自己破産による家族へのデメリット・影響について解説

服部貞明(CFP)
CFP(サーティファイド ファイナンシャル プランナー)・日本FP協会認定
2級ファイナンシャル・プランニング技能士(国家資格)
東京大学工学部卒、KDDI出身のITエンジニア起業家
「自己破産をすると家族に迷惑がかかるかもしれない」
「自己破産した場合、子供の将来にデメリットが及ばないか心配」
「妻・夫にバレたくないから、自己破産をするべきか迷っている」

このような漠然とした不安を抱えている方は多いのではないでしょうか?

自己破産は、一生に何度も経験するものではありません。「破産」という単語にはマイナスのイメージも付きまといますので、自分や家族へのデメリットが分からないまま手続きに踏み出すのはハードルが高いのも当然です。
自己破産を考えているならば、ご自身だけでなく、家族など周囲の方にどのような影響が生じるのかを確認しておくと安心です。

今回は、自己破産をすることによる家族への影響(デメリット)、自己破産による周囲への影響を最小限にするために注意すべきポイントなどを解説します。

自己破産が家族に与えるデメリット

自己破産は、当該債務者に関するすべての債務(借金)を免除することを裁判所に認めてもらう債務整理方法です。
税金や国民健康保険料等の公租公課や養育費は免除されませんが、これら一部の債務を除いた全ての借金が0になるわけですから、多重債務に悩む人にとってはメリットが大きい手続きといえます。

しかし、これだけ大きな減額効果があるということは、デメリットも気になるところです。
特に、「家族にバレるのではないか」「今後の生活に影響が出るのではないか」「同居の妻や子供に迷惑をかけたくない」と不安になる方は多いでしょう。

しかし、自己破産に関しては基本的に自己破産を申し立てる本人のみの問題です。
つまり、自己破産による直接的な影響は家族には生じないと考えるべきといえます。例えば、「自己破産で免除してもらった借金の返済について、保証人でもない家族が請求を受ける」「自己破産後に配偶者もクレジットカードを持てなくなる」「家族名義の財産が処分される」「自分や家族の戸籍・住民票に自己破産の情報が載る」ということはありません。

もっとも、家族や周囲に全くの影響がないとは言い切れません。
本人が自己破産手続きを行うことによる派生的・間接的な影響は生じ得ます。

具体的には、以下のような影響が考えられます。

  • 生活環境が変わる可能性がある(引っ越しの可能性など)
  • 夫婦の共有財産は処分の対象になる(家、車)
  • 解約返戻金が総額20万円以上の保険は解約の必要がある
  • 債務者の家族カードがあれば使用不可になる
  • 家族が連帯保証人の場合は返済を請求される
  • 子どもの奨学金・学資ローンなどの保証人になれない

破産者名義の財産・共有財産は処分対象

自己破産のデメリットとして有名なのは、破産者の財産が処分されるというものです。
正確には、破産者が一定以上の資産価値のある財産を所持している場合、これらが裁判所(破産管財人)により処分・換価され、債権者に配当されます。その上で残りの借金を免除してもらうのが、自己破産手続きの大まかな仕組みなのです。

まず、前提として処分対象になるのは破産者名義の財産のみです。例えば、配偶者名義の家や車、預金口座、現金などは処分されません。
(生活必需品や家具家財、99万円以下の現金、仕事に使う道具などはそもそも処分の対象外です。)

反対に、破産者本人が所有する家や、本人がローンを組んだ車などがある場合は、引越しを余儀なくされたり車が引き上げられたりすることになります。引越しとなれば、それによる子どもの学区の変更などの影響も出てくるでしょう。

また、夫婦の共有財産は処分の対象となります。例えば、住宅ローンを夫婦でペアローンしている場合は、配偶者が本人の所有権を買い取らない限り処分しなければなりません。

家族カードが使えなくなる

自己破産をはじめとした債務整理をすると、「債務整理をして借金を整理した」という情報が信用情報機関に登録され、その後のあらゆる金融審査に通りづらくなります。これがいわゆる「ブラックリスト」というものです。
このブラックスト状態となるのは自己破産をした本人だけなので、家族がブラックリスト状態になることはありません。

しかし、破産者本人がクレジットカードの契約者(支払い者)で、妻・夫などの家族に家族カードをもたせている場合は、この家族カードが使用不可となります。
クレジットカードの家族カードは、支払者本人に信用審査が必要であるため、本人がブラックリスト状態になると新規作成や更新ができなくなってしまうのです。

一方、自己破産をした人が家族のクレジットカードから作った家族カードを使うことは問題ありません。

これ以外にも、本人がブラックリストにより審査落ちするようになると、ローンを組んで車を購入できない・携帯電話本体の分割払いができないなど、家族が生活上不便を感じることがあるかもしれません。

子供の奨学金などの保証人になれない

子どものための学資保険は、両親が支払いを行っているのが通常であるため、親が自己破産をすると解約しなければいけない可能性があります。
掛け捨てタイプの保険であれば必要ありませんが、解約時の返戻金が多額である場合はこれが資産と見なされるため、解約しなければいけない可能性が高いでしょう。

さらに、子どもが奨学金を申請する際などは親が保証人となることが多いですが、自己破産した本人は保証人の審査に通らず連帯保証人となれないため、配偶者や祖父母などが保証人となる必要があります。

家族が連帯保証人の場合は請求される

家族の誰かが借金の連帯保証人となっている場合は注意が必要です。
なぜなら、自己破産を申し立てた時点で連帯保証人に一括返済の請求がいくためです。

連帯保証人に支払い能力がある場合は支払えば済むことですが、自己破産にまで追い込まれたケースの借金は金額が大きいケースが多いです。しかも、これを一括で請求されるため、金額が何百万円〜何千万円と大きくなりがちです。
債権者によっては分割払いを受け入れてもらえることもありますが、連帯保証人への請求は突然行われるため、備えもなく支払えない方も多いです。

この場合、連帯保証人である家族も債務整理をする必要が生じます。
そのため、自己破産を行う場合は、連帯保証人であるご家族にも先に説明を行っておくべきです。その上で、本当に自己破産を行なうのが最善なのかどうかを検討する必要があるでしょう。

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家族がいる場合の自己破産は名義変更に注意

特に同居家族がいる場合、自己破産の際には資産の名義が問題となるケースが多いです。
最悪の場合は自己破産に失敗してしまうことがありますので、以下のポイントに留意しておくようにしましょう。

自己破産前に財産の名義変更をしない

先ほど、自己破産で処分されるのは破産者本人名義の財産のみとお話ししました。
そこで、どうしても住宅や車、生命保険といった財産を残したいという思いから、自己破産前に配偶者や家族の名義に変更する方がいます。

しかし、このような名義変更は絶対にしないようにしてください。
というのも、財産の名義変更は「財産隠し」とみなされる可能性が高いためです。財産隠しとして判断されると、事案によっては裁判所から自己破産を認められなくなってしまいます。

さらに、悪質な財産隠しは詐欺破産罪(265条)に問われ、「十年以下の懲役若しくは千万円以下の罰金に処し、又はこれを併科」される可能性もあります。

自己破産前に資産を守ろうとして財産の名義を変更する行為は非常に危険ですので、自己破産申請者個人の判断で勝手に行わないようにしましょう。
どうしても残したい財産がある場合は、弁護士に相談してください。弁護士が生活上の必要性を訴えることで、一部の財産を手元に残すことを認めてもらえるケースがあります(自由財産の拡張)。

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自己破産前の離婚は財産隠しを疑われる

自己破産で迷惑をかけたくないという思いから、離婚を検討されている方もいらっしゃるかもしれません。
また、自己破産をすると打ち明けたら離婚を切り出されたというケースもあるでしょう。

この場合、自己破産前に離婚をすると財産隠しが疑われる可能性があります。
夫婦の共有財産は自己破産に際する処分の対象となっていますが、離婚の際は財産分与によりその共有財産も分け合うことになります。よって、自己破産直前の離婚は「財産の処分を免れるために離婚するのではないか?」と疑われてしまうのです。

そのため、仮に離婚を考えている場合は、自己破産後に行う方が安全でしょう。

なお、自己破産をすること自体は「婚姻を継続し難い重大な事由」とはいえません。よって、夫婦双方の同意がない場合、自己破産が原因の調停離婚や裁判離婚は認められない可能性が高いです。
(自己破産の原因が家族生活にまで影響を及ぼすほどのギャンブル・浪費などの場合は、離婚が認められる可能性もあります。)

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自己破産による家族への影響を減らす方法

このように、自己破産手続きでは多くの間接的なデメリットが家族に及ぶ可能性があります。
では、これらの影響を回避する、あるいは最小限に抑える方法はないのでしょうか?

任意整理|連帯保証人に影響しない

自己破産をする際に多くの方が懸念するのが、連帯保証人に一括請求が行くことです。
保証人である家族も債務整理をしなければいけない事態はできる限り避けたいでしょう。

この場合は、自己破産の代わりに任意整理を行えないかどうかを検討してみてください。

任意整理とは、裁判所の介入なく債権者との個別交渉で将来利息を減額してもらい、返済計画をリスケジュールする債務整理方法です。全ての債権者を対象とする自己破産とは異なり、ご自身で整理すべき債務を選べるのが特長です。

任意整理では元本の減額はできないため、大幅な減額は期待できません。しかし、借入先が複数あり、合計の借金額がそこまで高額でないケースなどでは、保証人のついている借金を除外して任意整理を行うことで、保証人への影響を回避することができるのです。

「自分には自己破産しかない」と思っていても、専門家の目から見れば任意整理で解決できる可能性もあります。
借金の元金がそれほど大きくない場合(リボ払いなどで利息の占める割合が大きい場合)や、連帯保証人への請求を防ぎたい場合は、任意整理が有効な方法となるかもしれません。

個人再生|財産の処分がなく自宅も残せる

自己破産による財産の処分で一番の懸念点となり得るのが、不動産(自宅・マイホーム)の処分です。

引っ越しを余儀なくされるとなると、生活環境が大きく変化することを懸念される方も多いでしょう。
特に小学生、中学生のお子さんがいらっしゃる方は子どもへの影響も大きく、住んでいる場所の変更は困ると思うのではないでしょうか。

どうしても自宅を処分したくない場合は、個人再生という選択肢を選ぶことも有効です。
個人再生は、裁判所に再生計画を提出し許可を得ることで、約1/5~1/10まで債務を元金から減額することができる手続きです。自己破産のように借金がゼロになることはありませんが、任意整理よりも大幅な減額が期待でき、原則として財産の処分は必要ありません。

「大事な家を手放したくない」「借金は減額したいが、住宅ローンだけはそのまま支払い続けたい」という方には、「住宅ローン特則」でマイホームを守れる個人再生がおすすめです。
住宅ローン特則を利用できれば、住宅ローン自体は減額できず支払いを続ける必要がありますが、他の借金についてのみ大幅な減額が可能です。

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もっとも、個人再生の場合は手続後も返済を継続しなければいけませんので、将来的に継続したある程度の収入がある方しか申立ができません。

自己破産は事前に家族に相談するべき

「借金自体を家族に内緒でしている」「自己破産をすることはバレたくない」という方は多いです。
しかし、自己破産の際のあらゆるデメリットを考えると、できる限り家族に打ち明けた上で手続きに踏み切ることをお勧めします。

同居をしていない家族の場合、自己破産をしていることがバレる可能性は低いです。
しかし、家族が同居しているならば、「クレジットカードを作れない」「ローンを組めない」「子どもの奨学金の保証人になれない」など、将来のどこかのタイミングで自己破産をしたことがバレてしまう可能性があります。

後々トラブルになる可能性を考えれば、自己破産のデメリットをしっかり説明した上で、家族にも納得してもらって手続きを行なった方が安心でしょう。

自己破産の正しい知識を説明すれば、家族も借金問題の解決に手を貸してくれる可能性はあります。
自己破産の詳細を知らないまま打ち明けることは避けるべきですので、「できれば家族に秘密にしたい」「家族にどう説明すれば良いか分からない」というケースも含め、お気軽に弁護士にご相談ください。

まとめ|自己破産の不安は弁護士に相談を

このように、自己破産によるご家族への直接的な影響はありませんが、間接的な影響はいくつかあるといえます。
そのため、自己破産前にはご家族に相談の上、手続きを進めることをおすすめいたします。

共有財産をお持ちの場合や、ご家族が連帯保証人である場合などは、周囲への影響から債務整理をするかどうかを悩んでいる方も多くいらっしゃいます。
そんなときこそ、法律の専門家である弁護士にご相談ください。

なお、自己破産の家族への影響を回避するためには、他の債務整理を検討するという選択肢があります。
自己破産のデメリットでお悩みの方、あらゆる債務整理方法を検討したい方も、ぜひ専門家である弁護士にご相談ください。

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