個人再生の住宅ローン特則(住宅資金特別条項)とは?利用条件も解説

服部貞明(CFP)
CFP(サーティファイド ファイナンシャル プランナー)・日本FP協会認定
2級ファイナンシャル・プランニング技能士(国家資格)
東京大学工学部卒、KDDI出身のITエンジニア起業家
個人再生の「住宅資金特別条項」とは|マイホームを守り借金解決

住宅ローンを組む際には、当時の収入・支出を鑑みて、十分に返済できる計画を立てることでしょう。
しかし、住宅ローンの返済は長期に渡ります。家族の病気・解雇など、様々な要因で返済が滞ることも少なくありません。

さて、住宅ローンを組む際には、通常は住宅を担保にします。そして、ローンの返済ができなくなると、金融機関等の債権者は住宅を売却し、貸付金を回収します。
こうなると当然ながら住居は失われ、住んでいた人は退去を余儀なくされてしまいます。

高額な借金があって債務整理をしたいが、マイホームなどの財産はできるだけ処分したくない」という方にぴったりの解決策として、「個人再生」の「住宅ローン特則(住宅資金特別条項)」というものがあります。
住宅ローン特則を利用できれば、マイホームを手元に残したまま債務の大幅な圧縮が可能です。

この記事では、住宅ローン特則について、わかりやすく詳しく解説します。

住宅ローン特則とは?

住宅ローン特則とは、個人再生をした後も住宅(マイホーム)に住み続けられる制度です。

個人再生とは、裁判所に申立をして行う、債務整理手続です。

裁判所の認可が下りれば、借金が最大で10分の1にまで減る可能性があります。減額後の借金は、原則3年程度かけて毎月少しずつ返済していくことになります。

債権者平等の原則

個人再生は、すべての債務につき平等に減額し、返済を行う必要があります。これを債権者平等の原則といい、どの債権者にも不公平がないようにするための原則です。

しかし、これをそのまま適用すると、住宅ローンも同じように個人再生の対象となります。個人再生の対象となると、債権者が抵当権を実行して住宅を売却してしまうため、債務者の生活の基盤が失われ、更生が困難となります。

そこで、住宅ローンは債権者平等の原則の例外とするため、個人再生をした後も住宅(マイホーム)に住み続けられる制度として「住宅資金特別条項(正式名称:住宅資金貸付債権に関する特則・住宅ローン特別条項・住宅ローン特則)」が設けられました(民事再生法第196条)。

住宅ローン特則は、一定条件を満たせば利用することが可能となります。

しかし、住宅ローン特則を利用する場合、個人再生後も住宅ローンは通常通り支払い続けることになります。返済計画のリスケジュール等は認められることがほとんどですが、住宅ローンの減額は原則としてできませんのでご注意ください。

ペアローンで個人再生をする方法

個人再生でペアローンを組んでいる住宅を残すには、夫婦が揃って個人再生を行う必要があります。

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住宅ローン特則の利用条件とは?

住宅ローン特則を利用するには、前提として個人再生ができる要件を全て満たしている必要があります。
具体的には「借金の支払いが不能な状況」で、「定期的な収入が将来まで継続する見込み」があり、「借金の額が5,000万円以下」であるなどです。

また、全ての住宅に適用されるわけではなく、利用するにはいくつかの要件があります。

住宅が居住目的/床面積の2分の1以上が居住用の建物

ローンの対象である建物は居住用である必要があります。

居住目的であれば分譲マンション等の区分所有でも問題ありませんが、事業用の物件・投資用の不動産・別荘等は住宅ローン特則の対象外です。
2つ以上居住用住宅を所有していても、1つだけが適用となります。

店舗建住宅などの場合、床面積の2分の1以上が居住スペースでなければなりません。

建物が再生債務者の所有物である

その建物が再生債務者(個人再生を申し立てた本人)以外の所有物であってはなりません。

建物が共有名義等の場合は、再生債務者の持分に抵当権が設定されていれば問題なく住宅ローン特則を利用できます。

なお、個人再生をするのが妻であり建物は夫の名義である等、再生債務者名義ではない財産はそもそも抵当権を行使されることはないのでご安心ください。

住宅に抵当権が設定されていて、抵当権以外に担保がついていない

抵当権が設定されていない住宅には、住宅ローン特則が適用されません。

また、抵当権は1つの建物に複数設定することが可能ですが、住宅ローン以外の抵当権が設定された住宅は、住宅ローン特則の対象外となります。

例えば住宅ローンの抵当権があっても、事業用等の資金を得るために同じ住宅に抵当権を設定し、住宅を担保にしてお金を借りることができます。
これを行なっていると、住宅ローン特則は利用できません。

しかし、増改築やリフォームのためのローンは、住宅が担保になっていれば住宅の改良に必要な資金として住宅ローン特則の対象になる可能性が高いです。詳しくは弁護士にご確認ください。

代位弁済を受けた日から6ヶ月以内

住宅ローンを滞納していると、保証会社が債務者に代わってローンの債権者に全額弁済することがあります。
これを「代位弁済」と言い、以後は保証会社が新しい債権者となります。

この代位弁済から6ヶ月以上経過している場合、住宅ローン特則を利用できません。

参考:信用保証協会・保証会社による代位弁済通知が届いたら

住宅ローン完済済みの場合

上記は、住宅ローンをまだ支払い中のケースです。
では、住宅ローンを完済したマイホームは、個人再生によりどうなるのでしょうか?

住宅ローンを全額支払った後の持ち家は、個人再生をする人(再生債務者)の財産となります。

個人再生では基本的に財産を処分する必要がないため、持ち家を問題なく手元に残すことが可能です。

しかし、個人再生には清算価値保障原則があります。これは、「自己破産によって債権者へ配当される金額以上は、個人再生でも最低限支払わなくてはなりません」という原則です。

よって、マイホームを手元に残す=多くの財産を有しているということになり、個人再生後の返済額が上がってしまいます

財産を減らせば個人再生後の支払い額を減らすことも可能なので、いっそマイホームを手放してしまうという選択も可能ですが、自己判断で財産を処分すると個人再生で禁止されている「財産隠し等」に抵触するおそれがあります。

必ず前もって弁護士に相談し、問題がないかどうかをご確認ください。

個人再生をご検討の方は弁護士・司法書士へ相談を

このように、現在多額の借金に悩まされている方でも、個人再生を利用すればマイホームに住み続けることは可能かもしれません。

もっとも、自分は住宅ローン特則を使えるのか、本当に個人再生が最適な債務整理方法なのか、素人では判断できないこともあるでしょう。

そんなときは、弁護士・司法書士にご相談ください。
債務整理は、どの手続きにも一定のメリット・デメリットがあります。手続きを行う際は、専門家のもとで慎重に判断していくことが大切です。

尚、債務整理の中でも、自己破産を選択すると、住宅を残すことはできません。
また、債務整理をした後はブラックリストに掲載されるため、一定期間新たな住宅ローンを組むことはできなくなります

できる限りデメリットを少なくした上で借金を確実に解決するために、お早めに弁護士へ相談することを強くおすすめします。

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