所得税・住民税などの税金が払えない場合はどうすればいい?

サラリーマンなど通常の会社員の方であれば、所得税や住民税などの税金は給与から天引きされるため、税金の納付について心配しなければならない場面は少ないです。

しかし、自営業の場合や、年度の途中で休職・退職(転職)をした場合などは、年度が終わってから多額の税金をまとめて支払わなければなりません。
その際、前年度よりも収入が減ってしまっていたり、直前に思いがけない出費が発生してしまっていたりすると、税金が払えない事態が発生する可能性があります。
(税金は前年度の所得によって計算されていますので、収入が減ってしまっても、すぐには減額されないのです。)

また、新型コロナウイルスの影響で客足が鈍くなり、売り上げが激減してしまったという会社経営者や個人事業主の方にも、税金の支払いが重くのしかかってきます。

税金は国に対する債務ですので、滞納すると大変なことになってしまいます。できる限り早急に対処することが必要です。
この記事では、税金(所得税・住民税)が払えない場合どうすればよいのかということについて解説します。

1.税金が払えない場合はどうなる?

まずは、実際に税金を滞納してしまった場合、どのような事態が発生してしまうのかを具体的に見ていきましょう。

1-1.延滞税が発生

所得税や住民税を滞納した場合、納付期限の翌日から延滞税が発生することになります。
(本税が1万円未満の場合は発生しません。)

延滞税は日数を基に計算されるので、滞納が続けば続くほど、後で支払わなければならない税金の金額はどんどん増えていってしまいます。

1-2.督促状の送付・電話や郵便による催告

所得税や住民税の滞納状態が続くと、税務署から督促状が送られてきます。
同居の家族などがいる場合、この督促状により延滞の事実が知られてしまうでしょう。

法律の規定上、所得税については納付期限から50日以内に(所得税法37条2項規定)、住民税については納付期限から20日以内に督促状が送られてくることになっています(地方税法329条1項規定)。

督促状が届いたら、役所が通知書を発送した日から10日以内に滞納分を全て支払わなければなりません。
支払いをしないまま放置してしまうと、地方税法331条1項1号により「いつでも差し押さえ可」の状態になります。

差し押さえが行われてしまうと、債務者の財産は強制的に換価・処分されてしまいます。

とはいえ、仮に差し押さえができる状態になったとしても直ちに強制徴収になることは原則としてなく、現実に差し押さえが行われる前に、債務者に対する最後の警告をする意味で、電話や郵便による催告が実務上行われています。

1-3.差し押さえ(滞納処分)

督促状の発送やその後の催告を受けてもなお債務者が税金を支払わない場合は、滞納処分という強制徴収の手続がとられます。

滞納処分においては、債務者の預金や給与債権、住宅や車などの資産が差し押さえられてしまいます。
差し押さえにより、債務者の意図しない形で財産が処分されてしまい、生活に困窮してしまうことになるでしょう。口座が差し押さえられてしまうと、ある日突然、預金の残高が0となってしまうかもしれません。

また、給料が差し押さえられた場合には、税金を滞納していた事実が職場に発覚してしまいます。

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このように、滞納処分による差し押さえが行われてしまうと大変なことになってしまいますので、早めに対処法を検討しておく必要があります。

2.税金を払えない時の相談先

税金の支払いができない場合には、税務署に相談した上で各種手続きを申請するほかありません。
支払いができなくなりそうということが分かった時点で、まずは税務署に相談することが大切です。

2-1.減免制度

まずは税務署で、国や自治体の定める税金の減免制度が利用できないかを確認します。
もし減免の要件に該当しているような場合には、税金の支払い義務自体が一部なくなりますので、債務者の負担は大きく軽減されます。

2-2.猶予制度

税金の減免制度を利用できない場合でも、一定の場合には、納税の猶予や換価の猶予を認めてもらうことができます。
どちらも税金の金額自体を減らせるわけではありませんが、財務状況を立て直すための時間を確保できる有効な手段といえます。

納税の猶予

災害や病気、廃業や事業上発生した大きな損害などにより、税金を一括で納入することができないと認められる場合に、税金の全部または一部の徴収を猶予してもらえる制度です(国税通則法46条1項、地方税法15条1項)。

納税の猶予は、最大で1年間認められます。

換価の猶予

滞納処分による債務者の財産の換価を待ってもらえる制度です(国税徴収法151条1項、地方税法15条の4第1項)。
換価の猶予も、最大で1年間認められます。

 

どれを検討するにせよ、税務署に相談をする際には「税金を払うつもりがある」ということを強くアピールしておくことが重要になります。
参考:減免・猶予等|東京都主税局

3.会社経営者や個人事業主を対象とした助成金制度

近年は新型コロナウイルスの影響により、特に会社経営者や個人事業主を対象とした助成金制度が整備されています(2022年5月現在)。
税金を含め、当面の支払いができないという場合の打開策として、検討してみることをお勧めします。
(※なお、新型コロナウイルスについての状況がアップデートされるにつれ、助成金制度も次々と更新されていくことが予想されるので、常に最新の情報を仕入れることが必要です。)

3-1.国税の納税猶予

所得税、法人税、消費税などの国税は、国税を納付することにより生活が困難になる場合や、事業を継続して行うことが困難になる場合には、一定の要件の下、納税猶予が認められる場合があります。
国税庁のHPでは、コロナによる影響も当然に猶予が認められる旨を公表しています。

参考:新型コロナウイルス感染症の影響により納税が困難な方へ|国税庁

【地方税の納税猶予について】
個人事業税、固定資産税、住民税などの地方税は、災害等の被害に遭った場合には、申請により納税猶予を受けることができる場合があります。新型コロナウイルスによる被害も、減免対象に含むという取り扱いがなされる可能性は高いと言えます。
地方税に関しては、地域ごとに異なる取り扱いが条例で定められていることがあるので、具体的にどのような制度があるのかについては地域の条例も併せて確認しましょう。

3-2.雇用調整助成金

雇用調整助成金は、新型コロナウイルスの影響により事業活動を縮小せざるを得ず、そのため労働者を一時的に休業させるなどの措置をとった事業者に対して、労働者に支払うべき休業手当等の一部を助成する制度です。

事業者にとっては、休業期間中の労務コストを大幅に削減する効果があるため、休業等をした場合には必ず利用をすることをお勧めします。

参考:雇用調整助成金|厚生労働省

3-3.フリーランスに対する休業支援金

業務委託を受けて働くフリーランス事業者が、子供の学校が臨時休校になったために仕事を休んだ場合には、1日当たり4,100円の休業支援金を支給する制度です(新型コロナウイルス感染症による小学校休業等対応支援金)。

参考:新型コロナウイルス感染症による小学校休業等対応支援金(委託を受けて個人で仕事をする方向け)|厚生労働省

なお、労働者を雇用する事業主の方向けの同制度もあります。
参考:小学校等の臨時休業に伴う保護者の休暇取得支援のための新たな助成金|厚生労働省

新型コロナウイルスに関する措置についての詳細は、ZEIMOの記事でも解説しています。

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4.税金は債務整理できない

借金に困っている場合、債務整理により借金の負担を減らすことができる、ということを聞いたことがある方は多いと思います。
「それなら、税金を支払う債務も債務整理によって減らせばいいのでは?」と考えた方もいらっしゃるのではないでしょうか。

債務整理の方法には、大きく分けて①任意整理、②個人再生、③自己破産の3種類があります。
しかし残念ながら、いずれの方法でも、税金を支払う債務を債務整理によって減らすことはできません

税金の納付は国民の義務であるため、債務整理では減額が認められないのです。

しかし、他の借金があるせいで税金を支払う余力がなくなってしまっているというような場合には、他の借金の方を債務整理することが有効な解決策となります。

その際には、弁護士に相談することがおすすめです。
弁護士は、債務者が負担している債務にはどのようなものがあるか、それらを債務整理することは可能なのかを的確に分析した上で、債務者にとってより良い解決方法を一緒になって考えてくれます。

税金の支払いや、借金の返済に困っている場合には、一度弁護士に相談してみましょう。

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また、株式会社や合同会社を設立して事業を行っている場合に税金が払えず破産を選択する場合は、その会社について破産手続の開始を申し立てることになります(法人破産)。

法人破産の場合、最終的にはその会社は清算手続きによって消滅することになります。清算手続きが完了してしまえば、会社には税金なども含めて一切債務が残ることはありません。

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5.まとめ

税金が払えなくなりそうだということが分かった場合、まずはできるだけ早く役所の窓口に相談してみましょう。
そこで、自分の状況を訴えた上で、税金を支払う意思があるということをアピールすれば、役所の人も親身になって相談に乗ってくれるでしょう。また、利用可能な制度(減免や猶予など)についても紹介してくれるはずです。

さらに、税金を支払う債務自体は債務整理によって減額することはできませんが、他の借金を債務整理によって減額することは有効です。

最も良くないのは、税金の滞納をそのまま放置してしまったり、税金を払うために借金をしたりすることです。
税金の滞納を放置してしまうと、延滞税が膨らみますし、最悪の場合差し押さえにより財産が強制的に換価・処分されてしまいます。また、借金問題は根本的に解決をしないと、自転車操業に陥ってしまいます。

国や自治体による滞納処分の手続きはスピーディに行われますので、可能な限り早めの対応を心がける必要があります。

税金の支払いや借金の返済に困っている方は、弁護士にご相談ください。

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監修・執筆
阿部由羅 弁護士(あべ ゆら)
ゆら総合法律事務所・代表弁護士。西村あさひ法律事務所・外資系金融機関法務部を経て現職。一般民事から企業法務まで、各種の法律相談を幅広く取り扱う。webメディアにおける法律関連記事の執筆・監修も多数手がけている。
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