任意整理後の毎月の返済額・支払いはどうやって決まる?
この記事では、任意整理では、一体どのようにして毎月の返済額が決められていくのか?疑問に感じている方向けに解説します。[続きを読む]
借金問題を合法的・根本的に解決する方法として「債務整理」があります。
そしてこの債務整理には、借金を0にできる「自己破産」と、借金を減額できる「任意整理」「個人再生」という3つの手段があります。
個人再生と任意整理は、借金額を減らして支払いスケジュールを再設定できる点で似ている手続と言えます。
しかし、個人再生と任意整理には、相違点も多く、状況に応じて適切な方を選択しなければなりません。
この記事では、任意整理と個人再生の違いを説明していきます。
目次
任意整理は裁判所を通さず、債務者が債権者と個別に交渉をして行う債務整理です。
任意整理では、まず「引き直し計算」をします(これは弁護士に依頼をすればお任せすることができます)。
仮に支払った利息が利息制限法の上限を超えている場合、法律に基づいた金利で計算し直して、払い過ぎていた差額の相殺や返還を求めるのです。
引き直し計算後に借金が残っている場合は、将来発生する利息や遅延損害金などをカットして、元本部分のみを原則3年程度かけて毎月少しずつ返済する和解契約を債権者と結びます。
後述する個人再生と違い、任意整理は裁判所を介さない分、債権者との交渉次第ではスムーズに話が進みます。
しかし、債権者と個別に交渉するということは、場合によっては債権者に取り合ってもらえないことがあるということです。自力で銀行や消費者金融、クレジットカード会社などと交渉しようとしても、門前払いを受ける可能性があります。
また、たとえ交渉に応じてくれたとしても、相手は金融・交渉のプロなので、うまく言いくるめられてしまい満足に減額できないかもしれません。
これを避けるため、任意整理は弁護士に依頼するのが一般的です。
弁護士に交渉を依頼すれば相手方は真面目に応じてくれますし、交渉で不利になるおそれも少なくなります。
個人再生の減額率は、債務総額が高額になるにつれて高くなり、最高で9割にも達します。
つまり、借金が10分の1になることもありえるのです。
大幅に減額してもらった後は、残った借金を原則3年程度かけて毎月少しずつ返済していくことになるので、生活がかなり楽になるはずです。
しかし、借金総額が100万円未満の場合は減額されないので、低額な借金の解決には向いていません。
また、借金額が5,000万円を超える人は個人再生を利用できませんので、この場合は自己破産を検討することになるでしょう。
個人再生では裁判所を通して債権者全員に連絡がいくため、債権者が債務整理に対して取り合わないということはできません(必ず、賛成・黙認・反対の意思表示をすることになります)。
債権者の同意を得る、という観点では、個人再生は任意整理より容易であると言えるでしょう。
なお、個人再生は裁判所のスケジュールに沿って進むので、債務者がいくら早く借金を解決したいとせかしてもどうしようもありません。
また、必要書類や面談も多いため、手間と時間がかかります。
個人再生と任意整理の違いを表にまとめます。
任意整理 | 個人再生 | |
---|---|---|
借金の減額率 | 利息のカットが主 | 5分の1〜10分の1ほど |
債務者の収入 | 条件は緩やか | 安定した継続的な収入が必要 |
整理する債権の選択 | 選べる | 選べない |
家族へのバレやすさ | バレにくい | バレやすい |
差し押さえの対策 | ストップできる | 止める効果はない |
費用相場 | 債権者1社につき3~5万円 | 総額60万円~ |
上記の相違点について、以下で詳しく解説します。
これについては先述の通り、個人再生の方が多くの借金を減額できます。
個人再生では最大で元本を含めた借金総額の10分の1まで減らせる可能性があります。
任意整理では利息や遅延損害金のカットにとどまります。
借金の総額が大きければ大きいほど、個人再生を選択するメリットは大きいでしょう。
個人再生の手続では、「安定した収入が将来まで継続する見込みのある人」でなければ、裁判所が再生計画(債務者が今後毎月いくら支払うのかという計画書)の認可を出してくれません。
任意整理でも手続後の返済は必要であるため収入が必要であることは変わりませんが、その条件は個人再生よりかなり緩やかになっています。
例えば、債務者本人の収入が少なくても、親や配偶者からの資金で和解内容に従った返済ができるならば、任意整理に成功する可能性があります。
個人再生では、裁判所に申立てを行う際に全ての債権者と債権額を明らかにしなければならず、全ての債権者について整理を行う必要があります。
任意整理は裁判所を通さない個人的な交渉となるので、「どの借金を整理して、どの借金を整理しないか」を自由に選択できます。
例えば「自動車ローンを整理するとマイカーを引き上げられてしまうから、自動車ローン以外の借金だけ整理しよう」「今後の付き合いがある人の借金は任意整理から外そう」「保証人に迷惑がかかる借金はそのままにしておこう」という選択が可能となるのです。
これは、裁判所が関与しない任意整理ならではのメリットでしょう。
個人再生では家計に関する資料を裁判所に提出しなければいけないため、例えば給与明細や保険証書、有価証券などを集めるときに家族に債務整理がバレる可能性があります。
任意整理ではそういった書類が必要ないため、家族にバレる可能性を低くできます。
借金や奨学金などの支払いを長期で滞納していると、債権者から支払督促や訴状が届き、最終的には給与(給料)などを差し押さえられることがあります。
個人再生手続開始の決定が行われると、このような給与差し押さえを含めた債務者に対する差し押さえ(強制執行)は「中止」されます(民事再生法39条1項)。
一方で、任意整理にはこういった効果がありません。任意整理の交渉の際に、併せて差し押さえをしている債権者に解除を依頼する必要があります。
既に差し押さえを受けている場合は、個人再生を検討した方が効率も良いかもしれません。
個人再生を行う際、裁判所費用と弁護士費用を単純に合わせると約60万円もの費用がかかってしまいます。
一方、任意整理ではそもそも裁判所費用がかかりません。
弁護士に依頼した場合、債権者1社につき3~5万円程度の費用がかかります。
このように任意整理は、債務整理の中でも費用がかなり安く済むのが特徴です。
債権者が任意整理に合意してくれない場合や、任意整理後に返済が困難になった場合は、任意整理から個人再生に切り替えることができます。
しかし、個人再生を認めてもらうには安定した収入が必要であるなど、クリアしなければならない条件は多くなります。
手続の代理を含め、切り替えを希望したい場合は必ず弁護士にご相談ください。
個人再生と任意整理には多くの相違点があり、借金の額や個人の希望によっても最適解が異なりますので、個人再生と任意整理を選ぶべきか、弁護士に事情を話して判断してもらうのがいいでしょう。
そもそも個人再生は手続が複雑なので弁護士が必要不可欠ですし、任意整理は債権者と対等に交渉するために弁護士の力が要ります。
任意整理から個人再生への切り替えの判断にも、弁護士の知識が必要でしょう。
どの方法を採るにしても弁護士に依頼することになりますので、借金問題でお悩みの方は、どうぞお早めに弁護士にご相談ください。