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実は、自己破産には2種類の手続きがあります。本記事では、自己破産の中の「同時廃止」について説明していきます。[続きを読む]
「自己破産すると出来ない仕事がある」といった噂を聞いたことがあるかもしれませんが、実際のところ、自己破産によって一部の職業への制限が生じることがあります。自己破産手続きによって借金が免除される一方で、一定のデメリットも考慮する必要があります。
自己破産手続き中(破産手続開始決定から免責許可決定の確定まで)は、一部の職業において制限を受けることがあります。たとえば、金融関連の職業や公的な職種などで、信用や信頼性が求められる場合、自己破産の事実が影響を及ぼすことがあります。
この記事では、「自己破産すると制限を受ける可能性がある職業は何か?」「制限はどのくらいの期間続くのか?」について詳しく解説します。自己破産にはメリットとデメリットがあり、その影響を理解したうえで適切な選択をすることが大切です。記事を通じて情報を得て、将来の職業選択において的確な判断を行えるようサポートします。
目次
自己破産により特定の仕事が出来なくなることを「職業制限」「資格制限」と言います。
資格制限がかかる職業は多岐にわたるため、ここでは4種類に分類し、それぞれについて代表的例をピックアップして解説します。
一般的に知られている職業から特殊な職業まで多種多様なものが該当するため、最新の情報を知るために、自己破産のときは必ず弁護士に相談して事前に確認をしましょう。
名称に「~士」が含まれる、いわゆる「士業」と呼ばれている職業の多くは、資格制限の対象となっています。
- 弁護士
- 税理士
- 行政書士
- 司法書士
- 弁理士
- 公認会計士
- 社会保険労務士
- 宅地建物取引士(宅建士)
- 土地家屋調査士
- 不動産鑑定士
- 通関士 等
上記の士業は、資格を「剥奪」されるわけではなく、一定期間中「登録」ができないという状況になります。
制限が解除されれば再登録が可能ですので、再度その資格を用いて働くことができます。
なお、士業の中でも、他人の金銭や資産を扱うことがないもの(消防士、保育士、介護士、社会福祉士など)は対象となりません。
また、医師や看護師なども資格制限の対象外です。
一部の公務員や、「~委員会」「~審査会」「~会議所」などの委員(委員長)・会員などは、破産手続開始決定が罷免や解任の事由であり、開始決定を受けると職を下りることになっています。
例えば、以下のような組織の委員などです。
- 公証人
- 人事院の人事官
- 国家公安委員会員
- 公安審査委員会員
- 教育委員会員
- 公正取引委員会員
- 建築審査会員
- 商工会議所の役員・会員
ほとんどの公務員は影響を受けませんが、上記に挙げた以外の組織の委員(会員)でも資格制限を受ける可能性は0ではないので、前もって依頼先の弁護士に確認しておきましょう。
おおまかなイメージとしては、お金を取り扱う団体や企業の役員(取締役・監査役)が多く該当すると考えてください。
該当する方は多くないかもしれませんが、多種多様なのでやはり弁護士への事前確認は必須と言えます。
- 銀行の取締役、執行役または監査役
- 信用金庫等の会員及び役員
- 保険会社の取締役、執行役または監査役
- 商品先物取引業者または金融商品取引業者等のための外務員の登録
- 金融商品取引業の登録
- 金融商品仲介業者の登録
- 商品先物取引仲介業者の登録
- 賃金業務取扱主任者の登録
- 割賦購入あっせん業者の登録 等
上記の他にも様々な職業に対して、仕事に必要な許可を得られない・登録ができないなどの制限がかかるケースがあります。
- 警備員
- 旅行業者
- 動物取扱責任者
- 特定保険募集人の登録
- 風俗営業の営業所の管理者
- 派遣元責任者
- 質屋営業の許可
- 一般建設業の許可
- 一般廃棄物処理業/産業廃棄物処理業の許可
- 古物商および古物市場主の許可
- 酒類の製造免許、販売免許
大きな財産を扱う仕事や、他人の財産にアクセスしやすい仕事、派遣業など他人の労働力を管理するような仕事等が該当する傾向があるのかもしれません。
職業の制限を受ける期間は「破産手続開始決定から免責許可決定の確定まで」です。
目安としては、同時廃止の場合は1〜2ヶ月程度、管財事件の場合は4〜6ヶ月程度です(自己破産においては、ほとんどのケースで同時廃止が採用されます)。
正確には「破産者が復権を受けるまで」であり、復権されるのは以下の場合です。
典型的なものは「免責許可決定の確定」(=自己破産手続きの終了)で、ほとんどの方がこれに該当して復権します。
念のため他の3つについても簡単に説明します。
破産者の手元に債権者へ分配できるだけの資産がある場合、これを処分・換価して債権者への配当が行われます。
しかし、破産者の債権者全員が、この配当を放棄することに同意している場合は、破産手続をする意味がないので破産手続自体がすぐに終了(廃止)します。
この場合は復権されて、自己破産手続き終了よりも前に資格制限がなくなります。とはいえ、これはかなりレアケースであり、通常考えられないでしょう。
個人再生に成功したときです。
自己破産に失敗をしたなどの理由で個人再生を行い、それに成功した場合、その時点で資格制限が解除されます。
詐欺破産罪とは、破産者が自分の財産を隠匿したり破損させたりしたときに問われる罪です。そういったことを行わなければ詐欺破産罪になることはありません。
よって、単純に「(自己破産や個人再生に失敗をしても)破産手続開始決定から10年経てば自動的に復権する」と考えて良いでしょう。
しかし、10年間復権されないのは不便なので、大抵の場合は自己破産や個人再生を再度申し立てることになると思われます。善後策については弁護士と相談するべきでしょう。
復権を受けた後は資格制限がなくなるので、従来通りの職業に就くことができます。
過去に取得した国家資格などが剥奪されることはなく、復権後に再び資格をもった活動を再開して構いません(例えば、弁護士であれば司法試験に合格した事実が取り消されることはありません)。
問題は、資格制限を受けている期間をどのように過ごすかです。
企業や団体に勤めている人は一時的に休職、自分で事業を行っている人は一時的に休業するという方法があります。
しかし、その期間中は収入が減る、またはなくなるので、生活を維持できるように何らかの方法を考えなければなりません。
例えば警備員の場合、警備の業務ができなくなるので、一時的に営業部や経理部など別の部署に回してもらい、警備の仕事を回避するという手があります。
職場との協議が必要ですが、この方法であれば収入は確保できるはずです。
職場に相談すると自己破産のことがバレてしまいますが、自己破産を理由とした解雇は不当解雇に当たるので、少なくともクビになることはありません(しかし、会社に居づらくなる可能性はあります)。
どの方法が最適かつ現実的なのかは、自己破産をする前に弁護士と相談しておくべきです。
早めに対策しておけば、仕事や収入への影響を最小限にできる可能性があります。
【自己破産以外の債務整理を選択することも一つの手段】
休職や退職で仕事ができなくなるのは困る、資格制限期間中の収入を確保する目処が立たないという場合には、任意整理や個人再生の手続きを利用すれば、資格制限の影響を受けることなく借金の負担を減らすことできる可能性があります。
しかし、任意整理や個人再生は、自己破産とは異なり、債務全額の免除を受けることはできない(減額にとどまる)手続き方法です。
どの債務整理を利用するのがもっとも債務者にとって望ましいかについては、債務の金額・所有する財産・月々の収入などを考慮して、弁護士と相談をしながらじっくり検討することをおすすめします。
現在仕事をしている方にとっての自己破産による資格制限の影響は、上記で説明した通りです。
では、これから就職するという学生の方や、近々転職を検討しているという方には何か影響はないのでしょうか?
まず、学生時代に自己破産した場合であっても、それを履歴書に書く必要はありません。自己破産自体が採用に影響することはないはずです。
転職も同様であり、復権していればどのような職業にでも転職することができます。
ただし、銀行等の金融機関に就職(転職)する場合は問題となるかもしれません。
自己破産をするとその情報が「信用情報機関」という組織のデータベースに登録され、銀行・貸金業者・クレジットカード会社等の間で共有されて「自己破産をした人=返済能力に問題がある人」として認識されます。
銀行など一部の組織では、就職時や転職時に信用情報機関に問い合わせを行うことがあるため、自己破産した過去がバレて採用時の選考に不利に働くおそれがあります。
お金の取り扱いに関わる企業に就職・転職をしたい人は、一応覚えておくと良いかもしれません。
自己破産をしたからといって、その事実が裁判所から会社に伝わるということはありません。
また、自己破産手続きを開始すると、手続きを利用した者の氏名が「官報」に載りますが、会社が官報の該当箇所を逐一確認しているということはほとんどないでしょう。
そのため、自己破産を利用したからといって、会社にバレることは基本的にないと言えます。
もっとも、以下の場合には、自己破産等をしたことが会社にバレる可能性があります。
なお、仮に債務整理がバレたからといって、それだけで解雇されることはありません。もし債務整理を理由に解雇されたら、それは不当解雇として争うこともできます。
資格制限がかかる職業は多岐にわたります。
最新の情報を知るために、自己破産のときは必ず弁護士に相談して事前に確認をしましょう。
【法律系の資格を必要とする一部士業】
- 弁護士
- 税理士
- 行政書士
- 司法書士
- 弁理士
- 公認会計士
- 社会保険労務士
- 宅地建物取引士(宅建士)
- 土地家屋調査士
- 不動産鑑定士
- 通関士 等
【一部公務員・委員系の職業】
- 公証人
- 人事院の人事官
- 国家公安委員会員
- 公安審査委員会員
- 教育委員会員
- 公正取引委員会員
- 建築審査会員
- 商工会議所の役員・会員
【お金を取り扱う団体・企業にまつわる役員】
- 行の取締役、執行役または監査役
- 信用金庫等の会員及び役員
- 保険会社の取締役、執行役または監査役
- 商品先物取引業者または金融商品取引業者等のための外務員の登録
- 金融商品取引業の登録
- 金融商品仲介業者の登録
- 商品先物取引仲介業者の登録
- 賃金業務取扱主任者の登録
- 割賦購入あっせん業者の登録 等
【その他】
- 警備員
- 旅行業者
- 動物取扱責任者
- 特定保険募集人の登録
- 風俗営業の営業所の管理者
- 派遣元責任者
- 質屋営業の許可
- 一般建設業の許可
- 一般廃棄物処理業/産業廃棄物処理業の許可
- 古物商および古物市場主の許可
- 酒類の製造免許、販売免許
民間企業に勤めているサラリーマンや一般的な公務員であれば、自己破産に関係なく普通に仕事を続けられるケースが大半です。
なお、過去に取得した国家資格などが剥奪されることはなく、復権後に再び資格をもった活動を再開して構いません(例えば、弁護士であれば司法試験に合格した事実が取り消されることはありません)。
職業の制限を受ける期間は「破産手続開始決定から免責許可決定の確定まで」です。
目安としては、同時廃止の場合は1〜2ヶ月程度、管財事件の場合は4〜6ヶ月程度です(自己破産においては、ほとんどのケースで同時廃止が採用されます)。
正確には「破産者が復権を受けるまで」であり、復権されるのは以下の場合です。
典型的なものは「免責許可決定の確定」(=自己破産手続きの終了)で、ほとんどの方がこれに該当して復権します。
自己破産による職業制限の影響は、特定の職業に限るものであり、そうでない職業の人であれば全く問題になりません。
民間企業に勤めているサラリーマンや一般的な公務員であれば、自己破産に関係なく普通に仕事を続けられるケースが大半です。
たまたま自分の仕事が職業制限に該当する場合でも、弁護士に相談することで生活への影響をできるだけ減らせる方法を教えてもらえるので、過度な不安は必要ありません。
自己破産の際には、職業制限の他にも不安になることがあるかもしれません。
しかし、弁護士に依頼して協力を得ることで、その多くを解消することができます。
自己破産などの債務整理を検討している方は、ぜひ債務整理に詳しい弁護士までご相談ください。