られたくない」という人もいるでしょう。
多額の借金を解決する方法の1つに「個人再生」があります。
個人再生を内密に完遂できれば、借金のことも周囲にバレずに済むかもしれません。
では、個人再生を周囲に内緒で行うことは、現実的に可能なのでしょうか?
目次
まずは、個人再生という制度の仕組みや手続きの概要をご説明します。
個人再生は裁判所に申立てをして行う手続きです。ほとんどの人は弁護士に依頼して手続きを代行してもらいます。
個人再生の手続きにおいては書面のやり取りが主になるため、債務者と債権者が直接会うことはありません。
また、弁護士に依頼すれば、弁護士が裁判所や債権者に対応する窓口になってくれます。
個人再生に成功すると、借金を5分の1〜10分の1程度まで減額してもらえます。その後、残った債務を原則3年程度かけて分割返済していきます。
返済額が大きく減るため、経済状況は一気に好転するでしょう。
個人再生で裁判所に提出しなければならない書類は多く、また書き方も複雑なものがあります。弁護士に依頼をすることで、これらの書類の収集や作成をサポートしてもらえるのは大きなメリットです。
その他にも、個人再生を弁護士に依頼するだけで、周囲に個人再生がバレる可能性を抑えることができます。
まず、弁護士に依頼すれば、債務者本人が裁判所に足を運ぶ機会は少なくなります。
「最近裁判所に通っているみたいだけど、何かあったの?」などと怪しまれるおそれはなくなるでしょう。
また、上記の通り、個人再生では裁判所とのやりとりは原則的に書面(つまり郵便)で行われます。
自宅や会社に裁判所からの郵便物が届くことを心配する人もいると思います。
しかし、弁護士に手続きを代行してもらえば、裁判所からの郵便物は本人ではなく弁護士事務所に届きます。
また、裁判所から自宅や会社に電話が来ることもありません。弁護士を通して連絡を受けることになります。
前章の通り、裁判所の手続き面や債権者とのやりとりから、家族に個人再生のことがバレる可能性は少ないです。
しかし、別の面から家族にバレる可能性はあります。
個人再生をするときは、裁判所に様々な書類を提出する必要があります。
弁護士が対応してくれる書類も多いですが、債務者本人でなければ収集できない書類も多いです。
例えば「家族の収入を証明するための書類」です。
同居中の配偶者や親の給与明細、源泉徴収票、年金通知書などは、自分で管理していない限り、配偶者や親に在り処を聞いて見せてもらう必要があります。
「何に使うの?」と聞かれることは想像に難くないでしょう。
また、財産を証明するための書類も裁判所に提出する必要があります。
預貯金通帳などは自分で見つけて、コピーを取れるかもしれません。
しかし、保険証書などは、自分以外の配偶者や親が管理していることもあるでしょう。
これらの書類を集める際にバレてしまう可能性は高いです。
個人再生は基本的に財産を処分する必要はありませんが、全ての債務を整理対象とする必要があります。
つまり、自動車ローンが残っている場合、そのローンについても減額の対象となるのです。
自動車ローンが残っているのであれば、自動車の所有権はまだローン会社にあるため、全額の支払いが受けられないと分かった債権者は、一部の例外的なケースを除いて原則的に自動車を引き上げてしまいます。
自宅の車が急になくなると不思議がられるのが通常ですので、これにより個人再生がバレてしまうことはあるでしょう。
個人再生をすると、その情報が金融機関や貸金業者、クレジットカード会社の間で共有されます。この状態を俗に「ブラックリストに登録された」などと表現します。
その状態でお金を借りようとしたり、クレジットカードの申込みをしたりしても、審査の際に「個人再生をした人=返済能力に問題がある人」という扱いになり、審査落ちしてしまいます。
結果として、個人再生後しばらくの間は、各種ローンを組むことも、クレジットカードを作ることもできなくなってしまいます。
また、既に持っているクレジットカードも使えなくなります。
これらがきっかけで、家族に個人再生のことがバレる可能性は否定できません。
なお、ブラックリストに載った状態は5年〜10年程度継続します。
個人再生をすると、その旨が「官報」という国の機関紙に掲載されます。
官報は過去30日分ならインターネットでも無料で見られるため、官報からバレないか心配する人もいるかもしれません。
しかし、官報を日常的にチェックする人はほぼいませんし、それほど大きく載るわけでもありません。官報から自分の名前を探すだけでも苦労するほどです。
よって、官報からバレるケースは0に近いと言っていいでしょう。
以上から、個人再生は家族にバレる可能性が高い債務整理手続きであると言えます。
下手に隠そうとすると、バレたときに「なぜ黙っていたのか」と問い詰められて、問題がこじれるかもしれません。
素直に打ち明けて理解を求めた方が、後々のトラブルを軽減できる可能性があります。
できれば個人再生を検討する時点で家族に打ち明けて、理解を得られた状態にしておくことをおすすめします。
家族にバレる可能性の次は、職場にバレる可能性を考えていきましょう。
結論を言えば、勤務先に個人再生のことがバレる可能性は少ないです。
しかし反対に「ほぼ確実にバレる」ケースも存在します。
借金の返済を滞納し続けると、債権者が債務者の給与を差し押さえることがあります。
給与の差押えを受けると、給与から一定額が差し引かれて、強制的に弁済へ回されます。
差押えでは、勤務先から債務者に支払われたお金を、債権者が強制的に徴収するわけではありません。
債権者は「債務者が勤務先からお金をもらう権利」そのものを得ます。すなわち、勤務先は差押えられた金額を、債務者の口座とは別の口座に振り込む形になるのです。
このため、差押えのことは必ず勤務先にバレてしまいます。
給与の差し押さえは、借金の全額が返済されるまで続きます。
完済以外で差し押さえを停止するには、個人再生の申立てをして、個人再生手続の開始決定後に強制執行手続停止上申書を提出するなど、所定の手続きを経る必要があります。
手続きをすると、裁判所が差し押さえ手続の中止を決定し、債権者と勤務先にその旨を通知します。
こういった事情から、差し押さえのことも個人再生のことも、勤務先に必ずバレてしまいます。
個人再生をすると、裁判所から各債権者に連絡が行きます。
個人再生の申立ての際は、債務者は「全ての」債権者に関する名称や住所などを裁判所に申告しなければなりません。
勤務先から借りたお金を個人再生で解決する以上、勤務先に個人再生がバレるのは確実と言えます。
なお、「勤務先に裁判所からの連絡が行くのは困るから、勤務先からの借金は申告しないでおこう」などと考えて故意に申告しないと、個人再生の手続きに支障が発生します。
最悪の場合、個人再生そのものに失敗するかもしれません。
【個人再生が原因で解雇される?】
「個人再生をすると職場からの借金を一部踏み倒すことになる」「個人再生が原因でクビになるのでは…」といった心配をする方もいます。
しかし、通常は個人再生が原因で解雇されることはありません。仮に解雇されれば不当解雇に該当する可能性がありますので、争うことができます。
ただし、心理的に職場に居づらくなる、職場での立場が悪くなるなどの事情が発生して、自主的に退職を選ばざるを得なくなる可能性は0ではありません。
一人暮らしで勤務先からお金を借りていない場合などは、人に内緒のまま個人再生ができる可能性があります。
同居の家族がいる場合は難しいですが、状況によってはバレずに個人再生できることもあるでしょう。
ただし、それには弁護士の協力が不可欠です。弁護士に「家族に内緒で個人再生をしたい」と相談すれば、可能な限り人に知られずに個人再生する方法を考えてくれます。
そもそも個人再生の手続きは非常に難しいので、弁護士への依頼が事実上必須です。
弁護士に依頼すれば遅くても数日中には債権者からの督促が止まり、落ち着いた生活が戻ってくるなどのメリットもあります。
個人再生に限らず、借金でお困りの方は、お早めに弁護士までご相談ください。