破産管財人とは?職務と権限、面談の注意点、費用について
この記事では、自己破産を検討している方に是非とも知っておいていただきたい「破産管財人」について解説をしていきます。[続きを読む]
会社が破産すると、従業員だけでなく、取引先や一般利用客(顧客)など、多方面へ多大なる影響が及びます。
会社が破産した場合、残った資金は債権者(お金を貸している人)に分配されます。
どの債権者が優先的に返金されないのではないかと心配になるところですが、実は、一部の債権者(顧客など)はほとんど弁済を受けることができないのが実情です。
債権回収の優先順位はどう決まるのか?気になるところです。倒産の支払いの優先順位を確認しておきましょう。
この記事では、「破産した会社法人の資産(債権)の分配方法・債権回収の優先順位」についてご説明します。
目次
債務者(法人)は、破産手続きを開始した時点ではある程度の財産を保有している可能性があります。
特に、債務者が営利の事業者である場合には、事業用の資産や未回収となっている売掛金などが現金化されることなく残されている可能性がありますから、それも財産となります。
破産事件における配当については、その財産から「誰が、どういう順番で、どのぐらいの債権を回収できるのか?」が重要になります。
破産手続きは裁判所を通して行う手続きですから、それぞれの債権者が個別で勝手に債務者の財産に手を付けることはできません。
債権者への財産分配についてのルールは、破産法という法律が定めています。
破産した債務者の財産について、債権者の劣後関係は「すべての債権者が平等に扱われる」という「債権者平等の原則」が大原則となります(破産法第194条第2項など)。
しかし、原則である以上は例外があります。実際の分配では、優先的に債権を回収できる債権者が存在するのです。
次に、債権者平等の原則の例外として、優先的に回収することが認められる債権について解説します。
まず、弁済すべき債権(債権者に回収される債権)は「別除権」「財団債権」「破産債権」に分けられます。
この中で一番優先的に配当されるのは、別除権です。破産手続きを待つことなく優先的に回収することができる権利で、抵当権などを有する債権者(別除権者)が優先的弁済を受けることができます。
次に優先配当されるのが、財団債権です。破産手続き開始前に未納となっている税金や社会保険料の他、破産手続きを行う上で発生する費用や予納金などの支払いに充てる財産になります。従業員の未払い給料の一部もここに含まれます。
そして、最後が破産債権となります。
この破産債権においても配当の優先順位があります。破産債権の種類は4つあり、優先的破産債権、一般的破産債権、劣後的破産債権、約定劣後破産債権となります。
債権の種類 | 債権の内容 | |
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別除権 | 抵当権などの担保 | |
財団債権 | ・破産手続き開始前に未納となっている税金や社会保険料 ・破産管理人に支払う報酬や破産手続きを行う上で発生する費用・予納金 ・破産手続開始前3ヶ月分の未払い給料、退職前3ヶ月間の給料の総額に相当する退職金 |
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破産債権 | 優先的破産債権 | 破産手続き開始後の租税や、未払い給料(財団債権に含まれない範囲)などの雇用関係(破産法98条1項) |
一般的破産債権 | 消費者金融からの借入金など | |
劣後的破産債権 | 破産手続開始後の利息、遅延損害金、延滞税・延滞金など(破産法99条1項、97条1項1号-7号) | |
約定劣後破産債権 | 破産者と債権者との間であらかじめ、破産になった場合に配当順位が劣後的破産債権よりも後順位になることの合意がある債権(破産法99条2項) |
このように、配当の優先順位はかなり複雑です。
なお、BtoC向け事業(個人顧客)会社の一般客の債権は一般的破産債権の扱いとなるため、残念ながらその返金額は僅かなものになるでしょう。
会社の破産手続きは、専門家なしに行うことはほぼ不可能です。
債権者や従業員など多くの利害関係人が絡むため、弁護士などの専門家に最初に相談して手続きを代理してもらうことになります。
会社の経営者(代表者)の方から破産の依頼を受けた弁護士は、会社が管理している重要書類や財産(不動産の権利証や有価証券、手形、小切手、預金通帳、銀行印など)を保全のために預かります。
さらに、会社内の残務処理も行います。
弁護士が裁判所へ会社破産を申立てた後は、破産手続きが開始すると同時に「破産管財人」が選任されます。
破産管財人は、会社の一切の財産(破産財団)を管理する権限を持ちます。すなわち、会社は手元に残っている資産を勝手に処分することができなくなるのです。
弁護士は、会社の資産・負債などの財務状況について、破産管財人に説明します。
説明を受け会社の資産を把握した破産管財人は、残余財産を順番に金銭に換価していきます。
会社にある財産の処分と換価の目処がたった段階で「債権者集会」が行われた後、各債権者に配当という形で資産が割り当てられます。
つまり会社破産では、依頼した弁護士と破産管財人により会社の資産が配当され、それでも弁済できない債務については返済義務を免れた上で、手続き終了と共に法人が消滅します。
破産後の会社の資産のほとんどが返金されないというケースも多いです。
では、返金措置や配当以外の他に、代表者や役員の責任を追及する手段はないのでしょうか。
考えられる手段としては、以下の2つの方法があります。
まず、会社に対し、債務不履行・不法行為に基づく損害賠償請求(民法416条1項、709条など)を行うことが考えられます。
しかし、実際のところ、既に破産申請をしてしまっている会社と裁判で争っても、相手の会社には資産がないため、返金される可能性はかなり低いといえます。
また、会社に支払った額が多くて数十万円である場合などには、弁護士費用や裁判にかかる労力を考えても効率的ではないでしょう。
ケースによっては、民事責任と比べ、刑事責任を追及する方が可能性が高いといえます。
例えば、会社が以前から大幅な赤字に陥っていたのにもかかわらず、費用を過少計上するなどして内容の異なる決算書をいくつか作成していたという事実がある場合、破産会社は特別背任罪に問われる可能性があります。
また、仮に決算書を元に新規の融資を受けていた場合は、詐欺罪としての立件も考えられます。
(※2018年2月、警視庁は、資産隠しによる破産法違反(破産詐欺罪)の容疑でてるみくらぶ社長を再逮捕する方針を固めました。)
このように、民事責任の追及は難しいといえそうですが、刑事責任の追及の可能性は考えられるケースがあります。
企業が倒産した場合、特に一般客は突如として大きなリスクを負う可能性があります。
一般顧客としては、旅行会社、エステサロン、ブライダル会社など、高価な買い物をする際は「価格のみで決めない」「経営状況を簡単にでも調べてみる」など、会社選びの基準を考えておきましょう。
2017年に破産した「てるみくらぶ」では、被害者となる一般旅行者への返金率はたったの3.5%でした。つまり、20万円の旅行代金を支払った人は、返金されても7,000円程度となってしまったのです。
しかし、てるみくらぶの場合、クレジットカードで支払いをしており未出発であった顧客に対しては、クレジットカード会社が独自で全額の返金を行なったケースもあったようです。