自己破産したら生命保険は解約しなければいけないの?

自己破産したら保険は解約しなければいけないの?

急病にかかった際の医療費を賄うため、あるいは万が一自身が病気に罹ったり死亡したりした場合に家族を支えるために、医療保険・生命保険などの保険に加入している方は多いと思います。

しかし、保険に加入している人が自己破産を余儀なくされる場合、その保険契約について解約を余儀なくされるケースがあります。

自己破産の際に生命保険や医療保険の解約が必要かどうかは、保険の種類や破産手続開始時点での所有財産の額などに依存します。
ご自身のケースではどうなるのか?を確認し、自己破産前に把握しておく必要があるでしょう。

この記事では、自己破産をする際に生命保険がどのように取り扱われるかを解説します。
「自分の契約している生命保険は解約させられるのか?」「受取人として指定されている生命保険も解約しなければならないのか?」
このような自己破産時と保険に関する疑問をお持ちの方にとって有益な情報を提供しますので、ぜひご一読ください。

自己破産で生命保険の解約が必要なケース

積立型の生命保険

結論から言えば、生命保険の解約返戻金が20万円以上の場合は、多くの場合で生命保険契約の解約が必要となります。

自己破産をする際に保険を解約しなければならないのは、保険の「解約返戻金」が破産者の資産であるとされてしまうためです。
解約返戻金とは、保険契約を解約した際に、保険会社から契約者に対して支払われるお金をいいます。

破産者が破産手続開始の時点で有する一切の財産は、「破産財団」として換価・処分の対象となるのが原則です(破産法34条1項)。
裁判所は、破産者が持つ破産財団を平等に債権者(お金を貸した業者)へ分配し、債権者の利益を確保するのです。

破産法上、この例外として認められているのは、99万円以下の現金・新得財産(破産手続開始後に得た給料など)・その他の差し押さえ禁止財産(生活必需品、仕事用品など)です。これらを「自由財産」と呼びます。
この他、換価金額が小さいならば財産を処分する手間暇の方が大きくなりますので、資産価値が少ないものも処分を免れるでしょう。

関連記事
自己破産後に残せる「自由財産」にはどんなものがある?
自己破産後に残せる「自由財産」にはどんなものがある?
確かに、自己破産をすると一定の財産は換価・処分された上で、債権者に配当されます。債務者の財産を配当した上で、それでも…[続きを読む]

生命保険の解約返戻金に関する債権は、上記の自由財産には含まれないため、破産財団に含まれることが原則となります。
積立型の生命保険に加入している場合には、自己破産の際には保険契約を解約しなければならない場合があると覚えておきましょう。

自由財産の拡張が認められる場合

ただし裁判所は、破産者の生活状況や、財産の種類・金額などを考慮して、自由財産の範囲を拡張することができるとされています(同条4項)。
したがって、生命保険の解約返戻金についても、自由財産の拡張が認められる場合には保険契約を解約する必要はなくなります。

自由財産の拡張が認められるかどうかは、裁判所の完全な裁量によります。
多くの裁判所においては、財産の種類に応じて自由財産の拡張を認める金額の上限についてのルールを独自に定めています。

ほとんどの裁判所では、生命保険の解約返戻金が20万円以下の場合に生命保険契約の解約が不要となる可能性が高いといえるでしょう。
(※なお、複数の積立型生命保険に加入している場合には、すべての生命保険に関する解約返戻金の合計が20万円以下である必要があります。)

自分が加入している生命保険の解約返戻金がどのくらいの金額であるのかについては、生命保険会社に問い合わせてみましょう。

このように、解約時に解約返戻金が支払われるのは、「積立型の生命保険」かつ「解約返戻金が20万円を超える保険」です(金額については各裁判所により異なるケースがあります)。

自己破産で生命保険の解約が不要なケース

掛け捨て型の保険

解約返戻金がない保険については、破産財団に含まれないため解約の必要はありません。

たとえば、以下のような保険については解約不要となります(ただし、例外的に解約返戻金がある保険も存在し、その場合は積立型生命保険の場合と同様に扱われます)。

  • 掛け捨て型の生命保険
  • 医療保険
  • 火災保険
  • 地震保険
  • 自動車保険 等

他人名義で契約している保険

破産者が保険金の受取人になっている他人名義の保険契約はどうなるのか、という疑問を持つ方もいらっしゃるかもしれません。

まず、自己破産の際には他人名義の保険契約を解約する必要はないというのが原則です。

自己破産時に保険契約を解約しなければならないのは、解約返戻金が破産者の財産とみなされるためです。
この点、親や配偶者など他人名義の保険契約は、契約者である他人の財産ということになります。したがって、解約返戻金が破産財団に含まれることはなく、保険契約を解約する必要はないことになります。

とはいえ、「子供名義の保険だが、保険金を払っているのも解約返戻金の受け取り相手も親(破産者)になっている場合」や「親名義で、その親が子(破産者)のために積み立てている生命保険である場合」など、実質的に破産者本人の財産であると判断されたならば、解約する必要が生じる可能性があります。

自己破産前や手続き中に慌てて保険の名義変更をしても意味はなく、また、名義変更は財産隠しを疑われ自己破産に失敗してしまうリスクもありますので、このような対応は絶対しないようにしましょう。

自己破産後も生命保険を残す方法

保険を解約してしまうと、もともとの契約条件で再び保険契約を締結することはできません。
良い条件で契約している生命保険などがあれば、可能な限り保険契約を維持したいところです。

積立型の保険契約があるが故、破産手続においての解約返戻金が換価処分の対象となる場合に、どうにかして保険契約を残す方法はないのでしょうか?

介入権制度を利用する

まず、保険法上の「介入権」の制度を利用することが考えられます。

破産手続において、生命保険の解約返戻金が破産財団に含まれる場合には、破産管財人から保険会社に対して解約通知が行われます。
しかしこの解約通知は、保険会社が通知を受けた日から1ヶ月を経過してはじめて、その効力を生じるものとされています(保険法89条1項)。

保険の契約者が自己破産をする場合、この1ヶ月の間に保険金の受取人(破産者の親族など)は、破産管財人に対して解約返戻金相当額を支払うことができます。
この場合、破産管財人による保険契約の解約は無効となり、保険契約を維持することが可能となります(同条2項)。

支払いは保険金の受取人が行う必要がありますので、家族の協力が必要なケースもあります。家族や弁護士に一度相談してみてください。

契約者貸付制度を利用する

もうひとつの方法としては、生命保険契約に基づく「契約者貸付制度」を利用することが考えられます。
契約者貸付制度とは、契約者が保険会社から、解約返戻金のうち一定の割合までの金額を借り入れることができる制度です。

この制度を利用すると、解約返戻金の金額を、自由財産の拡張が認められる上限である20万円以下まで減らすことができる場合があります。

ただし、生命保険契約を維持するために契約者貸付制度を利用するという場合には、裁判所から財産減少行為と捉えられないように十分注意する必要があります。
債務整理を行う人が自己破産の申立直前に財産を不当に減らすような行為をした場合、免責不許可事由となり自己破産が認められない可能性があります。

債務者に「免責不許可事由」があれば、自己破産に失敗してしまうケースがあります。しかし、弁護士に依頼して対処すれば、裁…[続きを読む]

自己破産の直前に契約者貸付制度を利用することができるのは、借り入れた金額を債権者全体の利益のために使用するという目的がある場合に限られます。
たとえば、自己破産を行うための予納金弁護士費用に充てるために使用する場合などが考えられるでしょう。

いずれにしても、自己破産の場合に生命保険の契約者貸付制度を利用する場合は、慎重な検討を行う必要があります。

そのため、弁護士に相談をして、契約者貸付制度を利用できるかどうかのアドバイスをもらうことをおすすめします。

自己破産後に生命保険に再加入できる?

自己破産の際に生命保険を解約することになってしまった場合、自己破産後に再び生命保険に加入することはできるのでしょうか?

結論としては、自己破産後に生命保険に加入することに制限はありません
破産手続が終了すれば、残った財産やその後の収入をどのように使うかは元債務者の自由です。

よって、残った財産やその後の収入を掛け金として、生命保険に加入することは何ら問題ありません。

まとめ|自己破産の不安は弁護士へ

自己破産を検討しているものの、加入している保険契約が解約されてしまわないかと心配な場合、まずは保険の種類を確認しましょう。
掛け捨て型の生命保険や医療保険など、解約返戻金がないタイプの保険であれば、自己破産の際に影響はありません。

一方、積立型の保険の場合には解約が必要となる場合があります。
解約の要否は解約返戻金の金額によって決まるので、保険会社に解約返戻金の金額を確認してみましょう。

もし解約返戻金の金額が20万円を超えている場合には、原則として保険契約の解約が必要となります。
しかしこの場合にも、介入権や契約者貸付制度を利用して保険契約を維持できる場合があります。詳しくは弁護士に相談してみましょう。

いずれにしても、借金に悩んでいる、自己破産を検討しているという場合には、ぜひ一度弁護士にご相談ください。
任意整理や個人再生などの方法を選択できれば、生命保険を含めた手持ちの財産・貯蓄を手放す必要はなくなります。

弁護士は債務整理についての豊富な知識と経験を持っており、依頼者の状況に応じた適切な解決方法を一緒に考えてくれます。生命保険を解約せずに解決できる可能性もありますので、お一人で悩まずに、まずはお気軽に弁護士にご相談ください。

債務整理に強い弁護士・司法書士に無料相談

借金返済ができず、滞納・督促でお困りの方は、債務整理に強い弁護士事務所・司法書士事務所にご相談ください。

弁護士事務所・司法書士事務所に相談することで、以下のような問題の解決が望めます。

  1. 毎月の借金の返済が苦しい/借金が一向に減らない
  2. 債務整理したいが自宅だけは手放したくない
  3. 連日の督促・取り立てで精神的につらい

債務整理の実績豊富な弁護士事務所・司法書士事務所に相談・依頼することで、厳しい督促が止まり、難しい手続きもサポートしてもらえます。

1人で悩まず、今すぐ債務整理に強い弁護士事務所・司法書士事務所にご相談ください。

都道府県から債務整理に強い事務所を探す

債務整理の無料相談ができる事務所
プロテクトスタンス1
【東京都・千代田区】
弁護士法人プロテクトスタンス
  • 全国対応
  • 相談無料
  • 土日祝対応
法人全体で13,000件以上の依頼実績数に裏付けされた自信を持って、借金問題を解決します。相談は何度でも無料、法テラス利用可、明確な料金体系でお待ちしております。
借金でお悩みなら今すぐ専門家に相談
050-5447-7913
[電話受付]平日 9:00~21:00 土日祝 9:00~19:00
阿部 由羅 弁護士
監修・執筆
阿部由羅(あべ ゆら) 弁護士
ゆら総合法律事務所・代表弁護士。西村あさひ法律事務所・外資系金融機関法務部を経て現職。一般民事から企業法務まで、各種の法律相談を幅広く取り扱う。webメディアにおける法律関連記事の執筆・監修も多数手がけている。
■URL https://abeyura.com/lawyer/

プロフィール この監修・執筆者の記事一覧

あなたへおすすめの記事

この記事が役に立ったらシェアしてください!