免責不許可事由とは?自己破産できない場合
借金が膨らんで現実的に返済が出来なくなった人は、借金問題を解決するために「債務整理」をすることが有効です。 債務整理…[続きを読む]
「友人や知人を信用してお金を貸した後、返してもらっていないのに自己破産されてしまった」
そんなとき、もはや請求を諦めるほか無いのでしょうか?
確かに、自己破産によって破産者が「免責」されたら、その相手には返済を請求できないのが原則です。
しかし、場合によっては一部でも支払いを受けられる可能性もあります。
以下では、個人相手にお金を貸して、その相手が自己破産したときの正しい対応方法をご説明します。
自己破産は、支払い不能状態になった個人が破産を申し立てる手続きです。
裁判所に申し立てを行い、手持ちの高価な資産を債権者(お金を貸した側)へ配当する代わりに、借金を0にしてもらいます。
よって、破産すると債務者(お金を借りた側)は基本的に借金の支払い義務がなくなります(税金などの一部の債務を除く)。
借金の支払義務を免除されることを「免責」と言いますが、免責の効果は、貸金業者・銀行からの借金だけではなく、個人からの借入金や買掛金、未払い家賃などのほとんど全ての債務に及びます。
そのため、債権者は自己破産した人に請求できず、泣き寝入りせざるを得ないことになります。
親戚・友人であるなど、債務者と個人的な関係がある場合、「こっそり払ってもらえないか?」と考える方もいるかもしれませんが、そのようなことは法律上許されません。
自己破産では「すべての債権者を平等に取り扱わねばならない」とされています。たとえ親密である債権者でも、他の一般の貸金業者より優遇することはできないのです。
仮に一部の債権者だけえこひいきして支払いをした場合、これは「偏頗弁済(へんぱべんさい)」に該当し、破産法の「免責不許可事由」として、悪質な場合は免責の許可が出なくなってしまう可能性があります。
よって、仮に請求をしても債務者が支払ってくれることはないでしょう。
また、破産者と共謀して自分だけ借金を払ってもらったり、抵当権を設定したりしたら「詐欺破産罪」という犯罪が成立してしまう可能性もあるので、絶対にやめましょう(破産法265条1項、2項)。
詐欺破産罪の刑罰は10年以下の懲役または1000万円以下の罰金刑となっており、非常に重いです。
では、内緒でお金を払ってもらうことができない以上、債務の全額を諦めるほかないかというと、そんなことはありません。
以下のような手段により、一部であっても債権を回収できる可能性があります。
先述の通り、一定以上の財産がある債務者が自己破産をすると、その財産は金化されて債権者へと平等に配当されます。
債権者は、破産法の手続き上で決まった配当金を受け取ることができるのです(このためには、きちんと債権届けを提出しておく必要があります)。
ただし、財産をほとんど所有していない債務者ではそもそも配当の手続きがされませんし、配当があったとしてもその配当率が数%ということも珍しくないので、配当金によって多額を回収できるという期待はしない方が良いでしょう。
免責決定を受けた元債務者に無理に支払いをさせたり、保証人になるよう迫ったりすると、三年以下の懲役若しくは三百万円以下の罰金(又はこれを併科)となる可能性があります(破産法275条)。
また、暴行や脅迫によってお金を払わせると、刑法上の恐喝罪(刑罰は10年以下の懲役)も適用されるでしょう。
ただし、免責決定後、破産者本人が自ら支払うことは可能と考えられています。
免責は「支払い義務をなくす」制度であり「支払ってはならない」制度ではないからです。
破産者が「完全な自由意思」で、「自らの希望により」借りたお金を返してくれるというのであれば、受け取ってもかまいません。
たとえば、近しい親族や恋人などの場合には、任意での支払いを受けやすいでしょう。
とは言え、「支払いの強要」「恐喝」にならないよう注意が必要です。
相手の方から「本当に申し訳ないから、少しずつでも返します」などと自ら連絡してきた場合などでなければ、免責後に支払いを受けるのは難しいと考えましょう。
【自己破産される前に請求すると偏頗弁済となる可能性】
自自己破産を申し立てるより前ならば、債権者平等の原則は生じないので、請求すること自体は問題ありません。ただし、自己破産直前に支払いを受けることは、前述の「偏頗弁済」にあたる可能性があります。
結局のところ受け取った債務を返さなければならない可能性も生じますのでご注意ください。
お金を貸していた相手が自己破産したら、「もう支払いは受けられない」と諦めてしまう方が多数です。
確かに、債務者と親しい間柄の場合、もしかしたら自主的に支払いをしてもらえるとはいえ、多くのケースでは僅かな配当金を受け取るのが精一杯です。個人のお金の貸し借りは慎重に行いましょう。
また、借金問題にお困りの方で、「個人の債権者から度重なる請求を受けていて困っている」「自己破産をする際の債権者の扱いが心配だ」という方は、債務整理に詳しい弁護士へどうぞご相談ください。