固定資産税を滞納して差し押さえられた!?回避・解除方法は?

固定資産税を滞納して差し押さえられた!?回避・解除方法は?

固定資産税は、土地、建物、田畑、山林、牧場などの不動産(固定資産)に課される税金です。
また、事業のために所有している機械装置、車両、船舶など償却資産にも固定資産税がかかります。

固定資産の所有者は、その資産の評価額に基づいて固定資産税を支払います。所有者が固定資産を持っている限り定期的に支払う必要があるため、この支払いが大きな負担となるケースも多く見受けられます。

固定資産税を滞納すると、最終的には財産の差し押さえをされる可能性があります。借金の滞納による差し押さえの対象は多くの場合で給料や預貯金となりますが、固定資産税の滞納が原因の場合、課税対象である不動産などが差し押さえられることもあり、生活や事業に大きな影響が出てしまいます。

本記事では、固定資産税の滞納や、滞納による差し押さえを回避するための対処法を考えていきます。

固定資産税を滞納するとどうなる?

固定資産税の滞納による影響

固定資産税を滞納すると、滞納金の発生、督促から始まり、最終的に財産の差し押さえにまで発展します。

  • 滞納金の発生
    固定資産税の滞納期間に応じて延滞金が課されます。滞納期間や時期、地域により延滞金率は変動しますが、東京都主税局によると最大で14.6%になります(2023年6月現在)。滞納期間が長ければ長いほど、元本に加えて追加の費用が嵩んでいくのです。
  • 督促状の送付
    滞納が続く場合、各市町村は滞納者に対して督促状を郵送します。法律上では納付期限から20日以内に督促状が発送されます(地方税法329条1項規定)。市町村によっては電話や訪問が行われることもあります。
  • 強制徴収の準備(財産調査)
    督促状を無視していると、市町村は強制徴収をする準備に入ります。このうちの財産調査は、滞納者が所有している資産・財産の価値を特定し、差し押さえによって税金の回収が可能かどうかを判断されます。
  • 法的措置(差し押さえ)
    滞納者に返済の意思がなく、滞納が長期に渡れば、市町村は財産の差し押さえを行うでしょう。給与や預貯金はもちろん、固定資産税の滞納の場合、課税対象である不動産などが差し押さえられることもあり、競売で売られたらその不動産は手放すことになります。

固定資産税の差し押さえ対象

固定資産税の差し押さえ対象は、通常の借金の滞納と同じく給与・預貯金のケースが多いですが、これらを差し押さえても滞納分を回収できない場合には、滞納者が所有する固定資産が差し押さえられるケースもあるのが特徴です。

固定資産は土地や建物などの不動産だけに留まらず、滞納者が所有する機械や設備、車両、船舶なども含みます。
固定資産、特に住宅が競売にかけられると、滞納者は最終的に住む家を失ってしまいます。

ただし、固定資産の差し押さえはあくまで最終手段です。通常は、滞納者と市町村の間での交渉や、支払い計画の策定が優先されるでしょう。
滞納者としては、差し押さえが行われる前に市町村と連絡を取り、解決策を模索することが重要です。

差し押さえ〜競売までの流れ

競売までの流れは地方自治体によって異なる場合がありますが、概ね以下のような流れです。

  1. 差し押さえ手続の準備:市町村は、滞納者に対して書面通知(督促状)や訪問などを通じて差し押さえの意思を伝えます。
  2. 財産調査・評価:担当者が「財産調査」や「身辺調査」を行い差し押さえ対象となる固定資産を特定し、価値を評価します。「給与や預貯金を差し押さえても滞納分を回収できない」「差し押さえられるような給料・預貯金がない」という場合には、価値のある固定資産を差し押さえると決断されるでしょう。
  3. 差押予告通知書の送付:財産調査の結果、差し押さえをできる財産があるならば、本格的な差し押さえに入る旨を滞納者に通知します。なお、この通知書が送付されずに差し押さえを実行されるケースもあります。
  4. 実際の差し押さえ:実際に不動産などが差し押さえられます。一度差し押さえられると、差し押さえが解除されるまで該当の不動産を処分(贈与・売却など)することができません。
  5. 競売の実施:差し押さえられた固定資産の競売が実施されます。競売は一般的に入札によって行われ、最も高い入札額を提示した入札者に固定資産が売却されます。
    競売によって売却された固定資産の代金は、滞納額の回収や関連費用に充てられます。残りの金額が滞納者に返還される場合もありますが、競売の売却額はさほど高額にならないので、返還があるケースはほとんどないでしょう。

競売により不動産が売却されると、買い取った人に所有権が移りますので、不動産を明け渡す必要が出てきます。もしも立ち退かずに居座り続けた場合、裁判所が強制執行を行い、家財等を運び出して強制的に退去させることもありえます。

競売の流れについて、詳しくは以下のコラムをご覧ください。

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固定資産税を払えないときの対処法

上記のように、固定資産税を滞納し続けると様々なデメリットが発生します。
そこで、一番大事なのは「払えない」「支払いが厳しい」となった時に、一日でも早く適切な対応を取ることです。

納税猶予の申請

病気や災害、減収、解雇などが理由で固定資産税が払えない場合、各自治体に対して納税猶予を申請することができます。
申請が承認されるかどうかは個別の状況によって異なりますが、やむを得ない事情があると認められれば、原則1年以内で納税の猶予を認めてもらえるでしょう。

なお、税金の納付が据え置かれるケースのほかに、固定資産税を各月の分割払いにしてもらえるケースもあります。
固定資産税は元々1年分の金額を4回に分けて分納するのが一般的ですが、これが各月の分割払いが認めてもらえれば、出費は毎月に増えますが一気に多額の税金を納めずに住むため、支払いが楽になるケースもあるでしょう。

軽減制度を利用する

納税者や課税対象に特別の事情があるとき(風水害や地震、火災などの災害に遭った時や、所有する固定資産の価値が低い場合)は、納期限までに都税事務所や支庁等に申請することによって、軽減が認められる場合があります。

固定資産税が免除されるケースや、減税されるケースがありますが、いずれも一定の条件を満たした上で各自治体に申請する必要があります。

ほかにも、生活保護を受けている方、低所得者や困窮者に対する特例措置などがあります。このような制度を利用することで支払う余裕が生まれるケースもありますので、詳細は税務署などにお問い合わせしてみることをお勧めします。

債務整理で他の借金を整理する

債務整理は、個人または法人が債務の返済に困難を抱えている場合に、借金を減額・免除などして整理する手続きです。
しかし、債務整理によって税金を減らすことはできません。減額する手続きにせよ、免除する手続きにせよ、税金はその後も通常どおり支払う必要があります。

しかし、税金以外にも借金を抱えている場合(消費者金融からの借入や銀行からのローンなど)には、それらの借金を債務整理することにより、税金を納税する余裕が生まれるかもしれません。
「任意整理」「民事再生」「破産」のうち、どの債務整理方法が最適なのか、それぞれどのようなメリット・デメリットがあるのかは、債務整理に強い弁護士や司法書士にご相談ください。

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重要なことは、税金の未払いに対する対処は早めに行うことです。
各自治体への連絡・相談は早めに行い、また、具体的な状況に応じた解決策を見つけるために専門家の助言を仰ぐこともお勧めします。

【固定資産税の時効を期待することはできない】
固定資産税の納付義務にも時効は存在します。地方税法第18条の規定により納付義務が発生した時から5が経過すると、債務は時効により消滅します。しかし、近年は税金の強制徴収が強化されており、督促状は確実に送付されると考えられます。通常は時効が成立する前に強制執行(差し押さえ)を受けてしまうため、固定資産税などの税金について時効を狙うのは不可能と考えるべきでしょう。

固定資産税の差し押さえを解除する方法

では、滞納を放置したまま実際に差し押さえられてしまった場合、どうすれば良いのでしょうか?

最も望ましいのは、滞納している税金を一括返済で完済してしまうことです。そうすれば、当然ながら差し押さえは解除されます。
しかし、納税できないからこそ差し押さえの状態に陥ってしまっていることがほとんどでしょうから、現実的には滞納金を完済することは難しいといえます。

完済する以外に、給与の差し押さえや競売を回避する方法はあるのでしょうか?

「差押禁止債権の範囲の変更」を申し立てる

給与差し押さえにより大きく生活が圧迫されてしまっているという場合には、裁判所に対して「差押禁止債権の範囲の変更」(民事執行法153条1項)を申し立てましょう。

申立てを受けた裁判所は、債務者・債権者それぞれの生活状況その他の事情を考慮して、差押命令の全部または一部を取り消すことができます。

民事執行法第153条
執行裁判所は、申立てにより、債務者及び債権者の生活の状況その他の事情を考慮して、差押命令の全部若しくは一部を取り消し、又は前条の規定により差し押さえてはならない債権の部分について差押命令を発することができる。

給与差し押さえの影響で債務者が生活できないほど苦しくなっている場合には、申立てが受け入れられ、給与の差し押さえが一部解除される可能性が高いです。

任意売却を行う

「任意売却」では、抵当権を設定した金融機関に抵当権の抹消を承諾してもらって抵当権を抹消し、ローンが残っている不動産の売却をします。
競売同様不動産を手放すことにはなってしまいますが、任意売却ならば競売よりも高額で売却でき、また、引っ越し費用などは売却額の中から捻出できるので、自己負担を少なくすることができます。

競売開始の通知が届いても任意売却をすることはできます。しかし、競売を回避できる期限は入札日の前日までであり、ギリギリで手続きに着手しても競売を止められません。
弁護士などの専門家への相談は早めに行うようにしましょう。

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債務整理を行う

特に、給与を差し押さえられてしまった場合には「債務整理をする」ことが最も現実的でおすすめの方法になります。
債務整理を行うことにより、借金の負担を大きく減らせるだけでなく、給与の差し押さえも解除することができます。

差し押さえの解除を狙うなら、個人再生か自己破産を選択するべきでしょう。

個人再生では、手続開始の決定が行われると、給与差し押さえを含めた債務者に対する強制執行は「中止」され、勤務先は差し押さえ対象の給与を手元で一旦プールしておくことになります。

そして、個人再生計画認可の決定が確定した時点で差し押さえは効力を失い、債務者に対してプール金を含めた給与満額が支払われるようになります。

自己破産では、手続きの詳細により異なりますが、破産手続開始決定の時点から給与全額を受け取ることが可能になるケースもあります。

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固定資産税と差し押さえに関するQ&A

固定資産税の時効は何年?

地方税法第18条の規定により、納付義務が発生した時から5年が経過すると、固定資産税の負債は時効により消滅します。

しかし、近年は税金の強制徴収が強化されており、督促状は確実に送付されると考えられます。通常は時効が成立する前に強制執行(差し押さえ)を受けてしまうため、固定資産税などの税金について時効を狙うのは不可能と考えるべきでしょう。

固定資産税の差し押さえまでの期間は?

各市町村によって違いはありますが、基本的に、滞納後3ヶ月程度で差押予告通知書の送付がされるケースが多いようです。
(各種税金は、地方税法上は滞納から1ヶ月以内で財産の差し押さえが可能となりますが、実際に1ヶ月で差し押さえられるケースはほぼありません。)

滞納後数年たった段階で急に催告書が届くこともあるようなので、対応は市町村によってまちまちです。
とはいえ、上記の時効が成立するまで放置されることは基本的にありませんので、無視をせずに早めの対応を心がけるようにしましょう。

固定資産税で差し押さえを受けたらどうする?

固定資産税の差し押さえ対象は、通常の借金の滞納と同じく給与・預貯金のケースが多いですが、これらを差し押さえても滞納分を回収できない場合には、滞納者が所有する固定資産が差し押さえられるケースもあるのが特徴です。

差し押さえの後、競売により不動産が売却されると、買い取った人に所有権が移りますので、不動産を明け渡す必要が出てきます。もし立ち退かずに居座り続けた場合、裁判所が強制執行を行い、家財等を運び出して強制的に退去させることもありえます。

税金以外の借金でもお悩みなら弁護士へ

先述の通り、税金の滞納は債務整理で解決することができません。
減額や猶予を望む場合、個別に各自治体へ申請を出す必要があります。

一方、固定資産税を始めとした税金の滞納に別の借金の支払いが関係しているのならば、弁護士や司法書士などの専門家に相談することをお勧めします。
特に弁護士は、債務整理において債務者の代理人として適切に手続きを進めてくれます。専門的な知識と経験により、「借金問題をどう解決すればいいのか」「固定資産税の滞納を解消するためにどうするべきか」「差し押さえを解除するにはどうすればいいか」などをアドバイス・サポートしてくれます。

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執筆・監修
服部 貞昭(CFP・日本FP協会認定)
ファイナンシャル・プランナー(CFP・日本FP協会認定)
2級ファイナンシャル・プランニング技能士(国家資格)
東京大学大学院 電子工学専攻修士課程修了

新宿・はっとりFP事務所
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